2003年9月20日掲載
少しおそくなってすみません。すごく気になる記事がありました。
財団法人モラロジー研究所(本部・千葉県柏市)の主催した「第40回教育研究会」は、文科省、京都府・市教委の主催。
君が代斉唱にはじまったこの研究会は、「現行憲法は『アメリカ人の、アメリカ人による、アメリカ人のための憲法』で『国際法違反』でもあるため、憲法と教育基本法の改正は避けることができない」と、同研究所廣池理事長のあいさつが続きます。
これが政治的に中立なはずの教育委員会主催の研究会でしょうか? 信じられない想いです。
「教育研究会・未来」(本部・東京)の主宰者・北村弥枝氏は、
「『世の中のお役に立てない子供がすごく出てきている』。戦後の政策は、『若い女性に殿方と同じように表に出て働くことが最高の喜びと教え』、『妻を放棄し、嫁を放棄させ、夫婦別姓などと言うほど狂わせ』、その結果『大和魂を持った子供たちを世の中に送り出すことができなくなった』。」と、某講演会で主張しました。
高知県教委が予定していた講演会は女性団体の抗議をうけて中止しましたが、愛知県(生涯学習課主催)では同講演会を5回続けています。
今、「私」自身が抗議の声をあげていかなければ、公の機関はこの右傾化した動きをどんどん受け入れていってしまう・・。
そんな危機感でいっぱいです。
なかなかテレビや新聞に掲載されませんので、モラロジー研究所や「未来」等の『道徳』民間別動隊について情報をお持ちの方、このサイトに情報をいただければと思います。(長)
(東京新聞 03・8・23朝刊 <新聞記事のため転載禁止> )
文部科学省の道徳補助教材「心のノート」配布と軌を一にして、「心の教育」を掲げた民間団体が近年、活発な動きを見せている。
「愛国心奨励」の意思表示も言論の自由の観点から制限されるべきではない。
しかし、これらの団体の活動が教育委員会など公の後援を受けている点が論議の的になっている。
各地ではこの夏、抗議する市民団体との攻防が演じられている。 (田原拓治)
開会と同時に、司会者が参加者に起立を求めた。今月七日、京都駅前の公共施設の集会場。
演壇に向かって左側には日の丸が掲げられ、やがてテープの伴奏に合わせ、約百人が「君が代」の斉唱を始めた。
この催しは文科省所管の財団法人「モラロジー研究所」(本部・千葉県柏市)が主催する「第四十回教育者研究会」。
六月二十七日から八月まで全国五十四会場で開催される。
京都の研究会は文科省、府教委、市教委が後援した。会場には教職員やOB、市議や幼稚園に勤める若い女性の姿も見えた。
入り口では「心のノート」が販売された。
主催者によると、同団体は一九二六年に設立され、会員は全国十一ブロックで四万八千人。
「倫理道徳の研究と心の生涯学習推進」を掲げ、学生組織もある。
教育者研究会は六三年から年一回開かれ、近年は参加者も増え、これまでに六万六千人が参加した。
「当会においては、道徳教育の育成に献身的なご努力を賜っている」。
「道徳教育先進地」を自任する京都市の門川大作教育長は祝辞でこうあいさつした。
門川氏はこの後、講演にも立った。当日は体調不良で欠席したとはいえ、同市教委出身で「心のノート」を推進した文科省初等中等教育局の柴原弘志氏も講演者リストに名を連ねていた。
この日、会場入り口では市民団体「『心の教育』はいらない!市民会議」(代表・林功三京大名誉教授)のメンバーらが抗議のチラシをまいた。
その理由は、主催者であるモラロジー研究所の廣池幹堂理事長のあいさつ文にあった。
この中で、廣池氏は「新世紀を担う若者に元気がない」とし、その原因は「自虐的な歴史教育がなされたこと」にあり、この克服のために「我が国の歴史、伝統、文化のすばらしさ、とくに皇室を中心として培ってきた寛容の精神、共生の心は(中略)最も必要」と道徳の意義を展開した。
さらに現行憲法は「アメリカ人の、アメリカ人による、アメリカ人のための憲法」で「国際法違反」でもあるため、「憲法と教育基本法の改正は避けることができない」と訴えた。
これに対し、市民会議は「憲法、教育基本法に基づいた教育行政を進めなければならない市教委が憲法を否定した研究会を後援し、チラシを配り、教育長が講演までするのは言語道断であり、公務員の義務を定めた憲法違反」と断定。七月二十九日に講演の差し止めを求める住民監査請求を提出し、座り込みをしたり、公開質問状を提出した。
講演後は教育長の給料返還請求も検討しているという。
■広報活動として異議無視の構え
しかし、京都市教委側は「この五年間、同団体への後援は継続しており」、講演も「市教委の取り組みの広報活動」として、異議申し立てを無視する構えだ。
京都市教委の後援は「モラロジー研究所」に限らない。この五月、「教育研究会・未来」(本部・東京)の講演会も後援した。
「未来」は主宰者の北村弥枝氏が九五年、「女性教育総合研究所」として設立し、その後「世界教育新研究会」に改編、現在の組織名称になった。
全国九ブロックで会員は約三千人。女性が六割を占めている。
北村氏は憲法改正などを訴える「日本会議」との親交から天皇即位十周年記念の奉祝委員も務めている。
応接間には日の丸が飾られ、女性会員が恭しくひざまずいてお茶を出した。
ここ二年ほど、各地の教育委員会の後援を受け、三十回以上「心の教育」をテーマに講演活動をしている。
■「お役に立てぬ子供出ている」
その北村氏が京都の民族派系政治団体で講演した記録がある。
「未来」の事務局次長は「多少、内容は相手に合わせた」というが、基本方針は変わらない。
この時の記録によると、北村氏の発言は次の通りだ。
北村氏は「戦後の日本は外国による弱体化政策にはまり」、「世の中のお役に立てない子供がすごく出てきている」という。
その政策とは「若い女性に殿方と同じように表に出て働くことが最高の喜びと教え」、「妻を放棄し、嫁を放棄させ、夫婦別姓などと言うほど狂わせ」、その結果「大和魂を持った子供たちを世の中に送り出すことができなくなった」。
このため「神国日本としての意識を取り戻し、全世界の中心となる国になるためには」、「子の心は胎教で母が教え」、かつ男性の運勢は女性の「愛の出し方」に左右されるので「妻とお母さんの心を取り戻すべき」と主張している。
「実際にこうした女性の心の変化で子供の不登校やアトピーが治る」と事務局次長の女性は力説し、教育委員会の後援を得ることについては「安心して来てくれるし、会員のボランティアでは賄いきれない分、公立の学校を通じて講演会などを知らせることができる」などの利点を挙げた。
しかし、この七月、高知県で予定されていた講演会では高知県教委が女性団体の抗議を受け、後援辞退を同団体に伝えてきた。同県教委は前年には後援をしていた。生涯学習課の職員は辞退の理由をこう話す。
「うちの県では昨年、男女共同参画策定プランを定めてました。ところが『未来』さんの講演内容はこの政策と矛盾してしまう。県とし ては自己矛盾を避けねばならないので、後援を取り消したいと申し出たところ、向こうから後援を辞退してきてくれたんです」
ただ、この理由を聞く限り、女性団体の抗議がなければ、後援は続いていたとも受け取れる。
実際、九八年以来、昨年十二月までに五回後援している愛知県の場合、生涯学習課の前年の担当者はこう語った。
■申請を認めればあとは自動延長
「新規に後援申請があった場合、団体の規約、沿革や活動実績、会員名簿、開催後の収支決算などを提出させ、県民に有意義か否かを全体 的な見地から判断します。
ただ、実際には聞きに行けない。でも『未来』の場合、参加者からのクレームはありません」
一回認めれば、特別な事情でもない限り、自動的に延長される仕組みだ。とはいえ、愛知県も昨年四月、男女共同参画推進条例が施行されている。
しかし、この職員は「担当課が違うので」と条例の有無すら知らない様子だった。
「心のノート」配布を機に、愛国心を掲げた道徳教育は民間団体の強力な応援を受けている。
さらに地方行政がその中身を子細に検討することなく、後押しする構造が浮かび上がる。
高知県での問題後、北海道などでも同様に女性団体が抗議に動き始めた。一連の動きについて「未来」の事務局次長はこう話した。
「こちらが意固地になれば、反対運動が高まってしまう。それは本意ではありません。
各地での後援についてはいったん引きますが、講演活動は今後とも続けていきます」