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指導課交渉報告(2019.3.5・教育委員会会議室) 

2019年05月11日掲載



 例年、指導課との交渉は、学習指導要領、道徳教育、そして「日の君」が焦点となります。問題はそれだけではありません。高槻市の教員の仕事をとても増やしているのは、指導課そのものであるという事実です。
 今年から「学級活動」まで年間計画の書類を作成しなけれはならなくなりました。
 「キャリア教育」の計画が要るそうで、市教委が作った6年の計画見本を見ますと、
 「目標を決めよう・・当番を決めよう・・前期を振り返ろう・・卒業に向けて準備しよう・・中学に向けて目標をたてよう」と書かれてありました。これがキャリア教育?
 読んでまず目を疑い、次に吹き出し、最後に怒りがわきあがりました。こんなしょーぼない事までさせて、私たち教員を超勤、そして病のフチに追いやるのかと。
 怒りがわきあがるのは、勿論これだけではありません。高槻の学校はどこへ向かっていくのでしょうか? 要求書から(4)と(5)を重点的に報告します。

(4)道徳教育・日の丸・君が代・元号に関して

③学校に「愛国心」を押しつけないこと。「愛国心」の評価をしないこと。
       (松岡 勲)

・・・愛国心、道徳教育に関わる交渉にも関わらず交渉参加の指導課職員5人の中でひとりも高槻で使用の日本文教出版の道徳教科書を持参して来なかったことに驚かされた。
 回答の「道徳教育に関わる指導は(数値などによる評価はではなく)児童生徒の人間的な成長を見守り、努力を認めたりすることによって自らの成長を実感し、さらに意欲的に取り組もうとするきっかけとするような努力を評価することが大切であることを認識している。」はどのような指導か具体的に述べよと迫った。しかし、道徳の指導要領の文章を読むだけで何ら説明になっていなかった。そこで組合は日文の道徳「別冊」(中3)の「さよならホストファミリー」を例に上げ、道徳の評価が、22の徳目(自分自身との関わり5項目、集団や社会との関わり9項目、人との関わり4項目、生命や自然、崇高なものとの関わり4項目)を前提として、その徳目に児童の認識(道徳観)を流し込むものであり、それ自体が問題であることを指摘した。
 具体的に教材「さよならホストファミリー」は「日本人としての誇り、日本人としての意識」を深めることを評価の目標にしており、公立学校に在籍するのは日本人のみではなく、在日朝鮮人や在日外国人もいることを考え、また外国人労働者が増えていく時代を考えると問題であると指摘したが、指導課はまともに答えることができない有様だった。指導課は「愛国心は評価しない。」と逃げるばかりだった。(それは結構なことだが。)

(日の丸・君が代・元号について)      (山田 肇)

④ 2011年、当時の橋下大阪府知事によって作られた「国旗国歌強制条例」について、2016年3月、大阪弁護士会は、「違憲・違法の疑いがあり」、「君が代」不起立に「懲戒処分をもって対応することは、思想良心の自由を侵害し許されない」と勧告した。大阪弁護士会が勧告したように、同条例は、日本国憲法が基本的人権として保障する自由と権利、とりわけ教職員の思想良心の自由を侵害しており違憲である。したがって、同条例の廃止を大阪府に求めること。

・・・この要求に対して、市教委はこの条例の「廃止について、府の議会で決定されたことに対して、市の行政側が意見を述べる立場ではない」と回答した。しかし、大阪弁護士会の勧告に対して、どう考えるのか?と問うと、「弁護士会の勧告には強制力はない」と驚くべき回答!弁護士会が、「条例」は「教職員の思想良心の自由を侵害しており違憲」としたのに、市教委はこの勧告を無視し、「君が代」を職務命令で強制し、「思想良心の自由」を圧殺し続けると言ったことになる。許せない。

⑤ 昨年5月、日大アメフト部の内田監督が「悪質タックル」で「相手をつぶしてこい」と命令したこと、「君が代」を立って歌えとする職務命令は、どちらも「悪質」な命令である。「君が代」の職務命令は、日本の侵略戦争を進めた天皇をたたえろ、とする命令である。この命令に従うことは「教え子を戦場に送る」道をくり返すことにつながり、また、子どもたちに何が正しいか、自分で考えて行動するようにと言ってきた教師としての「良心」に反し、「悪質タックル」と同じく「良心」を踏みにじる命令である。
 ところが、市教委はこの「悪質」な「君が代」の職務命令を出し続けているばかりか、府教委は「君が代」の起立斉唱の職務命令に従うという「意向確認書」に署名・捺印しない者は再任用しない=クビだとした。「君が代」不起立を理由とした山田組合員の戒告処分は、2014年3月の人事委員会の「裁決」で取り消されているにもかかわらず、「意向確認書」の不提出=「君が代」の踏み絵を踏まなかったため、山田組合員の再任用を取り消した。山田組合員の再任用取消を撤回するよう、高槻市教委は大阪府教委に要望を上げられたい。
 また、大阪弁護士会の勧告を尊重し、職務命令によって「君が代」の起立斉唱を強制しないこと、そして、教職員に「君が代」のピアノ伴奏を強制しないこと、いかなることがあっても「処分による強制」をおこなわないこと。
 さらに、「君が代」で立つか座るかを聞くことは教職員に対する思想調査であり、また、「君が代」不起立かどうか、その意思を表明するかしないかは、その人の自由意志に任せられるべきである。また、そのような調査に、どのような法的根拠もない。今年度の卒・入学式において、職務命令を背景にして、事前に「国歌斉唱」時の起立・不起立などについて個別に態度表明を求めるなど、教職員の「内心の自由」および「良心の自由」を侵害する行為を校長に求めないこと。また、思想・信条の自由を侵害し個人情報保護条例に違反する「不起立調査報告」などを校長に求めないこと。

⑥ 市教委は教職員に「日の丸・君が代」指導を強制しないこと。また、卒業式・入学式においても式場内の子ども・保護者・教職員に対して「日の丸掲揚・君が代斉唱」を強制しないこと。

⑦ 「日の丸・君が代」の取り扱いについては、これまでの卒業式・入学式に見られたような児童生徒、保護者や教職員の「思想・良心の自由」を侵すことのないよう、また人権侵害のないよう最大限の配慮をすること。大阪弁護士会勧告(05・3・10)を尊重し、児童・生徒および保護者に対して「思想・良心の自由」についての、事前説明を実施するなど最大限の配慮をすること。

・・・これら⑤⑥⑦の要求に対して、市教委は「学習指導要領に基づき、卒業式・入学式における国旗・国歌の取り扱いが適切に行われるように指導している。保護者に対しては、学校運営についての理解と協力が得られるよう努めてまいりたい」と毎年聞くような型どおりの回答をしてきた。しかし、「君が代」の起立斉唱はどんな職務なのか?「適切に指導」とは何か?「指導」と職務命令は違うと問いと追及に対してまともに答えず、ただ「学習指導要領に基づ」いてとくり返すばかりだった。
「学習指導要領に基づき」しか言うことがないのか、それしか言えないのか!結局のところ、「適切な指導」と言いながら、職務命令で「君が代」を立って歌えと強制する市教委に怒りがつのるばかりだった。

⑧「大阪北部地震」で寿栄小学校4年生の児童がブロック塀の下敷きになって亡くなるという痛ましいことが起こった。なぜ、このようなことが起こったのか?それは、子どもたちの安心・安全な教育環境を整えるべき高槻市教委が、やるべきこと=法に則った安全点検を怠り、やるべきでないこと=法にないことをやってきたからである。
 やるべきでないこととは、2016年6月1日に 突如、高槻市の小・中学校に「日の丸」の常時掲揚をおこなったことである。しかも、驚くべきことに市教委は「日の丸」の常時掲揚には「法的根拠はない。市の規則にもございません」と平然と言い放った。さらには、「日の丸」を毎日仰ぎ見ながら学習する子どもたちの教育内容に関わることであるのに、教育指導課は関与しない、施設課の問題だと、教育指導課は責任転嫁と問題のすりかえまで行った。
 「日の丸」常時掲揚は、毎日、子どもたちに「日の丸」を仰ぎ見させることによって、「日の丸」に表される「国家に対する肯定的受容、すなわち国家忠誠」という「特定の思想」を、子どもたちに「刷りこむ」ものとなる。「教育の場での権力的な強制という方法による国家忠誠意識の注入」は許されない。教育指導課は「日の丸」常時掲揚による子どもたちへの「内面」の強制に対してどのように教育指導の責任を負うのか明らかにされよ。

・・・この⑧に対して、市教委は「学習指導要領に基づき、国旗・国歌の意義について、適切に指導してまいりたい」と回答した。しかし、この回答は事実無根。安倍政権のウソと虚偽答弁の国会答弁よりさらにひどい。悪質!「学習指導要領」に「日の丸」常時掲揚せよとは一言もない。そして、「日の丸」常時掲揚は学校警備員に新たに仕事として付加し、校長は子どもたちに「適切に指導」どころか一言も説明していない。何より、市教委・教育指導課は、「日の丸」掲揚が子どもたちの教育内容に関わることであるにもかかわらず、逃げるが如く「そこにポールがあるから」「日の丸」を掲げると施設課に仕事を転嫁した。こんな事実と違う回答で逃げることは許さない。私たちの怒りの追及は激しくなった。

⑨ 元号の強制をしないこと。また、卒業証書の発行年月日表記で、元号を強制しないこと。また卒業証書の生年月日表記は個々の児童・生徒及び保護者の意向を確認し、尊重すること。

・・・この⑨に対して、市教委は「公文書については今後とも元号を指導してまいりたい。また、卒業証書については各学校長の判断により一定の様式に沿って今後も実施してまいりたい」と回答した。「公文書」は元号なんて規定はない。これも法令無視である。なお、従来通り卒業証書の生年月日は西暦も可能である。

(5)学習指導要領に関して

③ 今年度の中学校道徳教科書採択で大きな問題になったのは、検定合格した7社の教科書のなかに、教科書本体または別冊で、道徳学習結果について生徒に「自己評価」(数値評価)をさせることであった。この自己評価で数値による段階評価をすることは「徳目の強制」であり、生徒の「内面の自由」を侵害するものである。高槻で採択された日本文教出版の教科書は自己評価(数値評価)である。数値による段階評価、自己評価がなされないよう各校を指導されたい。

・・・市教委が日本文教出版を道徳教科書として採択したが、どこが優れていると考えたかと問うたが、「いじめ問題」の取扱いが優れているとの回答だった。そこで日文の道徳「別冊」の「いじめをなくすために」(2年)を例に上げて、問題点を指摘した。そこには「いじめと法律」という内容があり、「いじめ」とみなされる行為の中には、「法律では犯罪」になるものがあるとする。その犯罪を「名誉毀損罪、侮辱罪」「暴行罪、傷害罪」「脅迫罪」「強要罪など」と4つ上げる。これは「いじめをすると犯罪で罰せられる」と生徒を脅す教育ではないかと問うたが、指導課は答られなかった。道徳での「いじめ」問題の取扱い方、それに関わる評価のあり方は、22の徳目を評価目標として生徒の内面を自己評価させ、その方向に流し込むもので、内面の統制であると指摘した。