2015年2月8日掲載
◆ まず、私の見た映画のBest2をあげます。
1)「旅人は夢を奏でる」(ミカ・カウリスマキ)
フィンランド映画である。原題は「北へ続く道」(Tie pohjoiseen)、英語タイトルは「The Liar」(うそをつく人)。アキ・カウリスマキはよく知られている監督だが、ミカ・カウリスマキはその弟。ミカ・カウリスマキの映画を見たのははじめてだった。3歳のときに捨てられた息子で今は著名なピアニストの前に父が35年ぶりに現れ、親子の始原に遡る旅に出る。ロードムービーの絶品であった。(父親役のヴェサ・マッティ・ロイリはフィンランドで国民的人気のある名優とのこと。)主人公はピアニストであって、ある意味では音楽映画でもあった。
2)「ジャージ・ボーイズ」(クリント・イーストウッド)
ザ・ビートルズ以前に一世風靡した「ザ・フォーシーズンズ」(代表作は「シェリー」「君の瞳に恋している」)の栄光と挫折、そして再生の物語を軸としたミュージカル映画である。クリント・イーストウッドの映画では音楽が独特の魅力なので、これはぜひ見ようと思っていた。期待した以上に実にすばらしい映画だった。
◆最後に、最近入れこんでいるイタリア映画を1本あげておこう。
3)「幸せのバランス」(イヴァーノ・デ・マッテオ)
最近のイタリア映画は「はずれ」ということがない。ローマ市の福祉課に勤めるジュリオ(ヴァレリオ・マスタンドレア・「フォンターナ広場」の警視役)は妻エレナ(バルボラ・ボブローヴァ・「ココシャネル」の若きシャネル)、娘カミラ(ロザベル・ラウレンティ・セラーズ・「ココシャネル」のココ役)との平穏な生活を送っていたが、同僚の女性との浮気がばれ、別居生活を送ることになる。そこから生活が苦しくなり、「新たな貧困」に陥り、車中で寝るホームレス状態になる。中産階級がいつ何時でも貧困に落ちうるイタリア社会の現状(先進諸国に共通する現象)が惻惻と伝わるちょっと怖い映画だった。(イタリア発の造語に「プレカリアート」があるが、それだな。)原題の「GLE EQUILIBRISTI」は「曲芸師、軽業師」・・「綱渡り」ということか?
(松岡)