2018年1月28日掲載
審査請求までの経過
10月27日、今年度小学校道徳教科書採択に関わって異議申立・審査請求をしました。
8月18日、高槻市教育委員会会議で道徳教科書が正式採択されました。
一体どのような経過で、この道徳教科書(教育出版)が選ばれたのか、私は知りたくなり、18日以前に開催され、教科書検討を行った教育委員協議会会議録を公開請求したのです。ところが、同30日に帰ってきた答えは「文書不存在による非公開決定」でした。
《わび状舞いこむ》
不存在決定後、高槻市教委指導課より「教科書問題を考える北摂ネットワーク」へ「詫び状」が来ました。その内容は、同ネットワークが出した「質問状」への回答が「誤った回答」であったとするものでした。その内容は、
(誤)協議会の議事録は作成している。要求があれば公開する。
(正)協議会の議事録もメモ作成していない。
(本市では協議会でなく、連絡会として実施しています。)
その後、私は、市教委のいう「連絡会」の情報公開請求をしましたが、公開されたものは選定委員会「答申」のみでした。この答申は、すでに指導課より情報提供されていましたので、指導課に突き返しました。この答申以外に何の情報も入っていないので「公開決定とは言えない」と「再考」を求めました。これに対する指導課の返答は「文章の作成は、しない」というものでした。
《法務課立ち会いで文書公開を求める》
なおこの件で、10月20日に高槻市法務課の立ち会いで指導課と協議した時、この「連絡会」は7月18日の定例教育委員会の終了後行われ、当日出た選定委員会「答申」の説明と若干の質問のあった30分程度の会議だったと分かりました。
審査請求の結論部分で、「本件事案の重要性に鑑み、実施機関は、原処分を取り消し、会議録を作成をした上で、「文書の公開」とすることを求める。」と要求しました。
審査請求後、情報公開審査会への諮問、審査請求に対して市教委の「釈明書」提出、そして請求人の「反論書」提出と進んでいます。以下、審査請求書と「反論書」を掲載します。
(松岡)
審査請求書
2017年10月27日
高槻市教育委員会様
審査請求人 松岡 勲
審査請求書
行政不服審査法第2条にもとづき、次のとおり異議を申立て、審査請求いたします。
1、審査請求人の氏名 松岡 勲
年齢 73歳
2、審査請求に係る処分
平成29年8月30日付高教指第791号-2での文書不存在による
非公開決定処分
3、本件処分のあったことを知った年月日
2017年9月1日
4、審査請求の趣旨およびその理由
趣 旨:本件文書不存在による非公開決定を取り消し、「全部公開」を求める
経 過:平成29年8月30日付高教指第791号-2のとおり
理 由:①審査請求人は、今年度の高槻市における小学校の道徳教科用図書採択について、高槻市教育委員会が教科書採択決定の教育委員会会議より以前に行った教育委員による道徳教科書検討のための教育委員協議会の議事録の開示請求を行った。
②実施機関は、公開請求した文書について、「請求に係る公文書については作成していない」を理由に文書不存在による非公開処分とした。
③本件教育委員協議会は教科書採択のための教育委員による道徳教科書の検討の会議であり、教科書の中味を検討し、どの教科書を採択すべきかを討議する重要な会議であった。
今年の小学校道徳教科書採択に関わって、教科書問題を考える北摂市民ネットワー(代表相原正)が高槻市教育委員会に2017年6月5日付で公開質問状を提出し、本件に係る事項について質問した。それに対して高槻市教育員会は2017年6月15日付回答で「協議会議事録を作成している。要求があれば公開する」と回答した。請求人はその回答をもって期待のもと公開請求した。
⑤高槻市情報公開条例は、「公文書の公開を請求する権利を保障」することを目的(第1条)とし、「実施機関は、公文書の公開を請求する権利が十分尊重されるようこの条例を解釈、運用」しなければならないとし、「公文書の公開と併せて市民が必要とする情報を迅速に提供するよう努めなければならない」と実施機関の責務(第3条)を定めている。
⑥よって、本件事案の重要性に鑑み、実施機関は、原処分を取り消し、会議録を作成をした上で、「文書の公開」とすることを求める。
5、処分庁の教示の有無およびその内容
不服のあるときは、審査請求又は取消の訴えが提起できる旨の教示があった。
6、審査請求の年月日 2017年10月27日
7、審査の方法について
処分庁からの答弁を待って追加陳述を行う。
口頭意見陳述の機会を設けていただきたい。
反 論 書
反 論 書
2018年1月24日
高槻市情報公開審査会
会長 松本 和彦 様
審査請求人
松 岡 勲
審査請求人は高槻市教育委員会(以下、処分庁)の2017年12月26日付の高教指第1395号による弁明書について次の通り反論します。
第1 本反論書の趣旨
「審査請求に係る処分庁の文書不存在処分は不当であり、会議録を作成した上、公開が妥当」との裁決を求めます。
第2 本件請求及び文書不存在処分の経過
処分庁の2017年12月26日付高教指第1395号の弁明通り、審査請求人は2017年8月18日に2017年度の高槻市における小学校の道徳教科用図書(以下、道徳教科書)採択について、処分庁が教科書採択決定の教育委員会会議より以前に行った教育委員による道徳教科書検討のための教育委員協議会の議事録の開示請求を行いました。
今年の小学校道徳教科書採択に関わって、教科書問題を考える北摂市民ネットワーが処分庁に2017年6月5日付で公開質問状を提出し、本件に係る事項について質問しました。それに対して処分庁は2017年6月15日付回答で「協議会議事録を作成している。要求があれば公開する。」と回答しました。請求人はその回答を受けて、期待のもとに公開請求しました。
しかしながら処分庁は公開請求した文書について、2017年8月30日付で「請求に係る公文書については、作成していない」を理由に文書不存在による非公開処分としました。
処分庁は、2017年8月30日付文書不存在による非公開処分通知後、2017年9月19日付で処分庁より送られて来た「【公開質問状】への誤回答についてお詫び」で「協議会の議事録もメモも作成していない。」(本市では協議会ではなく、連絡会として実施しております。)と訂正と謝罪をしてきましたが、「行政手続法」に照らせば「誤った解答」をしたと謝罪してすむものではありません。(以下、教育委員協議会を「教育委員連絡会」と表記します。)
本件教育委員連絡会は、教科書採択のために教育委員により道徳教科書を学習、検討する実質的な会議です。すなわち採択予定の教科書の中味を検討し、教科用図書選定委員会(以下、選定委員会と言う)の答申を精査し、どの教科書を採択すべきか意思決定する重要な会議です。よって処分庁は教科書採択の公平・公正な経緯についての説明責任を果たすために、会議録を作成した上で、求めに応じて公開する責務を負っています。本事案において会議録を作成しなていないという事実は違法であり、本件事案に関わる会議録をただちに作成し、公開すべきです。
【(資料1)今年度教科書採択の情報公開の経過】
第3 本件請求の条例適合性
高槻市情報公開条例は、「公文書の公開を請求する権利を保障」することを目的(第1条)とし、「実施機関は、公文書の公開を請求する権利が十分尊重されるようこの条例を解釈、運用」しなければならないとし、「公文書の公開と併せて市民が必要とする情報を迅速に提供するよう努めなければならない」と実施機関の責務(第3条)を定めています。
本件請求は、教育委員連絡会において、処分庁が今年度の教科書採択に関わって、どのように教科書の中味を検討し、どの教科書を採択すべきかを議論したのかを明らかにすることを求めたものである。本来処分庁は会議録作成の上、「会議録を公開」し、説明責任を果たすべきです。しかるに処分庁は会議録を作成しないという市民の知る権利を阻害する事象を招いており、重大な背信行為を犯しています。
第4 本件文書不存在処分の違法性・不当性
1)2012年7月4日付高槻市情報公開審査会答申の意義
2011年度の高槻市における中学校教科書採択で請求人は開示請求をしましたが、全面的な公開は9月1日以降で、採択前は非公開でした。そこで高槻市情報公開審査会に異議申立をし、「調査報告書」「学校意見書」は採択までに公開すべきという画期的な高槻市情報公開審査会答申(以下、「答申」という)が出されました。そして、処分庁からそれに従った公開決定が出ました。
【(処分庁資料8)異議申立てに対するに決定について(答申)】
【(資料2)「答申」を受けての高槻市教委への「要望書」】
その後、2014年度の小学校教科書採択、2015年度の中学校教科書採択、今年度の小学校道徳教科書採択と続きましたが、前述「答申」に基づき、採択過程の審議内容を情報公開により順次取得できました。その結果、教科書採択の教育委員会会議を開催する前に、それまで秘密とされていた文書類、会議録、選定委員会「答申」等が全面公開されることができました。
処分庁の教科書採択に関わる関係文書でまだ公開されていないのは、今回審査請求した教育委員連絡会の会議録のみとなりました。高槻市における教科書採択に関する文書等の全面開示は全国的に進んだものであり、処分庁の説明責任を完結するためには、残るは教育育委員連絡会の会議録を公開することです。
2)処分庁「釈明書」について
処分庁は2017年12月26日付「弁明書」において、本件公文書不存在による非公開決定処分について理由を上げるが、それは弁明になっていません。以下、その理由を述べます。
①処分庁は、「公開質問状への回答が誤りがあったことを認め、市ホームページに「事務処理ミス・事件・事故等の公表」に掲載をするとともに公開質問状をした団体の担当者にお詫びの文章を送付した。」「コンプライアン室に事務処理ミス等の報告書、事務処理ミス等の再発防止策実施報告書を提出した。」という。行政措置の誤りを認め、市ホームページに掲載し、当該団体に謝罪文書を送ったとしても、またコンプライアン室に事務処理ミス報告書、再発防止策実施報告書を提出したとしても、本来作成すべき会議録を作成していなかったことそのものが違法であり、処分庁の釈明は何ら意味をなしません。
②処分庁は、その発生原因として「担当者の教科書採択事務に関して経験不足であった。教育委員連絡会についての認識を誤っていた。」「教育委員連絡会に関係している教育管理部総務課への合議がなされず、チェック体制に不備があった。」「教科書採択に関わってきた職員の多くが、三月末で異動になり、引き継ぎが十分でなかった。」等を上げています。それらは、処分庁内部の稚拙性を自ら証言しているにすぎません。本来作成すべき議事録を作成しなかった弁明とは言えません。
③処分庁は、2017年8月18日の採択の教育委員会会議において、「どのような教科書を採択するかの審議がなされたことは明らかである。」というが、請求人はそれまでの審議の経緯を問うているのです。
④処分庁は、「教育委員協議会(連絡会)は、教育委員会の会議が終了した後、委員が隣室に移動し、連絡事項や事務連絡を行っている。」と弁明していますが、請求人は長時間を要する教科書内容についての議論をいつどこで行ったかを尋ねているのであり、「事務連絡」で教科書採択の検討が行えるものではありません。また事務連絡のみであったとしたら、会議要点録は簡単に作成できるのではないでしょうか。
⑤処分庁は、「公開制度の対象となる文書は、現に「組織的に用いるものとして管理しているもの」であるから、公開請求に対して新たな公文書の作成を義務づけるものではない。」(「高槻市情報公開制度の手引き」)というが、請求人は教科書採択決定までの経緯を明らかにするべきだとして、本来公開するべき文書の公開を求めているのであるから、この「運用の手引き」を理由にすることは失当です。
⑥「付言」にいう、処分庁がこれまでの請求人からの情報公開請求に対して、真摯に「対応」してきたことは評価しています。それをさらに徹底、完結してもらいたいと望んでいるのです。
3)今年度小学校道徳教科書採択に残る不透明性
処分庁は、今年度の小学校道徳教科書採択からこれまで実施してきた選定委員会答申の「2社絞り込み」を廃止しました。従来、高槻市の教科書採択においては「選定委員会「答申」を尊重する」としていた選定方法を反古にし、「選定委員会「答申」を参考にするが、採択はそれに左右されない」と方針転換しています。「2社絞り込み」及び「選定委員会の答申の尊重」の廃止は、教科書についての見識を持って実践する教職員の意見を尊重し、教科書を採択してきた従来の処分庁の方法を根本的に転換するものです。
処分庁は、本件開示請求により、、採択方式の一方的変更が明白化されることを忌避するめ、本件会議録をあえて作成しなかったと強く思料します。
【(資料3)小学校道徳教科書採択にあたっての要望書(2)】
その結果、今年度の選定委員会「答申」においては「2社絞り込み」はなくなり、各社並列の記述になりました。選定委員会「答申」において、検定を合格した小学校道徳教科書8社中数社に関して「記述行数が若干多い」という特徴がありました。処分庁事務局(指導課)に確認すると、この数社が選定委員会が評価した教科書であるとのことでしたが、ただそのことは採択に関わる教育委員会会議では説明されませんでした。
また第3回選定委員会の公開文書中に「答申(案)」がありました。この中で説明行数の多い教科書は「教育出版、光村図書出版、日本文教出版」とありました。公開された第3回選定委員会会議要点録では、「答申について、検討・修正等が必要なことを確認」「教育委員会への答申の作成については、委員長に一任することを確認」とあります。その後、7月18日付の正式の「答申」では、、「学校図書、光村図書出版、日本文教出版」となり、「教育出版」が消えて、「学校図書」に入れ替わっています。その経緯について選定委員会、採択に関わる教育委員会議等のどこにも記録が見られません。
【(資料4)高槻市選定委員会「答申」(案)】
【(資料5)高槻市選定委員会「答申」】
【(資料6)高槻市第3回選定員会会議要点録】
2017年8月18日の教科書採択がなされた教育委員会定例会では、道徳教科書の論議は処分庁の「資料7」ごとく、簡単なものであり、事前に教育委員のなかでどのような議論がなされて結論に到ったのかが、まったく説明がなく、曖昧なものでした。
【(処分庁資料7)第8回高槻市教育員会定例会会議録】
(深堀基子委員長が道徳の採択に入ると提案)
中村公美子委員
各社それぞれに子どもたちがよりわかりやすく、より意欲的に取り組める工夫がされていると思います。その中で、この場の審議であったように2部構成になっていて考えを披露することがゲーム化されている点であったり、いじめ問題の取扱いであったり、評価をしていく上での工夫が優れている点など、このようなことから、学校図書の教科書が良いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(全員異議なしで採択決定)
4)処分庁との話し合いについて
前述のように処分庁は2017年8月30日に、請求人が公開請求した「教育委員協議会議事録」について、「請求に係る公文書については、作成していない」を理由に文書不存在による非公開処分としました。今年の小学校道徳教科書採択に関わって、教科書問題を考える北摂市民ネットワーが処分庁に2017年6月5日付で公開質問状を提出し、本件に係る事項について質問しました。質問に対して処分庁は2017年6月15日付回答で「協議会議事録を作成している。要求があれば公開する。」と回答しました。請求人はその回答を受けて、期待のもと公開請求しました。8月30日付文書不存在処分後、2017年9月19日付で処分庁より送られて来た「【公開質問状】への誤回答についてお詫び」で「協議会の議事録もメモも作成していない。」(本市では協議会ではなく、連絡会として実施しております。)と訂正と謝罪してきました。
【(処分庁資料3)公開質問状に対する誤回答についてのお詫び】
処分庁がいう教育委員連絡会の文書の公開を求めましたが、公開された文書はすでに処分庁より入手していた選定委員会「答申」のみであり、これでは「情報非公開」と同じです。
それで高槻市法務課職員立ち会いのもと、処分庁事務局(教育指導課)と2017年10月12日、10月20日の2度協議をし、教育委員連絡会の会議メモの作成を求めましたが、処分庁はこれも拒否しました。そのような経過により2017年10月27日の本審査請求に到りました。
採択の教育委員会会議は録音されており、録音を掘り起こして1ヶ月後に正式の会議録がウェブ上で公開されています。調査員会、選定委員会の会議要点録は担当者のメモに基づき作成されます。教育委員連絡会も会議要点録を作成する場合、同様の手法により会議要点録の作成は可能です。審議の透明性を高めるために処分庁は説明責任・職責を果たす労を惜しんではなりません。
5)本件請求文書開示の重要性
大阪府下市町村の今年度小学校道徳教科書採択の結果を見ますと、大阪府下で「学校図書」の道徳教科書を採択した市町村は「高槻市」のみであり、特異な採択結果を示しています。なぜ高槻市のみが特異な結果を選択したのか、合理的根拠を検証するためには、選定経緯の全過程が開示される必要があります。
【(資料7)大阪府下に於ける小学校道徳教科書採択結果】
6)まとめ
以上の通り、高槻市の道徳教科書採択には「不透明」な部分があります。教科書採択を実質的に議論した教育委員連絡会が小学校道徳教育教科書についてどのような内容を検討し、採択のため何を討議したかは、処分庁の非公開により不明であり、会議録の公開が求められます。
<求釈明>
処分庁は「釈明書」で、本件教育連絡会は選定委員会「答申」の出た7月18日の教育委員会定例会後に短時間行われ、今後の事務連絡をしたと言います。
8社ある小学校教科書(別冊もあります)の分量は多く、相当の時間をかけないと検討はできません。1回の教科書採択の教育委員会会議だけでは消化できるものではありません。小学校道徳教科書採択のための学習、中味の検討、どの教科書を採択するのがよいかの論議は、どこでどのように行われれたのか、教育委員連絡会等の協議の期日、検討内容の説明、釈明を求めます。
第5 結論
本件事案の重要性に鑑み、処分庁は原処分を取り消し、会議録を作成した上で「会議録公開が妥当」とする「答申」を求めます。
<添付資料>
(資料1)今年度教科書採択の情報公開の経過
(資料2)「答申」を受けての高槻市教委への「要望書」
(資料3)小学校道徳教科書採択にあたっての要望書(2)
(資料4)高槻市選定委員会「答申」(案)
(資料5)高槻市選定委員会「答申」
(資料6)高槻市第3回選定員会会議要点録
(資料7)大阪府下に於ける小学校道徳教科書採択結果