■「momo」 vol.20 winter 書店員さんおすすめの「クラフト&ハンドメイド」の本50
■「13歳からの絵本ガイド―YA(ワイエー)のための100冊」 監修:金原瑞人、著者:ひこ・田中、西村書店
■MOE 2017年1月号 絵本作家が選ぶ名作「こんな絵本を読んできた」 評者:酒井駒子
■momovol.6 2014年12月5日
■岩手日報 2013年11月6日[ようこそ本の森へ]欄 評者:石田かり(盛岡児童文学研究会)
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「momo」 vol.20 winter 書店員さんおすすめの「クラフト&ハンドメイド」の本50
絵本だからこそ表現できる物づくりの真髄。自分が信じるものを作り出そうとする人の心のあり方、美しさに胸を打たれます。特に物づくりを仕事にしている人におすすめ。気高く。あたたかい物語。
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「13歳からの絵本ガイド―YA(ワイエー)のための100冊」
監修:金原瑞人、ひこ・田中(西村書店)
そばに置いて何度でも読みたい絵本
「ゴールディーのお人形」
ゴールディーは両親の残した家で、父母がしていたように小さな木の人形を作り、絵の具で洋服と顔を描く仕事をしていました。少し違うのは、父が大工仕事から出る木っ端から人形を削り出していたのに、ゴールディーは森で拾った木の枝からしか、作らないというところでしょうか。それは彼女にとって大切なことでした。
ゴールディーは、とても恥ずかしがり屋で慎ましやか。小さな女の子が自分の作った人形を仲良くしている姿を見て、パン屋の友人が、作り手のことを告げようとすると、「言っちゃだめよ」と首を振ります。「なんだか、そうしないほうが良いような気がするの」と。そのお人形は、ゴールディーが木の枝から削り出したものだけれど、命を吹き込んだのは、その女の子自身だと言いたかったのかもしれません。自分固有のセンスや美意識を振りかざすのではなく、自然の中から、その形にふさわしい美を取り出す仕事をしているゴールディーらしいエピソードです。
その姿は、作家であるゴフスタインに重なって見えます。彼女の絵本は小さく、両手にすんなり収まるくらいの大きさで、最小限のイラストと言葉で構成されたものが多いのですが、この絵本はよくできた短編映画のよう。難しい言葉を一つも使わずに、人の在りようの真実を描きます。ゴールディーの寂しさとそれを励ます夢のシーンでは、芸術家と呼ばれる人の孤高を、そっと見せてくれました。
ゴフスタインはいつも、自分をひたむきに捧げる人とその仕事を真摯に描いてきました。ささやかだけど、大切なこと。だから、何度でも手に取りたくなるのです。疲れた体が極上のコンソメスープを飲みたくなるように。(ほそえ さちよ) -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
MOE 2017年1月号 絵本作家が選ぶ名作「こんな絵本を読んできた」 評者:酒井駒子
(中略)『ゴールディーのお人形』、これも大人になってから読みました。私もゴールディー同様、一人でずっと作業している時間ばかりなので、しみじみと励まされるというか。ゴフスタインの作品は全部読んでいるわけではないのですが、これや『作家』が好きかな。ゴールディーがこつこつと喜びを持って仕事をしていることもわかるし、ふとさみしくなってしまう感じもよくわかるし。夢の中で励まされるところとかも、一緒に励まされる感じですね。あとがきに、仕事というのは何かをつくり出すということ、それが自分の中ではとても大きいんだと書かれているのをみると、いいなと思う。ときどきふと、手にとってみたりしています。 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
momovol.6 2014年12月5日
『ゴールディーのお人形』を3つの書店さんがおすすめの一冊として推薦してくれました。
○書店:貝の小鳥、東京
「物を作る」ということの思いがすごく伝わってくる一冊。主人公の住む村が「ここでお店を開きたい」と思うほど素敵!
○書店:ARDOUR、大阪
真摯に人形づくりをする主人公の姿は、仕事に誠実であることの大切さを教えてくれます。
○書店:shoca、名古屋
あるランプとの出会いで葛藤に陥る、もの作りにこだわりを持つ主人公。「職人の心意気が伝わってきます」。
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岩手日報 2013年11月6日[ようこそ本の森へ]欄 評者:石田かり(盛岡児童文学研究会)
〈心の機微 美しい線で〉
ゴールディーは木彫の人形作家です。木を運び、木を削り、絵の具で丁寧にお人形の肌色、茶色の巻き毛やキラキラした黒い目を描き、それから人形の目に何回も笑いかけ、その笑顔にそっくりの顔を描きます。ゴールディー・ツヴァイク人形はとてもかわいくて、お店に出すとすぐに売れてしまい、作っても作っても注文に追いつきません。
ハンサムな大工さんのオームスは、人形の箱をつくってくれる大事な友達。ある日ゴールディーは古道具屋で中国のすてきなランプを買ってオームスに見せます。でも彼は「きみって芸術家なんだ、こんな高価なものを買うなんて、とても正気とは思えないよ」と。大好きな彼にこういわれ、家に帰り寂しさが募るゴールディー。
ゴフスタインの絵本には〈悲しみのひとさじ〉が込められていると、この絵本を翻訳し、最初に出版した末盛千枝子さんは話します。いちずな女の子の心の機微が美しい線で描かれています。小学生から大人まで。
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