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社会新報    2012年12月12日    
中外日報    2012年11月6日    
週刊仏教タイムス    2012年3月8日    
東京新聞    2012年2月18日    「新刊紹介」欄
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社会新報    2012年12月12日    

〈課税制度見直しの議論を提起〉

宗教法人課税制度の見直し問題について、トータルな視野に立って多角的に考察を加えた上で提言を行ない、宗教界の受け身ではない対応こそが今求められていると問題提起する本。

宗教法人課税に関しては、境内建物・境内地や収益事業以外から生じた所得などの非課税措置が一定知られているが、その具体的な線引き問題、例えば墓地が課税対象になったら一般国民にどういう影響があるのかとか、宗教法人の機関誌収入はどう扱われるのかなどの問いに対し、即答できる人はそういないだろう。

著者は、こうした具体的問題にきちんと答えるために、今の税制改革や公益法人改革、さらに宗教施設の持つ歴史的かつ多面的価値などの大きな枠組みの中に論点を位置づけ直すとともに、信教の自由擁護を念頭に置いて税務調査と個人情報保護という極めて現代的課題にも言及する。こうした広範多岐にわたる論述に終始貫かれているのは、「宗教界が何もせず嵐が過ぎ去るのを待ち、できる限り現行制度を維持しようとするばかりでは、問題の本質が見えてこない」「制度を現状のままにして、消費税の大幅増税がされるようなことになっては、宗教界への反発を増大させるだけ」だとした上で、「信教の自由を守る立場から、税制に関する具体的な提案を、宗教界から早めに出し、消費税増税をはじめ税制の全般的な見直しの中で、宗教法人課税制度見直しの議論をすべきではないか」という問題意識に他ならない。

刊行から約10ヵ月がたつが、他に類例を見ない入門書として見過ごしてはならない一冊と考え、紹介のため本欄に掲載した次第。
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中外日報    2012年11月6日    

宗教法人への課税問題を「課税の観点」から論じたものである。「信教の自由を侵さない範囲でどこまで課税が可能か」を念頭に置いての試論だと著者は述べている。

長く国会議員の私設・公設・政策秘書を務めた経験を持つ著者は「国の姿を『正義』に近づける税制改革が必要」との考えから、「庶民の目線で課税範囲を探った」という。実際に全国の著名な神社仏閣を巡り、ケーススタディー的に課税の可能性を論じている。

「宗教関連税制は何を基本とすべきなのか」の項で、著者は「宗教の聖域は侵してはならないが、宗教法人への非課税部分を再検討しなければ、国民の増税への理解は得られない。信仰を持たない国民が、宗教法人に非課税になっている税目の不当性を裁判に訴え、最高裁判所大法廷の判例を求める前に、宗教法人課税のあり方を議論すべきではないか」と発言している。

「課税」の可能性を追求しようとする著者の姿からは、税制に「正義」を求めようとする執念さえにじむ。だが、その検証がどこまで妥当性を持つものかについては、宗教法人の側からの反証も必要になると思われる。

もちろん著者自らも、宗教法人課税見直しに関する宗教界からの具体的な提言を望んでいる。そうでなければ、こうした提言自体が宗教法人課税論を勢いづかせる結果に終わってしまうだろう。

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週刊仏教タイムス    2012年3月8日    

東日本大震災以降、宗教法人課税論議がたびたび提起されている。作家の塩野七生氏が月刊誌のコラムで復興財源の一つにあげ、“宗教者にも応分の負担を”と宗教法人課税を主張した。ただし、どのように課税するのかと言った方法論には踏み込んでいない。

その点、本書は宗教法人税制優遇措置の再検討を謳い、方法論や技術的な面まで言及している。その最たるのが「課税の観点から神社仏閣巡り」の章である。約60カ所を掲載。例えば比叡山。根本中堂は国宝、大講堂などは重要文化財であり非課税となる。名勝に指定されている山内の庭園も非課税だ。ところが大審院など登録有形文化財は「建物の固定資産税が半額」。あくまでも可能性を推測したまでであるが、課税する側の論にほかならない。

しかしよく読むと著者は単なる課税論を述べているわけではない。繰り返し強調しているのは「信教の自由を守る」ということだ。日本は税収不足にあり、それを補うものとして謀税当局が注目しているのは宗教法人である。当局主導で議論が先行すると、宗教の尊厳性をおかしかねず、ひいては信教の自由に重大な過誤を与えかねない。ならば、信教の自由を護る意味でも宗教界こそ課税論を主導すべき、というのが著者の主張だ。

長年国会議員秘書として国政を支え、宗教団体とも接してきた著者。両者の表裏を知る著者だからこそ生まれたユニークな宗教法人税制入門書である。

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東京新聞    2012年2月18日    「新刊紹介」欄

日本の宗教を元議員秘書の著者が検証。神棚、仏壇、墓地の維持管理、檀家の義務などタブー視されがちな諸問題を取り上げた。政治の現場で培われた論理と倫理に生活者としての視点を加えて宗教法人への課税を考察。




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