学労ネット

休憩時間訴訟と職場闘争の結合

2007年8月22日掲載

休憩時間訴訟はいよいよ結審

 2004年4月21日に提訴した私たちの休憩時間訴訟は4年目に入りました。大阪府に未払賃金の請求、高槻市と当該校長7名には国家賠償請求という3者を被告にした全国初の教員よる休憩時間訴訟であり、また、弁護士なしの5名の原告による本人訴訟というめずらしい裁判を続けてきました。

 訴訟をはじめた時点は素人ばかりの原告集団でしたが、すでにさまざまな訴訟を経験されていた独立組合(全国学校労働者組合連絡会)の仲間の協力や大阪(枚方)で行政訴訟を進められてきた先人とも知り合い、その応援を得て、準備書面の作成・弁論戦術の組み立て等を積み重ねてきました。原告側が出した準備書面もすでに10通にもなりました。

 昨年4月よりは立証段階に入り、原告側の陳述書を提出し、原告側から証人尋問が開始されました。書面審理の段階とちがい、被告側弁護人の重箱の隅をつつくような質問や一問一答形式により返答に窮するところへ追い込む弁論戦術、その他卑劣な挑発に苦しめられながらも原告5名のチームワークと傍聴席からの応援を得て、困難な課題をクリアーしてきました。そのなかでいかに裁判官が学校現場の実態を知らないか、また、その裁判官を説得できるような休憩時間の勤務実態の立証の難しさを痛感してきました。

 次の段階の証人尋問は、被告側が証人申請した大阪府教育委員会教職員企画課課長補佐、高槻市の申請した被告校長5名への反対尋問でした。ここからは攻守攻防が変わり、私たちは被告校長、高槻市教委、大阪府教委がいかに休憩時間の保障や勤務時間管理をなしてこず、労働基準法違反をしてきたかを論証し、追及することができました。そうして、証人尋問も最終段階に入り、先の5月16日の弁論は、原告の病気により延期された被告山口元大冠小学校長への反対尋問になり、今まで以上の詳細な尋問事項案を作り、反対尋問に臨みました。原告側としては、まだ採用されていない被告高槻市教委元教職員課長の証人採用を要求しましたが、残念ながら採用されませんでした。次回の弁論は、8月27日(月)午後1時15分より行われ(いつもの大阪地裁809号法廷)、原告・被告双方とも最終準備書面提出を提出し、結審となります。判決は秋頃になると思われます。

 3年余りの裁判で一番よかったことは、毎回の弁論では全学労組の仲間と近隣の協力者とのメールや原告会議での討論・弁論戦術の練り上げ等を続けてきたことの成果があり、原告5人の力がついてきたことです。訴訟の開始時点と較べれば格段の進歩があったと思います。現在は最終準備書面の作成に力を注いでいます。

改正労働安全衛生法の実施を求めて

 もうひとつ心がけてきたことは裁判と職場闘争との結合です。訴訟を準備していた2003年度より、交渉拒否という市教委・校長側の策謀を打ち砕き、組合役員による校長交渉を実現しました。そこでは、休憩時間が取れなかった際の翌日以降への振り替え、宿泊行事等の振り替えを実態に即して+αさせることなど、超過勤務問題の要求を突きつけ、いくつかの成果がありました。また、高槻市教委に対しては2002年度に1度実施したままその後実施していない休憩時間取得実態調査の実施をねばり強く要求し続けてきました。さらに勤務時間管理を求めた2001年厚生労働省通知を管理職に下ろすことを要求し、やっと校長まで下ろさせました。現在は、2001年厚生労働省通知を校長から職員に周知させ、高槻市教委に出退勤調査を実施させることを目標にして組合交渉を進めています。

 2002年以降の上からの「教育改革」の影響で、慢性的な超過勤務や(裁判をして問題提起したにもかかわらず)休憩・休息時間がまったく取れない状態が続いています。そのため、組合員のなかでも、ここ2年ほどの間に2名の病気休職者が出る事態になっており、私たちは危機感をつのらせています。そこで、今年は昨年改正された労働安全衛生法を学校現場にも適用させることを新たな課題として設定し、4月の組合大会では、春日井学校労働者組合の井上満さんを講師にお呼びし、「改正労働安全衛生法の意義と職場闘争」という演題で講演いただき、労働条件改善に関する要求書のなかに改正労働安全衛生法の完全実施を位置づけました。

 5月22日に行った市教委交渉では、市教委は50名以下の学校に「衛生推進委員」(これを教頭にあてる)を設置する程度しか考えていないことが分かりました。これからの課題としては、高槻市の労働安全委員会組織のなかに学校職場を「職場安全衛生委員会」としてきっちりと位置づけさせ、メンタル・ヘルスのための「産業医」の位置づけを学校職員にも及ぼさせること(または、医師会に置かれている、50名以下の職場対象の「地域安全保険センター」の活用)などが必要と考えています。これには予算措置が伴いますので、今年度は従来より早く定期交渉の「要求書」を作成し、交渉を設定する必要があります。また、市教委は今年10月頃に労働安全衛生法実施に関する方針を出すと言っていますから、こちらもこれに絞った要求書を再度提出して、別途交渉を設定する必要があると考えています。

 私たちは以上のように「裁判闘争と職場闘争と結合」を課題とし、休憩時間裁判を改正労働安全衛生法の完全実施と結びつけて闘っていきたいと考えます。
(松岡)