現代企画室

お問い合わせ
  • twitter
  • facebook

セレクトブック

「セレクトブック」のコーナーでは、現代企画室の本をひとつのテーマのもとにジャンルを横断してご紹介します。現在約400タイトルに及ぶ現代企画室の本をさまざまなテーマで結び合わせてみると、新たな世界が見えてくるかもしれません。

第6回 「2010年を振り返る」

今回のセレクトブックでは、現代企画室で今年刊行した本とキーワードを軸に、2010年をふりかえってみたいと思います。

【普天間基地移転問題】
『地のなかの革命』
鳩山首相退陣の引き金となった普天間基地の移転問題、興南高校の甲子園春夏連覇など、何かと沖縄に注目が集まる年でした。沖縄の基地問題を考えるとき、現在の状況を前提にするのではなく、今の「本土」と「沖縄」の関係がどうして生まれたのかをまず知る必要があると思います。
*関連書:『双頭の沖縄』『甘蔗伐採期の思想』

【日米関係と東アジア】
『開戦前夜の「グッバイ・ジャパン」』
沖縄に着目すると、必ずクローズアップされるのが日米関係です。基地問題に加え、民主党の代表選、朝鮮半島の緊張、東アジアの領土問題など、米国の存在と東アジアの問題を意識させる事件が多い年でした。
*関連書:『金日成・金正日体制と東アジア』『つながる日本海』

【第三国定住制度開始】
『難民への旅』
バンクーバー冬季五輪やサッカーW杯など国際的なスポーツ大会に湧く一方で、尖閣諸島問題や在日外国人の権利問題への反応など、新たな排外主義の高まりを感じる出来事も多くありました。同時に、「第三国定住制度」など新たな難民受け入れの制度もスタートしています。さまざまな理由で日本にやってくる人たちをどのように受け入れ住みよい社会をつくっていくか。これからの大きな課題と思われます。
*関連書:『壁の涙』

【裁判員制度が本格始動】
『それでも彼を死刑にしますか?』
国内の社会問題では、「検察不信」につながる一連の事件で司法制度のあり方に疑問が呈され、裁判員制度のもとでの死刑事件の判決にともない、死刑制度への注目が高まりました。現代企画室では永山則夫事件についての本を再版し、死刑の是非を問いました。
*関連書:『無実でも死刑、真犯人はどこに』

【無縁社会】
『グローバル化に対抗する運動ともうひとつの世界の可能性』
永山事件といえば、死刑制度に加えて貧困や社会の分断の問題にも目を向けさせます。不在高齢者の住民票問題などは、日本社会の分断の深さを垣間見せる事件でした。非正規雇用など、若年労働者の不安定な状況もいまだ大きな問題です。ただ、それらの分断を乗り越えようとする新しい試みも着実に始まっています。
*関連書:『もうひとつの世界への最前線』

【ノーベル賞】
『嘘から出たまこと』
日本人2人が受賞したことや平和賞を中国の民主活動家が受賞したことで、例年にも増して話題を集めたノーベル賞。文学に目を転じると、ペルーのマリオ・バルガス・ジョサがノーベル文学賞を受賞しました。バルガス・ジョサの作品はもちろん、ブーム以降もたゆまず刺激的な文学を生みだしているラテンアメリカ文学全体への注目が高まれば嬉しいことです。現代企画室では、モヤやラウラ・レストレーポなど、次代のノーベル文学賞候補と言えそうなラテンアメリカ作家の作品も精力的に紹介しています。
*関連書:『サヨナラ』『崩壊』

【イクメン】
『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』
最後に、現代企画室としては新たな試みとして、末盛千枝子さんの絵本をめぐる著書を出版し、3月には出版記念会、その後全国でフェアを展開しています。子供手当て支給が始まり、積極的に子育てに参加する男性(育男)に注目が集まった今年、子育てや家庭、まちづくりなど、より身近で具体的な手ざわりのある、男女を越えてつながりあえるテーマに、新しい手応えを感じています。

地のなかの革命

森宣雄/著

定価3000円+税

沖縄と奄美、世界をつなぐ「消尽する革命」の大地。新史料と哲学によって明らかにされた新たなる世界史。1956年「島ぐるみ闘争」を準備し2010年の「普天間返還を求める県民大会」にまでつながる、占領下に生まれた「存在の解放」の思想とは?

詳細を見る

双頭の沖縄

伊高浩昭/著

定価2800円+税

安保容認・基地新設・日本同化推進=禁断の領域に踏み込む沖縄人。反基地・反軍隊・平和主義・自立の原則を守ろうとする沖縄人。苦悩する双頭の現実を描く。

詳細を見る

〔復刻〕甘蔗伐採期の思想

沖縄・崩壊への出発

森秀人/著

定価2200円+税

かつてオキナワは日本ではなかった。そして今でもそうではない……「復帰論」喧しい60年代前半、その議論の中に戦闘的にわけいった沖縄自立論。

詳細を見る

開戦前夜の「グッバイ・ジャパン」

あなたはスパイだったのですか?

伊藤三郎/著

定価2200円+税

スパイとは何か、ジャーナリストとは何か? 日米開戦をめぐり情勢が緊迫し、ゾルゲ・スパイ団などの諜報機関が暗躍した1940年代初頭の東京。さまざまな思惑や駆け引きが交錯する混沌の最中から歴史的スクープを連発した米国人記者、ジョセフ・ニューマンの謎に迫る。

詳細を見る

金日成・金正日体制と東アジア

渥美文夫/著

定価1500円+税

北朝鮮の金父子体制の批判的分析もないままに有効性なき旧来の理論にしがみつく日本進歩派と左翼の理論的停滞を内側から撃ち、来るべき東アジアの未来を展望する。

詳細を見る

つながる日本海

新しい環日本海文明圏を築くために

武藤誠・北川フラム/編

定価2500円+税

20世紀を通じて「空白の海」となった日本海を再び協調の海とするには何が必要か?歴史、文化、環境など多角的な視点から問いかける。鶴見俊輔、古厩忠夫ほか

詳細を見る

難民への旅

山村淳平/著

定価2500円+税

難民とはなにか。民族とは、そして国家とはなにか。バングラデシュ、タイ、ザイール、パキスタン、および日本で難民の医療支援や調査を続けてきた医師が、難民が発生する原因や社会背景を探り、難民保護および“人道支援”の本質に迫る。

詳細を見る

壁の涙

法務省「外国人収容所」の実態

「壁の涙」製作実行委員会・山村淳平/著

定価1300円+税

日本への滞在を望んでいるのに、不法滞在とされ苦しんでいる外国人たち。入管収容施設でいま、何がおきているのか。綿密な聞き取りにもとづく徹底調査ルポ。

詳細を見る

それでも彼を死刑にしますか?

網走からペルーへ——永山則夫の遙かなる旅

大谷恭子/著

定価1600円+税

死刑、無期、死刑。各級裁判所の異なる判決に翻弄されても「生」への希望を失わなかった永山則夫。裁判員制度がはじまった現在にふたたび問う、「それでも彼を死刑にしますか?」

詳細を見る

無実でも死刑,真犯人はどこに

鶴見事件の真相

大河内秀明/著

定価2200円+税

1998年、横浜市鶴見で起きた金融業者夫婦殺害・強盗事件。容疑者とされ一審で死刑を宣告された被告の冤罪を晴らすべく、弁護人が書きあげた執念の書。

詳細を見る

グローバル化に対抗する運動ともうひとつの世界の可能性

いかに繋がり、いかに変えるか

上智大学グローバル・コンサーン研究所+
国際基督教大学社会科学研究所/編

定価1600円+税

市場の論理をすべてに押しつける新自由主義に、「市民社会」はいかにして対抗するのか。反貧困、労働者の連帯、お金に囚われないライフスタイルの提案など、国内・海外の最前線で闘う活動家が集い、「もうひとつの世界」実現のためにかわした討論の記録。

詳細を見る

「もうひとつの世界」への最前線

グローバリゼーションに対して立ちあがる市民たち

クリストフ・アギトン/著

定価2500円+税

より公平で、より連帯感に満ち、環境を尊重する世界を創出しようとしてきた民衆本位の「もうひとつのグローバリゼーション」を求める声に、今こそ耳を傾けよう。

詳細を見る

嘘から出たまこと

マリオ・バルガス・ジョサ/著

寺尾隆吉/訳

定価2800円+税

今と違う自分になりたい—小説の起源はそこにある。嘘をつき、正体を隠し、仮面をかぶる—だからこそ面白い小説の魅力を、名うての小説読みが縦横無尽に論じる。

詳細を見る

サヨナラ

自ら娼婦となった少女

ラウラ・レストレーポ/著

定価3000円+税

石油と娼婦の街を彩る美しい愛の神話。「コロンビア社会の悲惨さと暴力を描きながら、作品にあふれる民衆の知恵とユーモアの、抗しがたい魅力を見よ」(ガルシア=マルケス)

詳細を見る

崩壊

オラシオ・カステジャーノス・モヤ/著

定価2000円+税

軍事政権、クーデター、内戦、サッカー戦争—中央アメリカ現代史を背景に、架空の名門一族が繰り広げる愛憎のドラマの行方は?注目のエル・サルバドル人作家の作品を初紹介。

詳細を見る

人生に大切なことはすべて絵本から教わった

末盛千枝子/著

定価2000円+税

すえもりブックスを主宰し、国際児童図書評議会(IBBY)国際理事としても活躍した編集者の末盛千枝子さんが語った、宝物のような絵本の数々と素晴しい人々との出会い、そして自らの半生。人間の生き方のなかに本当の美しさを見据えて伝えようとする「希望の言葉」と出会ってください。

詳細を見る