2007年1月4日掲載
---「日本を愛する子どもたちの育成」を目指す財界に従属した公教育
北上田 毅(「心の教育」はいらない!市民会議)
「京セラの創業者・稲盛和夫さんは、『世のため人のために役に立つことをすることが、人間にとって一番大切なことである』という自分の考えを実現させるため、稲盛財団を設立しました。」 >>>*1
「堀場製作所の堀場雅夫最高顧問や京セラの稲盛和夫名誉会長などのように、思い切ってビジネスに挑戦してみようというあふれるような力と情熱を持って会社をつくろうとする人たち」
「オムロンは、得意の技術で、電子部品から健康機器まで、特色あるたくさんの製品とサービスを提供しています。」
「すぐれた品質の女性下着製造・販売のワコール」
これは、企業のカタログや商工会議所のパンフレットではありません。昨年5月末、京都市教委が、市内の小学校4~6年生の子どもたち全員に配布した『歴史都市・京都から学ぶジュニア日本文化検定』(以下、『ジュニア検定』)のテキストの内容です。他にも10社ほどの会社を実名であげて誉め称え、さらに本文中や末尾、裏表紙にも、企業広告が満載です。
その後小学校では、このテキストを使った授業や夏休みの補習等が始まりました。そして、昨年11月には小学5~6年生全員が、授業時間中などに検定試験(基礎コース)を受けさせられました。さらに、テキストの内容等に間違いや問題点などが多く指摘されているにもかかわらず、12月になって今度は市内の中学1年~2年生全員にテキストを配布したのです。今後も、発展コース・名人コースの試験も予定されていますし、また、来年度にも同じ検定を実施すると市教委は説明しています。
これは、京都市が、『京都観光文化検定』(以下、『京都検定』)を実施している京都商工会議所からの要請と財政支援を受け、そのジュニア版として始めた事業です。しかし、『京都検定』は、民間団体が希望者を募って実施しているものですが、『ジュニア検定』は、市教委が学校で子どもたちに強制的に受けさせるものですから、全く違う性格のものです。
事業の中止を求める市民運動も始まりました。市教委への申し入れや署名活動だけではなく、テキストの問題点を検討するための連続学習会、現地スタディウォークなどには多くの市民が集まりました。
また、昨年11月14日には、京都の14名の歴史研究者たちが京都市教委へ申入書・質問書を提出してテキストの間違い等を指摘し、回収と検定の中止を求めています。
さらに、この事業は教育基本法等に違反しているとして、桝本市長や門川教育長らに損害賠償を求める住民訴訟も提訴されました。
いったいこの「ジュニア検定」とは何なのか? 以下、検討していきましょう。
●偏った歴史記述や間違いも----京都市の小・中学校で現在使われている教科書とも多くの相違
このテキストは、「歴史」に最も多くのページをさいていますが、その内容は、現在、京都市の小・中学校で使われている社会・歴史教科書と相違する点が多く、子どもたちの混乱が危惧されます。
まず、各時代にわたって京都と天皇の結びつきが不自然なまでに強調されています。平安時代は「天皇中心の国づくり」、鎌倉時代は「京都は天皇のいる重要な都市」、江戸時代は「天皇のおひざもと・京都」、そして明治は「明治天皇は、新しい国づくりの基本方針を定め、近代国家の基礎を築いた」などと説明していますが、教科書にはこんな記述はありません。それどころか、たとえば江戸時代に京都が「天皇のおひざもと」と呼ばれたような事実はないと歴史学者らが指摘したような間違った内容も多いのです。>>>*2
テキストでは、多くの史跡が紹介されていますが、たとえば「秀吉の天下統一」(教科書では「全国統一」)の項では、大茶会や豪華な花見の宴などの記述がほとんどで、朝鮮侵略や、その「負」の史跡である「耳塚」などには触れていません。『京都検定』のテキストは、伏見の陸軍第16師団本部のような戦争史跡も取りあげていますが、このテキストには、近代の記述はほとんどなく、第2次世界大戦もでてきません。
また、歴史や文化を天皇・貴族・武士らの視点からだけ見ており、一揆などの民衆の動きや反乱・下剋上等の説明はありません。その一方で、清水寺の「忠僕茶屋」や「舌切り茶屋」など、「忠義」の逸話をわざわざ紹介しています。
また、このテキストは、部落問題には全く触れていません。それどころか、「天皇・皇族や将軍など身分の高い人」や「身分の低い山水河原者」といった表現は問題です。
さらに、このテキストには女性がほとんど出てきません。「着物を着ると女の子はしぐさがやさしくなり」などの記述には、「女性の自立と男女の平等をめざして」(現行中学校歴史教科書)といった視点はまるでありません。
このように、このテキストは、あの「つくる会」の『新しい歴史教科書』(扶桑社)との類似点が目立ちます。
こうした点について、昨年11月14日、水野直樹京大教授や赤澤史朗立命大学教授ら京都の歴史研究者14名が「歴史認識と記述内容に大きな疑問がある」として、テキストの回収と検定の中止を申し入れました。そこでも、「京都と天皇のつながりが不自然なまでに強調されており、牽強付会な解釈に基づく記述が随所にある」、「被差別部落の歴史や在日朝鮮人の歴史のように『人権』という観点から重要な事実が無視されている」、「今日まで積み重ねられてきた歴史研究の蓄積を無視するものである上、京都市内の学校で用いられている歴史教科書の記述とも整合していない」と強く批判しています。
また、「京の蹴鞠はサッカーの元祖」、「『もったない』の原点は着物」のような全く根拠のない勝手な決めつけによる記述も目立ちます。
このように、このテキストは、間違いや勝手な決め付けが多く、教材として「有益適切」なものとはいえません。
●他にもテキストには多くの問題 ---企業との不可解な関係、京都は中心部だけ?
このテキストには、特定の企業の「よいしょ」記事>>>*3や広告が満載だということは先に説明しました。
裏表紙は、稲盛財団の「京都賞」の広告です。この広告は写真等だけの簡単なものですが、本文でその内容を詳しく説明しています。広告を本文で補っているという形になっているのです。
また、裏表紙の内側は、NTTドコモの「キッズケータイ」の全面広告。本文中にも14ページにわたって企業広告が続いています。
この点について公文書公開請求をしたところ、なんと、市教委が本文中にあげる企業名を事前に示し、執筆者に指示していたことが判明しました。さらに、門川教育長は、企業・団体に、テキストへの「協賛広告のお願い」の文書まで出しているのです。
また、テキストの末尾には、寄付などの「支援をいただいた企業」として、村田機械、三菱東京UFJ銀行、堀場製作所などの7社の会社名が、ひときわ大きな活字で掲載されています。
「主たる教材」である教科書の場合、「図書の内容に、特定の営利企業、商品などの宣伝や非難になるおそれのあるところはないこと」(文部省告示「義務教育緒学校教科用図書検定基準」)とされていますが、それは「副教材」の場合でも許されないことは当然です。
なお、『京都検定』は商工会議所の主催ですが、そのテキストには、こんな企業名など出てきません。
また、このテキストには、他にも多くの問題があります。
まず、折り込まれた市内地図は、南は中書島で切れており、向島や淀は入っていません。また、東も山科の東半分はなく、左京区や右京区の北部地域も除外されていたのです。市教委は、このようなテキストを市内全小学校の子どもたちに配布したのですが、除外された地域の子どもたちがどう思うのかも考えなかったのでしょうか? >>>*4
さらに、巻頭の桝本市長や門川教育長の顔写真や挨拶文も、子どもたちに配布する教材としては不適切です。『京都検定』の「巻頭の辞」は、「京都商工会議所」とだけ書かれており、会頭の名や写真などもないことと比べても、あまりに露骨なものです。
●事業の真の目的は「日本を愛する子どもたちの育成」 ---「新しい歴史教科書をつくる会」理事が委員長
門川教育長は、昨年5月30日、衆議院教育基本法特別委員会に教育基本法「改正」の立場の参考人として出席しました。そこで、わざわざこの『ジュニア検定』を持ち出し、「(この事業は)郷土を愛し、日本を愛する子どもたちの育成につながっていく」と明言したのです。また、「推進プロジェクト」の会議議事録には、「日本人であることの誇りを取り戻すことが検定の目的」というような意見も掲載されています。こうした「愛国心の育成」が事業の真の目的でしょう。
このように、「日本人であることの誇りを取り戻す」という時、市内の公立学校で学ぶ大勢の外国籍の子どもたちの存在は完全に無視されています。
さらに教育長は、国会で、「京都の教育改革の取組は、今回提案されております改正案の内容と軌を一にするものです」とも述べました。これは、最近の市教委の施策が、現行の教育基本法に抵触していることを自ら認めた暴言です。また、与党の改正案に賛同する発言は、京都市教育長という肩書きで行われました。憲法・教育基本法の遵守義務のある公務員として不適切な発言です。この『ジュニア検定』も、教育基本法改悪の先取りとして実施されているのです。
事業の実施主体である「推進プロジェクト」の構成も、こうした事業の真の目的を反映しています。委員長には、「新しい歴史教科書をつくる会」理事(当時。現在は八木秀次氏の「日本教育再生機構」の代表委員)の市田ひろみ氏が就任。京都でも、一昨年、多くの市民らの抗議で、「つくる会」教科書を採択させなかったのですが、京都市は、その直後に、「つくる会」理事を委員長に据えて、「つくる会」の歴史教科書のような本を子どもたちに配布したのです。
最近、京都の市バスなどには、「日本に京都があってよかった」という恥ずかしいような文面のポスターが掲示されています。これは今、京都の行政、財界が一体となってすすめている「京都創生」運動のキャンペーン。京都の歴史・文化・伝統を強調し、「世界の宝」としての京都再生のために特別措置法を制定し国に財源を出させようというものです。
この「京都創生」の「提言」は、「(京都を守ることは)失われがちな日本国家のアイデンティティーを国民に自覚せしめ、波風の多い今後の歴史の中で自国の誇りと安全を保つ道であるとともに、外に、戦後日本人に投げつけられた『エコノミックアニマル』の汚名をそそぎ、かってのような礼儀正しい文化高き国という令名を日本に回復せしめる道である。」というものです。「愛国心」の強調も、国に財源を出させようという財界の要求からきていることが分かります。京都市長も言明しましたが、今回の『ジュニア検定』も、この「京都創生」の一環として位置づけられているのです。
●財界や市長、教育行政による、教育への不当介入 ---教育基本法・地教行法違反
行政と財界が推進している「京都創生」事業を教育の場に持ち込み、子どもたちに押しつけることは許されません。
また、この事業は、京都市長が発表し、「推進プロジェクト」の委員も市長が選任するなど、京都市としての事業で
す。しかし、市長には教育の内容についてこんな指示を出す権限はありません。教育基本法は、戦前の教育が国家によって支配され、悲惨な戦争に突き進んだ原因となったという反省から生まれました。それが、教育の一般行政からの独立、教育への「不当な支配」の禁止となったのです。
今回の『ジュニア検定』は、財界による教育への介入であるだけでなく、教育に関する市長の職務権限を定めた地教行法第24条に違反するもので、京都市長による教育内容への不当な介入です。
また、市教委には、今回のようなテキストを作成する職務権限はありません。教育行政の任務は、教育基本法第10条で、「諸条件の整備確立」に限られており、教育行政による教育の内的事項への介入も、同法が禁ずる「不当な支配」となるのです。
教材に関する教育委員会の職務権限は、地教行法で、教材の「取扱」や「届け出、承認」とされており、教材の作成はできません。「主たる教材」である教科書の検定制度では、国家は申請された教科書を「検定」するのであって、教科書の執筆・作成者ではありません。教育行政が教材を作成できるというのなら、それは、教科書の国定化を認めることにつながるからです。
●出版社との関係も自治体の業務としては不適切
さらに、このテキストの編集・出版についても多くの疑問があります。
出版にあたって市教委は、多くの出版社に公平に声をかけるのではなく、当初からK社とだけ話をすすめてきました。入札などの手続もいっさい行われていません。
普通、本を出版する場合、著者と出版社との間で文書による契約をかわします。しかし、今回は、出版社と市教委の間には、出版の条件等について何の文書もかわされていないのです。
また、テキストの原稿は、ほとんどが京都市小学校社会科教育研究会の教員らが執筆したというのですが、その原稿をK社の関連会社が編修・校閲しました。しかし、執筆した教員からは、知らない間に原稿が大幅に変えられてしまったという苦情も寄せられています。
市教委は、この出版社に原稿を無償で提供、さらに教育長による企業への協賛広告依頼や、2回にわたる6万部もの大量買い取りなど、同社はこのテキスト出版によって大きな利益がみこまれます。
これは、市教委による特定の民間会社への過剰な便宜供与ではないでしょうか?
●監査結果でも多くの問題点を指摘 ---住民訴訟を提訴
こうした多くの問題を追及するために、「心の教育」はいらない!市民会議と京都・市民オンブズパースン委員会は共同で住民監査請求を行いました。
監査委員会といっても、4名の監査委員のうち2名は市会議員(現在は自民党と公明党)、一人は市のOBという構成ですから結論は分かっていたのですが、それでも監査結果では多くの問題が指摘されたのです。
まず、問題とされたのは、この事業では「決定書による意思決定の手続きが行われていない」という点です。「決定書による決定手続きは、行政上の意思決定に係る最も基本的な手続きであり、また行政活動に係る記録を適切に作成し、保存することは、---市政の透明性の向上、市政に対する市民の信頼の確保のためにも不可欠のものである」にもかかわらず、今回の事業では、「本件検定事業を市教委が主催すること自体、これを明記した決定書が存在しないし、テキストの発行に係る市教委とK社の関係が明確にされていない」と強く批判したのです。
また、京都市長の職務権限の逸脱、教育への介入だという私たちの主張に対して、「上記のような市長の関与は、---地教行法第24条所定の市長の職務権限の範囲を超えるものといわなければならない」と認めました。
さらに、企業の宣伝記事については、「掲載企業の宣伝に類似した表現が用いられるなど、やや表現上の配慮を欠くきらいがある」とし、本件検定事業の準備委託契約を昨年度末にあわてて発注したことについいても、「本件準備委託契約は、その締結時において、市にとって何ら実質的な意義のある成果を得ることのできない契約であって、契約の目的が、明らかに合理性を欠くものであった」と指摘したのです。
監査結果では、このように多くの問題を指摘しながらも、「市に損失は発生していない」等の理由で住民らの請求を棄却しました。
しかし、監査結果でも市教委のやり方が認められたわけではありません。
たとえば、「教育委員会による教育内容への介入」「教育委員会に教材作成の権限はない」という訴えに対しては、「行政が作成した図書その他の資料であっても、学校の権限においてこれを教材として洗濯し、使用する限り、教材を介した教育内容への介入の問題が生じる余地はない」としました。
また、「受検は強制だ」という訴えに対しては、「学校において、課外学習に位置づけつつ、希望者のみを受検とする取扱をすることは可能であるから、請求人が主張するような受検の強制がされているとは認められない」としました。
これらは、たてまえ論に終始し、学校での強制の実態に目をふさいだ不当な判定なのですが、逆にいえば、「テキストの教材としての選択が学校長の権限で行われたのかどうか」、「希望者のみを受検とする取扱が各学校で行われたかどうか」を具体的に検証し、もしそうした自由がなかったのなら、今回の事業は、違法・不当なものとなるという判断を下したことにもなるのです。
私たちはこの監査結果を不当とし、京都地裁に住民訴訟を提訴しました。第1回の口頭弁論は1月17日に開かれます。ご注目ください。
●「スチューデントシティ・ファイナンスパーク事業」--- 堀場雅夫氏が3000万円もの寄付
現在、京都市で進行しているのは、『ジュニア検定』だけではありません。一昨年10月に発表された、「スチューデントシティ・ファイナンスパーク事業」の市教委と企業の関係も同様の問題が指摘されます。
これは、多くの企業の出店が入る施設を設置、そこで小・中学生が、「生きた経済の仕組みを学習する」というものです。この1月から、各学年、年間15~18時間もの学習が予定されています。(企業は、出店以外に、商品やスタッフも提供します。)
すでに、市長と教育プログラムを提供するアメリカの経済教育団体「ジュニア・アチーブメント」との合意文書も交わされました。この団体は、斎藤貴男さんの『機会不平等』でも取り上げられていますが、IBMなどの多国籍企業のトップが理事に名前を連ねた団体で、主に企業から学校に講師を派遣する事業を展開しています。日本では、主に経済同友会系の財界人が日本支部を立ち上げました。
そして、この事業のために、京都商工会議所副会頭・堀場製作所創業者の堀場雅夫氏が、なんと3000万円もの大金を京都市に寄付をして、メインスポンサーとなっています。市内中心部の廃校になった中学校を改築して施設とするのですが、施設工事や空調設備などは、ダイキン工業が無償で提供しています。出店には、すでに大和証券、三井不動産、関西電力、松下電器産業、京都銀行、京都中央信用金庫、京都新聞等の企業が出店することが決まりました。このように、京都市としての予算措置はわずかで、この事業は、ほとんどが企業からの寄付で実施されるのです。
市教委は、現在、各企業へ、出店や備品の提供等の協賛依頼に走り回っています。そこで京都市は、「協賛いただいた場合、次のような直接・間接の広告広報効果がご期待いただけます。毎年1万人を超える参加児童・生徒や保護者に御社の商品・サービスをアピールできます。」(市教委のホームページより)と説明しているのです。もうこれは公教育といったものではなく、まるで商社の宣伝です。子どもたちは、企業の広告効果の対象でしかすぎません。
年間10数時間の学習内容についても、教材や学習プログラム等は「ジュニア・アチーブメント」が全て提供。学校の教員は、ただ、それらを使って授業をするだけです。これこそひどい「民間団体による教育への介入」そのものです。
『ジュニア検定』は京都商工会議所、そして、「スチューデントシティ・ファイナンスパーク事業」は堀場雅夫氏。京都市教委は、財界からクチもお金も出してもらって、もうまるで財界の下請機関、利潤追求の場になってしまったかのようです。
京都市教委の門川教育長は、教育基本法改正を主張し続け、地元では『ジュニア検定』のような教育基本法改悪を先取りをした事業の「功績」により、昨年10月、安倍内閣の「教育再生会議」の委員に「抜擢」されました。>>>*5「教育再生会議」の審議記録をみると、彼は、「美しい国づくりのために---」などと安倍首相に媚を売りながら、「経済界など大人社会の協力、財政支援が必要」としきりに強調しています。
今、彼は、京都ですすめてきた公教育の企業への従属を、日本中に押し広めようとしているのです。
<備考>
なお、朝日新聞社の『論座』2月号が、「検証・『ジュニア京都検定』」という小特集を掲載しているので参照してください。
*1稲盛和夫氏については、斎藤貴男さんが「稲盛和夫のバックグランドは生長の家」「稲盛という人物の話は、結局は人間をいかに支配して安く効率的に使い、生産性を向上させるかという点に収斂していく」「新興宗教の呪術師のようなもの」(『カルト資本主義』等)と強く批判しているのは有名な話です。
また、1996年の京都市長選挙では、当時京都商工会議所会頭だった稲盛氏が桝本候補の選挙母体の会長に就任し、大々的な「企業ぐるみ選挙」の旗振り役を務めました。(同書) 稲盛氏は、僅差で勝利した桝本市長にとっては、まさに「命の恩人」ですから、このテキストぐらいの誉め言葉は当然なのかもしれません。
*2学者グループは、昨年11月14日に市教委に出した質問書で、他にも歴史に関して6点の誤りや問題を指摘しています。たとえば、「中国から日本の朝廷に『献上品』が届いた」、「1200年の歴史を誇る京都市」などという記述です。
*3本文中に特定の企業名を出したことについての私の質問に対して、市教委生涯学習部大黒課長(推進プロジェクト事務局)は、「企業名を出したのは、神社の名前を出したのと同じだ」と回答した。(2006年7月5日)
*4再版のテキストでは、あわてて市内全域の地図と差し替えましたが、小学校で子どもたちに配られたテキストを差し替えたわけではありません。
*5安倍首相の教育問題のブレーンと言われる八木秀次氏らの「日本教育再生機構」は、「教育再生会議」を「委員人選に異議あり」と批判的なのですが、17人の委員のうち3人だけを「教育問題に見識のある方」として褒め称えています。(「日本教育再生会議」のホームページ参照) なんとそのうちの一人が門川教育長。また、「日本教育再生機構」の代表委員の一人には、『ジュニア検定』推進プロジェクトの市田ひろみ氏、さらに、門川教育長が力を入れている非衛生的な「精神鍛錬」運動・「素手によるトイレ清掃」運動の創始者・鍵田秀三郎氏らも顧問として名を連ねています。門川教育長が、この間、どういう勢力に擦り寄ってきたかがよく分かります。