■ブックファースト新宿店にて、「ジミー〈幾米〉幸せのきっぷ」コーナーが11月3日からスタート
■台湾エンタメパラダイスvol.13 text:Tae Kumasaka
■台湾新聞 2015年9月7日
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台湾エンタメパラダイスvol.13 text:Tae Kumasaka (一部抜粋)
〈台湾を代表する絵本作家、ジミー(幾米)〉
金城武主演映画「ターンレフト・ターンライト」や、トム・リン監督作「星空」などをはじめ、その多くがミュージカルやドラマ、映画化されていることでも知られる、台湾を代表する人気絵本作家、ジミー。7月に新潟で行われた「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」に参加したジミーら台湾アーティストたちが、東京・台北駐日経済代表処 台湾文化センターでのトークイベントにも出席。インタビューすることができた。
〈自由に描いていくうちに"偶然の賜物"と出会うのが好きです〉
−ジミーさんが描く風景はご自身が見たもの、それとも想像したものですか?
「見たもの、想像したものではなく、感受性で感じ取った風景です。その主人公の目を通して世界を見る。最近、よく使うキャラクターは子供で、子供の眼で世界を見る感じです。最新作の『幸せのきっぷ Kiss&Goodbye』もそう。これは新潟の〈大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015〉のために書き下ろした作品ですが、本当は東日本大震災の時から、何か伝えるべきことがあるんじゃないかとずっと考えていました。日本のカメラマンが、福島で人々に忘れ去られたものや動物たちを撮影した写真集をたまたま目にしました。例えばこの『幸せのきっぷ』に出てくる牛(p10)は、今までエネルギーにばかり注目してきた私たちが忘れ去ったものの表情といえます。これ(p14)は原子力発電所、これ(p15)は主人公の男の子のお父さんとお母さんですが、もしかしたら彼の両親はこの事故で亡くなったのかもしれない。だから彼は1人でおじいちゃんのところに行こうとしているのかもしれません。本当は悲しいストーリーなのかもしれないけれど、幸せな色を使って表現することで、列車が進む度に子供の心も解れてくる。そしてこれらの新潟の風景を描き、子供がだんだん自然の中に入っていく感じにしています。
−イラストの色はどのように決まるのでしょうか?
「まず設定を考えます。この絵は秋の感じとか、夏の感じとか。そこからは自由に描くので、思いがけない色が出てきたりもします。描くのはとても楽しく、描いているうちにこうしたい、ああしたいという想いがたくさん浮かんできます」
−ストーリーは絵を描くうちに浮かんでくるのですか?
「作品を作る時は絵から描きます。字はその後に書くのですが、絵を描いている時は字で何をアウトプットするかは決まっていない。絵が完成してきたら字を書き始めます。そして編集の時に、絵が足りないと思ったらまた描く、余計だなと思ったら捨てる。この本は96ページですが、元々は32ページでした(笑)。描いていくうちに、どんどん想いがあふれてきて、そんな時はたくさん描いてしまいます」
−実際の絵の大きさはどれくらいですか?
「だいたいA3よりちょっと大きいくらいかな」
−どんな道具を使って描いていますか?
「昔の作品には水彩画もありましたが、いまはだいたいアクリル。パソコンなどは使わず、全て手作業です」
−絵の中の細かい要素は最初から決まっていますか?
「描きながら入れていきます。設定は先にあっても、その中で自由に描いていくうちに"偶然の賜物"と出会うのがすごく好きです」
−仕事をする時に必要なものはありますか? コーヒーがないとダメとか、音楽がないとダメとか
「まさにその両方です(笑)。毎日コンビニに行ってブラックコーヒーを買い、クラシック音楽を聴きながら仕事をします。でもなくても大丈夫。習慣となっているだけだから。絶対に必要なのは机とペンです。
−イメージはどんな時に浮かんできますか?
「たとえば電車に乗っていた時に見た風景だったり、日常生活の中でインスパイアされることがたくさんあります」
−創作の時間は決まっていますか?
「まるで公務員みたいですよ。月曜日から金曜日の朝8時から始めて、夕方の6時、7時には終わります。プロとしては、きちんとした生活リズムが必要だと思います」
−日本のクリエイターで好きな人はいますか?
「先月、奈良美智さんとお会いしました。彼が台湾に来たので、お会いしただけなんですが、彼は台湾で広く愛されている日本のクリエイターだと思います。川島小島さんも台湾で写真展を開きましたね。台湾の若い人は日本のものに敏感で、すごくアンテナを張っています」
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台湾新聞 2015年9月7日
〈台湾人作家ジミー・リャオの新作絵本『幸せのきっぷ―Kiss & Goodbye』〉
同書は台湾人の絵本作家であるジミー・リャオが今年の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」に参加し、JR飯山線アートプロジェクトをきっかけに制作した絵本。台湾と日本で同時発売された。
内容は両親を亡くし、ひとりぼっちになった孤独な少年が犬のプリンと共に都会から祖父の家へと向かう列車の旅の物語。越後水沢駅がモデルとなった駅舎や、雪景色、棚田、かまぼこ型倉庫など越後妻有を思わせる風景も随所に織り込まれている。オールカラーで、心温まるタッチで描かれた絵がなんとも魅力的な一冊だ。
ジミー・リャオは1958年生まれ、台北在住。白血病を患ったことがきっかけとなり、1998年より絵本の創作を始める。1999年刊行の「君のいる場所」がベストセラーとなり、台湾で大人の絵本ブームを巻き起こし、ワーナー・ブラザーズより金城武主演で映画化された。また、同じく映画化された「ほほえむ魚」は第56回ベルリン国際映画祭で短編映画賞を受賞。国内外の出版文化賞、児童文化賞なども多数受賞している。このほか、これまでに50を超える作品を発表し、世界15ヵ国以上で翻訳出版されている大人気の絵本作家である。
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