■オアシスVol.45 評者:村山努(杉並区民協力委員)
■女たちの21世紀 2014年9月号 評者:松原三保
■出版ニュース 2014年8月号
■ふぇみん 2014年8月5日
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オアシスVol.45 評者:村山努(杉並区民協力委員)
あなたは"マッチョな人"と聞くと、どんなことが思い浮かびますか? 大抵は筋骨隆々の"男らしい"男性を思い浮かべるでしょう。著者によると"マッチョな人"とは「性差別的な行動を異常なほど繰り返す人のこと」です。そう定義すると"マッチョ"とは単に見た目の問題ではありません。この本は、男女平等の先進国フランスの女性解放の事情・歴史そして今に至るまでをフェミニストの立場から鋭く論じている興味深い本です。子どもも大人と共に学ぶことで、世の中の"当たり前"と戦っていく準備をするのは大変有益です。フェミニストであるということは「男女の権利と可能性の幅を同じにすることを求める」ということ。著者の鋭い舌鋒によって今まで"当たり前"と思っていたことに潜む"マッチョ"的なものがあぶり出される、スリリングな体験ができます。
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女たちの21世紀 2014年9月号 評者:松原三保
日本で「マッチョ」というと、大抵の人が“筋肉隆々の男性”を想像するのではないか。でも、フェミニズム視点で考えると「マッチョ」は、女に対し支配者然とふるまう人、旧来の性別役割分担に囚われている人を指し、つまり、外見でなく中身を問題にする。
本書は「マッチョ」をとっかかりに、性や政治などフェミニズムの基本が理解できる内容で、姉と弟の会話のスタイルを取る。フランス人で1973年生まれの姉が、少し若い弟の質問に答える設定は、驚くと共に新鮮に映る。何を着るかの自由、中絶をどう考えるか、政治参画や買売春などの幅広い質問に、著者も悩みながら率直に語り、議論している。「『マッチョ女』はいるの?」への答えは、支配や社会的枠組みを説き、意義深い。ちょっと啓蒙的に感じるのは姉弟という関係性ゆえ?
18世紀に生きたフランス人女性の平等主義者や女性思想家の名前を、日本人の私たちはそれほど知らない。フランス語では名詞はすべて女性形か男性形に分かれ、中性はないことを改めて考える。翻訳本だからこそ知れることもある。世界野男女格差指数は日本の101位に対し、フランスも57位だ。先進的だと信じるヨーロッパ事情と、日本事情を比較してしまう。
作家の内田春菊による解説は初心者向きで、考えるヒントになるだろう。
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出版ニュース 2014年8月号
〈マッチョっていうのは、いかにも男らしいと思われていることをするのが好きだってことだけじゃないんだよ〉〈むしろ、男は女より上なんだと主張したり、女に対して支配者のように振る舞ったりする人のこと〉〈平等や解放などというものが、黙っていても丸ごと転がり込んでくると思ったら大間違い〉性差別の問題を高校生の弟の素朴な疑問に姉が答えるという設定で展開する対話。著者は20代のとき強姦の被害に遭ったことがきっかけでフェミニストとして活動を始めた。「マッチョ」の意味を解き明かしながら、些細な日常に潜む性差別をなくすための向き合い方、論じ方を分かりやすく明快に説く。
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ふぇみん 2014年8月5日
フェミニズムの思想について、高校生だった著者の弟との会話をもとに丁寧に説明する書。
「マッチョってなに?」という疑問から始まり、話題はさまざまに広がる。学校や職場で誰もが経験する言動に見え隠れする男尊女卑から、フェミニズムの歴史、男女共学、妊娠中絶、宗教、フランス語文法に隠れる男性中心主義など、身近な事象がフェミニスト的視点で分析される。著者自身が性暴力被害に遭った経験からフェミニストになった経緯も語られる。
法律や制度が整備されても、男女平等が達成されたわけではない。むしろ功名に、見えづらくなっているが、著者は闘い続ける決意を示す。翻訳書のため日本の実情とは違う面もあるが、「フェミって何?」と思う人、特に若者にはぜひ、一読を勧めたい。
後書きにも触れられているが、日本ではマッチョ=筋肉。一方、高校生男子が姉とフェミについて議論するなんて、やっぱりおフランスだなぁと思う一冊。
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