2014年11月30日掲載
山田 肇)
8月28日、グループZAZAで一緒に闘っている元府立高校教員の菅平和さん、野村尚さん、元豊中市立小学校教員の佐藤訓子さん、そして、私の4人で、再任用合格取消&拒否の撤回をもとめ大阪地裁に提訴しました。
訴状には代理人弁護士として、23人もの弁護士の方々に名を連ねてもらっています。心強いかぎりです。
訴状の「請求の趣旨」を私に関して言えば、
1,大阪府教育委員会が2012年3月29日付けで、原告山田に対し てした再任用合格決定の取消処分を取り消す。
2,大阪府教育委員会は
(1)2012年4月1日付で原告山田を高槻市立
小学校教員に・・・再任用せよ。
(2)(3)(4)は省略
3,原告山田が
(1)高槻市公立学校教員たる地位にあることを確認する。
(2)高槻市立南平台小学校の教諭たる地位にあることを確認する。
4,被告らは原告山田に対して、金1147万9200円及びこれに対する訴状送達の日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
というものです。
なぜ、再任用合格取消の撤回をもとめて裁判に訴えたかというと、私の場合は3月24日付けで大阪府人事委員会の「裁決書」が出され、人事委員会は、「戒告処分は取消」したものの、「起立斉唱の職務命令に反したことは変わらない」、また、府教委の言う再任用は「裁量権の範囲内」という主張を認め、「再任用合格の取消しの撤回」は「棄却」したからです。
「戒告処分」は天下晴れて取り消された!
人事委員会が戒告処分を取り消したのは、「市教委の内申が、府教委の懲戒処分の手続要件」であるにもかかわらず、「市教委の議決を経ない内申による本件処分は」「適法な内申を欠いた懲戒処分というべきであり、本件処分は、違法な処分といわざるをえない。」からでした。
つまり、私の戒告処分は、高槻市の5人の教育委員会議において議決・承認されておらず、教育長の「専決」で行った「市教委の内申」は、地教行法に違反しており、「戒告処分を取り消す」と人事委員会が裁決したということです。
府教委側の弁護士、筒井豊氏は、最終書面21ページ中、9ページも使って、この市教委の内申は、教育長の「専決」でいける、「法令の根拠を要しない」と長々と書いていたにもかかわらず、筒井氏の「主張」はすべて吹っ飛び、私の戒告処分は天下晴れて取り消されました。
「法律に従うのが教育公務員だ」「『君が代』を立って歌え」「職務命令に従え」と、何百回とくり返していた高槻市教委自身が、法を犯していた! この厳然たる事実を前にしても、高槻市教委は私に謝罪すらしなかった。教職員には「法律に従え」と言いながら、自らの法令違反には“ほおかむり”してやり過ごした。そんなことで、教育行政が成りたつか!いや、教育自身が成りたつか?教育が語れるか!
アイヒマンの如く「私は命令に従っただけだ。」と言うことは、できない!
私は人事委員会・口頭審理で次のように、主張しました。
「私は、日々、子どもたちに『いいことか悪いことかをしっかり自分で考えて発言したり行動したりするように。』と言ってきました。そう言ってきた私が、『日の丸』『君が代』とは何なのか?を考えず、職務命令だからといって、ユダヤ人虐殺の責任者=ナチス・ドイツのアイヒマンのように『私は命令に従っただけだ。』と言うことは、人間として、教師として絶対できません。『日の丸』『君が代』が『真理と正義』に立ったものかどうかを考えて行動するのは、教師としての『良心の自由』であり、『義務』でもあると考えます。
また、子どもたちを人間としての成長に導くべきはずの教師が、戦前・戦争中は、『人の子の師の名において』教え子を侵略戦争の戦場に送りだし、数多の子どもたちを殺してしまいました。私は、それをくり返してはいけないと考え、『教え子を戦場に送らない』という決意で、『日の丸』と『君が代』が卒業式に強制的にもちこまれることに反対を表明し、『君が代』と同時に、毎年、ささやかに静かに座ってきました。『教え子を戦場に送らない』という決意で、『君が代』で着席することは、教師としての『良心の自由』であり、『良心の義務』にもとづくものであります。この『良心の自由』を憲法第19条は保障しています。」
それに対し、人事委員会は最高裁判決をそのまま写して、「君が代」の起立斉唱は「慣例上の儀礼的所作」だから、「職務命令は思想・良心の自由を侵害しない」と「裁決」で書きました。あれだけ訴えた、教師としての『良心の自由』を足蹴りにした人事委員会の「裁決」に怒りを覚えます。
「教員37年『君が代』の50秒で決めないで」
上の見出しは、昨年、8月6日、人事委員会・第一回口頭審理を終えた翌日、朝日新聞に掲載された記事の見出しです。その記事の最後に、「口頭審理後、山田さんは『37年間子どもに向き合って仕事をしてきた。勤務実績が『君が代』に立つか座るかの1点で決まってしまうのは恐ろしい時代だ』と話した。」と記者が書いてくれています。
まさに、私が人事委員会の口頭審理や「最終書面」等で言いたかったことは、これです。私は、高槻市の小学校で37年間勤務しました。最後の南平台小学校では12年間、そのうち、7年間は希望の杜施設内学級で、『学校を作る』、これを目標にして教育活動を行ってきました。
『希望の杜』という施設・・・情緒障害児短期治療施設といって大阪府下に5ヶ所、全国に35施設あります・・・には、親に虐待されたり、ネグレクトにあったりした子どもたちが入所してきます。今までさまざまな境遇と環境のもとで、学ぶこと、まっすぐ成長していくことを疎外されてきた子どもたちが、学び成長する場として『学校』をつくろうと、他の教職員や施設の職員さんらと力を合わせて、自分で言うのはおこがましいですが「格闘」してきました。
この私の「勤務」についてはもちろん、「勤務実績」について、府教委は「不知」とし、『君が代』の50秒着席したことをもって、「適格性が欠如しており、勤務実績が良好でないと判断」したと、合格していた再任用を取り消しました。
「私の『適格性』と『勤務実績』はすべて、『君が代』の50秒で決めるということでしょうか?」と、人事委員会の口頭審理でも訴えました。そして、昨年9月26日の第2回口頭審理には、希望の杜施設内学級で『学校を作る』ことに一緒に「格闘」した元同僚のMさんに、私の「勤務実績」について証言もいただきました。
ところが、人事委員会は「裁決」に当たって、私の37年間、とりわけ、最後の7年間の希望の杜施設内学級での「勤務実績」については、一字一句もふれていません。人事委員会もまた、府教委と同じく「私の『適格性』と『勤務実績』は、すべて、『君が代』の50秒で決め」たということになります。
「再任用合格取消を棄却」に、大きな怒りを感じます。
人事委員会は、「戒告処分は取消」したものの、「再任用合格の取消しの撤回」は「棄却」しました。人事委員会は、「裁決書」で次のように書いています。
処分が吹っ飛んだことは、「(再任用)合格決定の取消し」に関しては考慮する必要がないが、「起立斉唱の職務命令に反したことについて」は、「(再任用)合格決定の取消し」に関して「斟酌」=判断材料にすると、書いています。
府教委の事情聴取に「自らの意思で拒否した」等の府教委側の主張を認め、また、『君が代』を立って歌えという職務命令違反や顛末書、府教委の事情聴取、研修、職務命令遵守意向確認書の未提出を「罪状」に上げ、府教委の言い分をそのまま認め、再任用合格取消しを「新たな採用としての裁量権が認められる」として、「再任用合格取消を棄却」しました。
しかしながら、これは絶対におかしな「裁決」です。府教委の論理からしてもおかしい。府教委は私の「勤務実績が良好」であったから、再任用合格通知を送ってきました。しかし、「君が代」で50秒座ったこと、それを戒告処分としたことによって、府教委は急転直下、「勤務実績が良好でない」として再任用合格を取り消しました。しかし、今、私の処分は取り消されました。
処分が取り消されたのだから、原状回復せよ!再任用取消を撤回せよ!
処分は跡形もなく消えました!だから、職務命令違反や職務命令遵守意向確認書の未提出等を府教委や人事委員会が、今も「罪状」にあげること自体間違っています。
私は、何ゆえ「戒告処分」を受けたのか?それは「君が代」不起立によってです。彼ら府教委が言う職務命令違反によってです!しかし、その処分は取り消されました!処分がなくなっても、処分された「理由」は生きている!人事委員会はその「理由」を判断材料にして再任用合格取消は当然と言う。
そして、職務命令遵守意向確認書の未提出等、いまだに、いくつも「罪状」を上げているが、そんなものは府教委が処分後に提出せよと言ったものです!今や、処分がなくなったのだから、そんなものは提出する必要もなかったし、研修にも行く必要がなかったということです!
処分という「結果」は取り消されたのに、その処分の「理由」はいつまでも残る!「罪状」は消えず、再任用合格取消は撤回しないと人事委員会は言った!理不尽そのもの!そんな不合理・不当なことを認めることはできません。府教委が処分を下した3月27日以前の原状、つまり再任用に合格していた時点にもどすのが当然ではないか!再任用合格取消は撤回されねばおかしいではないか!
私はこの理不尽を許せず、裁判に訴えました。再任用合格取消の撤回を求めて闘います。みなさん、ご支援をよろしくお願いいたします。