|
◆この号の一一頁で報告されている事態は、その後も悪化している。メキシコの新聞に
も、サパティスタ関連のホームページにも、連日のように詳しい記事、メッセージ、コ
ミュニケなどが掲載されている。地理的な説明から推測すれば、もっとも深刻な事態は
、連載「サパティスタ密林の夜明け」で今回紹介されている村の近くか、この村自体で
起こっている可能性がないではない。
連邦政府軍の大規模な展開もさることながら、与党に組織されているらしい、石を持っ
た「住民」たちが、サパティスタ支持基盤の村人たちに一方的に襲いかかっている事態
が目立つ。後者の暴力的な抵抗を「挑発」し、あわよくば政府軍の公然たる介入を「正
当化」できる口実を作り出そうとしているふしが感じられる。世界じゅうを見渡せば、
この「現象」はひとりチアパスでのみ見られることではない。東ティモールでも、コロ
ンビアでも、武装した「市民」「住民」やパラミリタリー(準軍事組織)の「活躍」が
異常にめざましい。
現在の世界各地の地域「紛争」の深層を知るには、この現実に目を向けることが重要な
ようだ。「住民」を組織しているのは誰か。彼らに金を与え、場合によっては武器を与
えているのは誰か。
仕組まれ、演出された「紛争」が多いだけに、政府軍の介入や、国連「平和維持作戦」
部隊の介入や、ましてや米軍やNATO軍の介入の背後に潜むものを、私たちは見極め
なくてはならないだろう。
◆私たちが一九九六年夏、「人類のために、新自由主義に反対する大陸間会議」に出席
するためにチアパスに滞在していたころ、ひとりのフランス人社会学者も来ていたらし
い。
彼、イボン・ル・ボはマルコスやタチョやモイセスとの長時間インタビューを申し入れ
、これを実現させた。その内容は、イボン・ル・ボの長文の解説を付して一冊の本にま
とめられ、すでに九七年にフランス語版とスペイン語版が出版された。題して『サパテ
ィスタの夢』。
私たちも日本語への翻訳権をすでに取得していたが、この本の翻訳がほぼ終わった。で
きるだけ早く出版に漕ぎ着けたいと考えている。サパティスタのコミュニケなどの文章
もおもしろく、読ませるが、このインタビュー本でマルコスは、思いがけないほどの率
直さで自分たちの運動の過程について明らかにしている。その明快な語り口とその内容
から、いくつもの示唆を受けとる人びとが多いだろうと思う。
予告が早すぎて作業が追いつかないのが、私たちの欠点であることは自覚していますが、
この本は現代企画室から早めに出版します/できます。楽しみにしてください。
◆さして長期的な見通しも確たる世界観も持ってはいないと推定できる日本の現政権は
、前号でも触れた周辺事態法案に続けて、地方分権一括法、国旗・国歌法、盗聴法、住
民基本台帳法など、この社会の性格を一新する力をもつ重要法案を、与党の数の力を背
景に次々と成立させた。
世界的にも重大事件が続けて起こる二〇世紀末だが、これらの法案が実態化する先にし
か私たちの社会の未来がないのならば、悔やんでも悔やみきれない禍根を、一九九九年
の私たちは歴史に残したことになる。諦めずに、なお何ができるかの模索は各地・各所
で始まっているが、私たちもこれに参加していこうと思う。
◆九月から再開する予定だった後期の学習会の準備は少し遅れている。現在チアパス現
地に行っているメンバーもおり、その帰国を待って、報告会なり学習会を準備しようと
考えている。決まり次第、前号からこの機関誌の主な内容の掲示を始めた現代企画室ホ
ームページのサパティスタ・コーナーでお知らせします。 http://www.shohyo.co.jp/
gendai/index.htmlをご覧ください。その手段をもたない方には、郵便でお知らせしま
す。連絡を希望する旨、お知らせください。【さ】
サロン・インディアスに戻る