2006年4月15日掲載
平成16年(行ウ)第50号 賃金等請求事件
原 告 松 岡 勲 外4名
被 告 大 阪 府 外8名
準備書面(10)
2006年4月10日
大阪地方裁判所 第5民事部合議1係御中
原告 松 岡 勲
原告 家 保 達 雄
原告 志 摩 覚
原告 末 広 淑 子
原告 長谷川 洋 子
<休養室の設置義務と被告高槻市の責任について>
2005年11月10日付原告準備書面(9)の「二、休憩室の設置義務と高槻市の責任について」において、「労働安全衛生法(昭和47年法律第57条)」や「事務所衛生基準規則」に基づき、有効に利用できる休憩室を設置していない高槻市の責任について述べたが、本書面では、原告志摩覚の職場の休養室を例にとり、具体的に休養室の非有効性を述べ、被告高槻市が休憩時間を教職員にとらせる環境作りを放擲している事実を主張したい。
1,原告志摩の職場の休養室
原告志摩の職場(高槻市立土室小学校 高槻市上土室6-10-1)の休養室は、管理棟1階にある。もともと1つの教室の中に更衣室と休養室を設け、ロッカーで仕切って男子更衣室と女子更衣室に分けている。ロッカーと間仕切りのみの一人用シャワー室、一人用の小さな手洗い場、ロッカーのみである。(甲73号証「高槻市立土室小学校休養室見取り図」参照)
休養室は各々更衣室の奥にある。男子・女子両方とも、巾2.9m×長さ3.38m=9.802・の畳敷きと、窓に接した巾0.3m×長さ3.3m=0.99・(女子更衣室)、巾0.3m×長さ3.1m=0.93・(男子更衣室)の板敷きに分かれている。しかし女子教職員数が多いため、休養室の中まで更衣用ロッカーを設置しているため、女子の休養室を更に手狭なものにしている。(以下、甲74号証「高槻市立土室小学校の休養室」の写真参照)
女子休養室には、扇風機2台、ベッドサイドテーブル1台、掃除機1台、ごみ箱1つ、こたつ用テーブル、物干し竿1本が置かれている。物干し竿は、特に夏季、水泳指導の後教員の水着やそれに付随するものを乾かすためである。市内のどの学校も女子休養室は、水着その他の乾燥室となっているといって過言ではない。
なぜなら、第一に、教員の帰宅時間は常時遅く、帰宅すれば家族の食事作りなど家事に追われる。水泳指導が連日してある場合など、家で洗濯して乾かし、次の日に学校へ持っていくのは不可能である。
第二に、そのような背景を抱えているにもかかわらず乾燥室を高槻市から与えられていない。教員は、水着などを休養室に干さざるをえないので、休養室は休養できる環境ではなくなってしまう。畳は洗濯物のせいで2年前に畳替えしたにもかかわらず、既に赤茶けている。
男子休養室には、冷蔵庫、カーペット、小型テレビ、テレビ台、小型電気ストーブ、こたつテーブル、が置かれている。
それぞれの休養室の押入には、ふとんが1組ずつしまわれている。
2,同休養室の問題点
・ 原告志摩の職場、高槻市立土室小学校の教職員人数構成は次の通りである。
女 性
男 性
教諭、講師、校務員、主事、養護教諭、栄養士
28
7
嘱託講師
5
2
合 計
33
9
(2005年度)
(管理職、調理員をのぞく)
女子休養室を使用するべき女性教職員は33名である。
事務所衛生基準規則21条(休養室等)では、
事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者が床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用と区別して設けなければならない。
とある。女性33人は、上記21条の対象となる。
また、事務所衛生基準規則19条(休憩の設備)では、
事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるよう努めなければならない。
とある。事務所衛生基準規則に則る休養室は、有効に利用できるよう事業者は努めなければならないのだ。
然るに、土室小学校の女子教職員一人あたりの利用面積は、
9.802・÷33名≒0.297・/名(小数第4位切り捨て。以下同じ)となり、さらにロッカーで隠された面積(1.80m×0.56m=1.008・)を引くと、8.794・÷33名≒0.266・/名となる。
0.266・で成人女性が床して、有効に休憩時間を過ごすことは不可能である。
同校では、担任と栄養士、担任外教員と事務職と嘱託教員と養護教諭で、休憩時間が分割付与されている。
女性の場合、
担任(17名)+栄養士(1名)=18名
担任外教員(8名)+事務主事(1名)+嘱託(5名)+養護教諭(1名)=15名である。たとえ分割付与された人数で一人あたりの休養可能な面積を求めても
8.794・÷18名≒0.488・/人
8.794・÷15名≒0.586・/人
となり、同じく成人女性が集って休んだり、横になることが不可能な単位面積である。
高槻市は、事務所衛生基準規則第19条、21条に則り、女子教職員が有効に休憩時間を過ごせるよう努めていない事が明確であり違法である。
・両休養室に置かれているものを再度あげる。
女子休養室・・扇風機2台、ベッドサイドテーブル1台、掃除機1台、ごみ箱1つ、こたつ用テーブル1つ、物干し竿1本、ふとん1組
男子休養室・・冷蔵庫、カーペット1まい、小型テレビ1つ、テレビ台1つ、小型電気ストーブ1つ、こたつ用テーブル1つ、ふとん1組
以上のものの中で、学校の備品は、ホームこたつ2,掃除機1、寝具(ふとん)2組、扇風機2,冷蔵庫1である。
その他のベッドサイドテーブル、ごみ箱、物干し竿、カーペット、小型テレビ、テレビ台、小型電気ストーブは、同校に勤務する者が、それぞれが所有するものを善意で持ち寄ったものであり、 事業者が、休憩を有効に利用することができるように配備したものではない。ここにおいても、事業者は、事務所衛生基準規則19条の「有効に利用することができる休憩の設備を設ける」義務を放擲しているに等しく、違法である。
(以上の法令関係は、甲75号証、財団法人労務行政研究所編「平成16年度版・労働安全衛生関係法令集」参照)
3,以上のように、形だけは男女に分かれて更衣室、休養室が設備されているが、内実は、有効に過ごすための備品も備えず、事務所衛生基準規則の規定を満たしている人数の職場でさえ、有効に過ごすことのできない手狭な休養室を、事業者は長年放擲してきた。
さらに、校長が「休憩時間に外出して休憩してもらって結構です。」等の発言をした学校は、市内どこにもないし、休憩時間に外出し休養している教職員は皆無なのである。
然らば、教職員はどこで休憩時間をとることができるのか。職員室や各教室は、子どもや保護者が出入りしたり、頻繁に電話もかかってくる。対応せざるをえないのだ。
休憩時間に休憩をとる場所が学校内に存在せず、学校外に出ることも仕事に忙殺されできない。すなわち休憩時間は明示された事実があるのみで、実際に事業者が雇用者に休憩時間を施行させた事実は皆無である。
以 上