サパティスタ支援コンサートを開いたバンド
「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」の魅力

 「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」Rage against the Machine (以下レイジ と記す)のサード・アルバムが出た。

 その「THE BATTLE OF LOS ANGELES」は、発売された直後に合州国当局の要注意著作物のリストに載るという「名誉」を獲得した。この今世紀最後の〈反体制・革命アルバム〉は、まぎれもない傑作である。

 レイジの音楽は、ハードなギターサウンドにザックのラップがのる、いわゆるミクスチャーと呼ばれるスタイルだ。八〇年代にゲットーの黒人によって「発明」されたラップはビートにのせてマシンガンのように喋る、きわめてメッセージ性の強いスタイルだ。メロディーにのせて華麗に歌い上げるというよりも、歌詞にこめられる情報量がきわめて多くなるタイプの曲だ。

 レイジは「搾取される先住民の悲劇」や「マスコミや企業に洗脳される人びと」や「画一的な教育の恐怖」を歌うだけにこのスタイルを採用したのも必然だった訳だ。プレイヤーの演奏能力も極めて高い。鋼のような硬質なサウンドに、アジ演説のようなラップ。

 レイジのステージでは深紅のチェ・ゲバラの旗が翻る。そしてステージ後方には逆さまにされたアメリカ合州国の旗が掲げられている。

 旗には、メンバーによって書かれた「気にいらねえ!」の文字が。グローバリゼーションを呼号して傲慢なふるまいを続ける米国の姿を知る人びとの心を、どこか深いところで捉える雰囲気がこのこと自体にある。「曲は武器である」と言い切る彼ら。

 政治的なアーティストは他にも沢山いるが、「世界平和」だの「自然保護」だの、味の薄いスープのような芒洋としたものが多いなか、レイジは短い射程距離で確実に敵を撃っていく。敵との距離が短いと、自分も傷つくが、命中する確立もはるかに高いのだ。

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 すべての曲の作詞を担当するバンドのボーカリスト、ザックは言う「バンド名のマシーンとは五〇〇年もの間、抑圧された人びとの血を搾ってきたシステムのことをさしているんだ」。

 インディオの血をひくメキシコ人である彼は、一九八〇年代を北米のオレンジ・カウンティで過ごした。「このアルバムの中の曲 《MARIA》は貧しいメキシコ人女性の話だ。自分が家族や共同体と暮らしていた土地を政府によって差し押さえられてしまい、国を捨てなければならなくなるんだ。

 で結局、彼女は北アメリカに移りタコ部屋で働くことになる。そしてこの話は、ぼくやぼくの家族が体験してきたことへのメタファーでもあるんだ」。バンドは一九九九年一〇月二七日に、メキシコのサパティスタ民族解放軍による武装蜂起運動を支援するためのコンサートを行なった。

 ギターのトム・モレロはハーバード大学を主席で卒業。しばらくはリベラル派の議員秘書をしていたそうだ。

 彼の父親は、五〇年代に植民地宗主国・イギリスを震え上がらせたケニアのマウマウ団の戦闘員だった。そして母親は反検閲団体「ロック&ラップに賛成する親の会」を運営している。彼らは、ロラパルーザと言うロックフェスティバルでPRMC【ゴア副大統領の妻が推し進めるロック音楽等の歌詞検閲組織】に対抗するために、メンバー四人がステージに全裸で登場、一五分間演奏せずに立ち尽くした。

 そしてそのままステージを降りた。トムは言う「観客は大騒ぎしたよ。せっかく来たのに演奏が聴けないんじゃ当然だろうな。でも考えて欲しかったんだ。これが検閲というものさ。聴きたいものも聴けない世の中。それを演奏しないことで表現したって訳さ」

 レイジ・バンドはソニーレコーズに所属している。「君達のCDが売れれば売れるほど大企業に利潤をもたらすのではないか? この点に矛盾は感じないか?」という批判に、トムは答える。

 「例えば『共産党宣言』が本屋で売られていることに、カール・マルクスは反対しただろうか? 俺たちが俺たちの考え方をなるべく沢山の人に広めるためには、やっぱりそういうことが必要なんだ。エリート主義的に、すでにある程度そういうことについてわかってる一部の連中だけを相手にしてもしょうがないんだよ」。

 トムは、ロックが変革をもたらすことができると固く信じている。「俺がアメリカの中南米政策のことを学んだのは、テレビのニュース番組のプロパガンダなんかじゃなない。クラッシュの『サンディニスタ』(注)からだった。俺たちのアルバムを聴いたキッズの中にもそういう連中がきっといるはずさ。撒いた種からは必ず芽が出てくる。そう信じてるさ」

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「THE BATTLE OF LOS ANGELES」は、全米のヒットチャートで初登場一位を獲得した。

※メンバーの発言は「ロッキングオン」一九九九年一二月号のインタビューより引用しています。

(注)クラッシュは八〇年代にイギリスで活動したロックバンドで、政治色の強い曲を歌って活動を展開した。アルバム「サンディニスタ」は、中米ニカラグアで一九七九年に勝利したサンディニスタ革命をテーマに取り上げている三枚組の大作である。

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン公式サイト http://www.ratm.com/


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