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第16回口頭弁論報告と最終陳述

2007年9月9日掲載

 8月27日の第16回口頭弁論で、原告・被告双方とも最終準備書面を提出し、結審となりました。判決は来年1月9日(水)午後1時10分から大阪地裁809号法廷であります。ご予定いただけますようにお願いします。

 前回の尋問で、被告山口校長が「宅研という意味の研修・・それは、現在はやっていない。」と虚偽の陳述をしましたので、「民事訴訟法第209条の虚偽の陳述」(10万円以下の過料)に相当するとして、調書からの削除を求めました(準備書面11)。また、渾身の力をこめた最終準備書面12を提出しました。最後に原告末広が提訴時よりひどくなった現在の休憩時間取得実態を最終陳述しました。大変落ち着いた陳述で、現在の学校の状況を説得力をもって展開できたと思います。(原告末広の最終陳述書と原告末広が取材を受け2007年7月10日の朝日新聞に掲載された「教育改革 疲弊する現場置き去り」をPDFでご覧ください。
>>>PDFはこちらです。


 提訴から3年4ヶ月、休憩時間の未払労働賃金と損害賠償を要求し、被告大阪府・高槻市に迫ってきました。私たちはできるかぎりのことはやってきたと思っております。静かに判決を待ちたいと思います。これまでのご支援に深く感謝します。

(松岡)







2007年8月20日

陳  述  書

末広 淑子

 原告の末広です。2002年度、高槻市は大阪府下の他市に先がけて休憩時間の試行をスタートさせました。しかし、6年目となる今年度も試行のままです。6年間も試行のままであることは、労働基準法で保障された私たち労働者の権利が守られていないことになります。休憩時間があたりまえに取れ、健康で働き続けられる職場になることを願って最後の陳述をします。

 私は高槻市立竹の内小学校で、2002年度は3年生、2003年度は5年生の担任でした。私たち教員の仕事というのは授業に関するもの(教材研究、教材の準備、ノートやプリントの点検など)だけでなく、子どもたちの生活に関するもの(家庭や学校でのトラブル解決の話し合い、給食指導、生活指導など)、校務に関するもの(人権、教科、安全、児童会など)など多岐にわたっています。また、子どもや保護者への対応はどんな時間にも入る可能性がありますし、行事があれば仕事量はさらに増えていきます。これらの校務としてやらなければいけない膨大な仕事は、休憩時間にもやらざるを得ませんでしたし、それでも追いつかず、残業や持ち帰り仕事になったというのが2年間の実態でした。これは今までに陳述した通りです。同僚の中畑勉さんの陳述でも休憩時間取得がいかに難しいことかが述べられていました。そして、この実態は二人の被告校長の陳述からも明らかになっています。2002年度、被告佐竹校長は「電話、来客対応、教材研究等のため、取りにくかった」と市教委に挙げています。この年は試行初年度で、校長としては意識的に観察しておられた結果と思います。また、2003年度、被告大西校長は本人尋問の中で「休憩時間になにも入らないという事態は学校ではちょっと想定しにくい」「休憩時間に勤務をしている教育の実態があることを認識している」と答えています。被告同校長は学校の実態を正直に述べておられると思います。この2年間、休憩時間が「手待時間」を含む勤務時間になっていたことがわかります。そして、二人の被告校長からは「私が休憩時間を取れていた」と断言できる証言はなく、「振替の申し出がなかったから取れていたのだろう」という主張は全くの憶測にすぎません。先に述べた膨大な仕事量からいって、その日の内に休憩時間の振替をする時間などまったくないのです。また被告大西校長は、休憩時間に職員が「何をしているのか、のぞくようなことはしていない」「それを調べるようなことはしていないので、分からない」と言われていますので、「私が休憩時間を取れていたと思う」という陳述も根拠のないものなのです。

 さて今年(2007年度)は、試行から6年目となりました。ふつうはこれだけ試行を重ねたのですから、休憩時間取得率は上がっているはずだと考えられるでしょう。実際はどんな状況なのか、今年度の労働実態を述べさせてもらいたいと思います。私は現在、高槻市立寿栄小学校に勤務しており、養護学級の担任をしています。クラス(養護学級)には何らかの配慮が必要とされる子どもたちが10名在籍しており、担任は3名です。朝8時20分前後にほとんどの子どもたちが保護者と一緒に登校してきます。私たち担任は校舎の入り口で、保護者と簡単な情報交換をして、子どもたちを受け取ります。その時点から、私たちはマンツーマンでの関わりのいる子どもたちに1日中張り付きます。児童の休憩時間をはじめ、トイレ、給食、体育等の着替え、掃除、朝と帰りの準備、教室移動などすべてです。その間、職員の打ち合わせや研究授業の参観、担当のクラブや委員会の仕事、緊急集合などがあっても、担任は一切参加できません。もちろん児童の20分休みにほっと一息つくなんて事もできません。トイレに行くのもだれかに子どもを頼んで、大急ぎで用を足します。頼む人がいない時は、子どもが下校するまでトイレに1回も行けない日もあります。プールに入った後も子どもの着替えを手伝ってもらう人がいない時は、ぼとぼとに濡れた水着のままで、まず子どもの着替えをし、それから自分が着替えるのです。着替えたと思えば、お茶の一杯も飲まずにもう次の授業です。下校時間になり子どもたちを保護者に手渡したあとは、ほんとうに疲れて床にへたりこんでしまいます。そして、それぞれの子どもが使ったおもちゃや教材等を片付けながら、その日にあったことを養護学級担任で報告し合います。時間があれば続けて教材の準備や行事の打ち合わせなどをしますが、だいたいは時間切れで全体の会議の時間になってしまいます。その会議は勤務時間いっぱいあります。
 これが2007年度の私の労働実態です。子どもがいる間は、仕事の切れ間というものがありません。下校した後も片づけや教材準備等の仕事に、会議です。だれかが倒れはしないかとお互いに気づかいながらの毎日です。でも実際には養護学級担任3人がこれだけやっても、子どもたちに対する保障時間は足りていません。若特の先生や管理職、担任外の先生から時間を融通してもらってやっとまわっている状態なのです。後期(10月)からは養護学級担任の授業時数を1時間ずつ増やすことも考えています。どこに休憩時間を取る隙間があるのでしょうか。休憩時間どころか、トイレやお茶を飲む隙間さえほとんどありません。時間数を増やすことになれば、さらに過重労働が助長されていくのです。

 残念なことに、休憩時間の試行から6年たった今も、学校の実態は変わっていません。いや、さらに忙しくなっています。矢継ぎ早の教育改革で、現場はその対応に時間を取られています。教員の絶対数が足りないために過重労働があたりまえになっています。また、大阪府は『評価・育成システム』という名の勤務評定で賃金に差をつけ、教員同士を競わせる制度をスタートさせました。原告3名の学校でも「若い教員を中心に、勤務時間の1時間前出勤、退勤は午後8、9時という働き方をしている」と当該の校長が認めています。競争に勝つために過重な労働を強いられるという実態がこれからさらに増えてくると予測されます。休憩時間が取れないのは、私たち教員の「意識」の問題などではなく、学校あるいは教育の構造的な問題が大きく関わっているのです。被告校長たちは「休憩時間の明示をし、振替制度があることを知らせた。会議を入れないようにしている」と主張していますが、それだけで休憩時間の取得ができるはずはありません。また、高槻市教委は2002年度に休憩時間取得実態調査をしたものの、次年度からの取得に向けての方策を全く講じてきませんでした。その結果の一例が、今年度の私の労働実態です。勤務時間内の労働実態を把握せず、休憩時間を与える責任を放棄し続けている被告高槻市、被告各校長の責任は重いのではないでしょうか。

 私たち原告は、ほぼ定年まで数年という年代になっていますが、この間、2名の原告が長期の休職を取るという厳しい状況がありました。他の者も病院に通いながら、毎日ギリギリの体調で働いているのが現実です。貴裁判所に対しては、休憩時間が取れないという違法状態が早く解決され、私たち原告も、今どんどん増えている若い教員も含めて定年まで働き続けられる勤務条件が保障されるような判断をお願いして、最後の陳述を終わります。

以上