学労ネット

道徳教育の強化、道徳の教科化に反対する!

2014年3月26日掲載

~「心のノート」廃止、「私たちの道徳」新設~

 4月から文部科学省は「心のノート」は廃止し、新教材「私たちの道徳」を新設すると2月14日、15日の各新聞で報道されました。その内容を見ると、「偉人の物語」(読売)のオンパレードで、伝記や格言を集めたものだといいます。<低学年>二宮金次郎・日野原重明・ファーブル<中学年>澤穂希・リンカーン・葛飾北斎・石川啄木・小泉八雲<高学年>内村航平・吉田松陰・松下幸之助・マザー・テレサ・坂本龍馬<中学生>松井秀喜・曾野綾子・山中伸弥・孔子・嘉納治五郎等が出てきます。
 その学習項目(これは戦前の道徳教育の「徳目」!)を見ると、一方で一般受けする人物を配しながら、もう一方で「愛郷心」(石川啄木で「愛郷心」を教えるなんてなんという歪曲!当時、「時代閉塞の状況」を告発したのが啄木ではないでしょうか。)「日本の伝統と文化」「愛国心」を子どもたちに刷り込もうとする意図が明白です。「曾野綾子」は「誠実」という徳目になっていますが、これをどう教えろというのでしょうか!
 これらの教材の使用を教師に押しつける動き(使用状況に調査、点検等)が今後強まることが予想できます。先日の市教委指導課との交渉では、この「私たちの道徳」の使用強制に反対する要求を突きつけましたが、これまでの「心のノート」についての確認(「副読本ではなく、資料である。」)は「私たちの道徳」においても同様であるとの確認が取れました。
 そして、その後に控えるのが「道徳の教科化」です。現在、それは政府部内の有識者会議「道徳教育の充実に関する懇談会」で検討されています。私たちは「心のノート」は子どもたちの内面に愛国心、国家主義を注入するものとして、強く反対してきましたが、「私たちの道徳」についてもその使用強制に反対し、「道徳の教科化」には強く反対していきます。組合のホームページの名称は「心のノート ガラガラポン」(この命名は先年亡くなった家保達雄がしたものです。)ですが、春からは新しく「道徳教育」強制反対の旗幟を鮮明にしたタイトルとしなければならないでしょう。

 もう一方で進行する安倍政権の反動的教育改革にも警戒を強め、反対運動を強めていきたいと思います。そのひとつに文部科学省が強権的に変更し、告示した「教科書検定基準」です。文科省の告示内容は、検定基準に新たに(1)特定の事柄を強調しすぎない、(2)近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示されているとともに、児童生徒が誤解するおそれがある表現がないこと、(3)閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解や最高裁判所の判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていること、の3点を追加しました。「新」検定基準は、歴史を歪め、「近隣諸国条項」を有名無実化し、日本政府の見解を厳格に記述する教科書をめざすものです。文科省は、日本軍「慰安婦」問題や南京大虐殺犠牲者数の削除、自衛隊賛美と集団的自衛権の容認、領土問題での日本政府の見解、さらには原発推進と福島原発事故の過小評価などを教科書に書かせようとすることは明らかです。今後、今年度は小学校教科書採択、来年度は中学校教科書採択がありますが、教科書採択へのより広い運動を強めていかなければならないと思います。もうひとつ知事・市長等の首長の統制を強めようとする「教育員会制度の改悪」に反対していかなければならないことです。安倍首相は、施政方針演説で「責任の所在が曖昧な現行の教育委員会制度を抜本的に改革」「公共の精神や豊かな人間性を培うため、道徳を特別の教科」「教科書の改善に向けた取り組み」を表明し、通常国会前半の主要課題に「教育再生」を位置づけています。現在与党で議論されている教育委員会制度改革は、首長に教育行政の権限を与え、教科書採択を始め、教育行政全体が政治主導で進めようとしています。さらには議員立法で「教育再生推進法」の提出も目論んでいます。国会では、予算審議が終わる3月下旬から6月下旬の閉会までが、教科書と教育にとって重大な正念場を迎えることになります。今後急速にすすむであろうこれらの動きに対して警戒を強め取り組んでいかなければならないと思います。

(松岡)