2005年8月17日掲載
平成16年(行ウ)第50号 賃金等請求事件
原 告 松 岡 勲 外4名
被 告 大 阪 府 外8名
準備書面(7)
2005年8月1日
大阪地方裁判所 第5民事部合議1係御中
原告 松 岡 勲
原告 家 保 達 雄
原告 志 摩 覚
原告 末 広 淑 子
原告 長谷川 洋 子
<目 次>
・被告大阪府への反論/労基法と給特法の整合的な解釈
・被告高槻市外への反論及び求釈明
《被告大阪府への反論/労基法と給特法の整合的な解釈》
原告らは、いままでに提出した準備書面において、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)について、断片的に述べてきた。以下、それらを整理しつつ、本件における給特法理解を労基法と整合的に解釈し、主張する。
1.給特法の趣旨は「時間外勤務手当の支給を排除することにより、時間外勤務をさせないこと」にある。
① 給特法は、第3条2項において「時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しない」とし、「文部省訓令第28号」第3条には、「勤務時間に関する基本的態度」として、「原則として時間外勤務は命じないものとする」と規定している。
② また、同時に、労働者の生存権を保護する最低基準を定めた労基法第37条(割増賃金)の適用を、除外している。この適用除外については、中央労働審議会は、労基法を給特法によって、「安易に適用が除外されるようなことは、適正ではない」(原告準備書面3の10頁)という「建議」をした。しかし、あえて適用を排除したのであるから、原則的に、割増賃金の対象となる「時間外勤務」の存在はないということにならなければならない。
③ 原則をはずれて、教育職員に時間外勤務をさせる場合も、厳しく制限され、上記文部省訓令においても、「緊急かつやむを得ない場合」であり、かつ限定された四項目であることが定められている。
④ 一般労働者であれば、労基法第36条1項(時間外及び休日の労働の労使協定)によって、時間外勤務の可否は、使用者との協議・協定によって決定されるが、原告ら教育職員については適用除外になっているため、この面からも、教育職員の時間外勤務は校長らによって厳しく制限され限定されなければならない。
2.教職調整額は給特法第四条で、時間外勤務手当でなく、給与とみなされており、教育職員の職務と勤務の特殊性に対して支払われている。
① 限定四項目以外の時間外勤務は、本来存在しないのであるが、事実として、いままで縷々、訴状、原告側の準備書面2及び4で述べた原告らの休憩時間の勤務実態、また、いくつかの超勤調査(甲35、36、37号証)によれば、非常に多くの時間外勤務が常態化している。これらの、あってはならない時間外勤務は、結果的に原告らに長時間労働を強いていることにも注目すべきであり、このことにより教員の過労死が起こっている(甲32号証)。あらたに地公災基金京都支部長(宇治市立西小倉小学校)事件大阪高裁判決(甲66号)をあげる。
② しかるに、被告らは「勤務の特殊性」による「自主的自発的になした時間外勤務」と名古屋地裁判決(乙8号証)を引用し、教職調整額は「これらの時間外勤務を包括的に評価し」、支給されていると述べる。しかし、「包括的に評価」するという解釈は、労務提供義務の範囲を限定する労働時間とは直接的に関係はない。「自主的」であれ「自発的」であれ、教育活動における「勤務の特殊性」が、「長時間労働」「時間外労働」を原告らにさせる、あるいは校長がそれを黙認してよい理由や根拠になってはならない。
③ すなわち、「勤務の特殊性」がいかなるものであろうとも、それによって、手当を支払わなくてもよい時間外労働や、未払い賃金の労働を、原告らにさせてよいはずがない。給特法は「自発的なら何時間労働してもかまわない」ということを許可した法律でなく、時間外労働を禁止する趣旨の法律である。
④ もし、このことが看過されるなら、「自発的」の名の下に、給特法はいくらでも時間外労働を無手当・無賃でさせることのできる法律となる。
3.包括的職務命令と給特法における無定量無制限労働の禁止
① 被告は名古屋地裁判決(乙8号証)を引用し、「当該時間外勤務の内容、実態及び当該時間外勤務がなされるに至った経緯等に照らして、それが当該教員の自由意思を強く拘束する状況下でなされ、かかる時間外勤務の実情を放置することが給特条例7条の前記立法趣旨にもとるものと認められる場合は、黙示の時間外勤務命令が発せられていたものとして違法となるが、そうでない場合は、当該時間外勤務は当該教員の自発的、自主的な職務の遂行として違法にならないものと解するのが相当である」と述べる。
② しかし、原告らの学校のみならず、通常の学校における教育活動は、そもそも年度当初の担当学年、担当教科などが職員会で校長によって明示され、決定したとき、教育活動が職務として包括的に命じられていると認識すべきである。
③ つまり、「三年二組の担任」を命じられれば、そのあと、「三年生の算数の練習プリントを作りなさい」「三年生の給食の指導をしなさい」「通知票をつくりなさい」などと校長からそのつど命じられるわけではない。つまり、学校現場では、こうした包括的な職務命令がほとんどであり、教員を信頼した「黙示の命令」しかないと言ってよい。原告らは、労働契約や就労規則で、細かく職務内容が決められているわけではない。
④ したがって、原告らの労働時間は、これら包括的な職務命令によって、校長の「指揮監督権下」にあり、校長(使用者)の指導助言等があきらかにある時間と言える。また、言うまでもないが、校長はその職務として、「校務をつかさどり、所属職員を監督する」(学校教育法第28条)のであり、校長がまったく関与しないような教育活動はあり得ないし、計画され得ない。
⑤ 「自発的・自主的・創造的」と被告は時間外勤務について評価するが、原告らにとっては、時間外であろうとなかろうと、その職務内容の質に差はない。つまり、包括的にうけた職務命令により、「教育活動」の範囲の内で、常に「自発的・自主的・創意工夫」を心がけ、正規の勤務時間内、時間外・休憩時間に原告らは職務に専念してきたのである。
4.勤務時間の適正な把握が不可欠な給特法
① 被告らは、まず、現場の教員の勤務実態を把握してから、はじめて、時間外勤務の量と、内容を論ずるべきである。給特法成立時の調査が、教育調整額4%の根拠となっているのは原告側準備書面3(11頁)でも述べた。それから34年経過したいま、そのような勤務実態調査を一度も実施していない。
② この34年の間に、一学級あたりの児童生徒の定数も減少して、教職員の配置配分も変化した。しかし、ここ数年、少人数指導、総合的な学習等々、正規教員の減少、開かれた学校経営による新しい教育活動等の「教育改革」、児童生徒の問題行動の増加により、教育活動も準備に時間がかかるなど、多忙化し、教員の意識も変容している。これに関連して、国立教育政策研究所総括研究官菊池栄治論文(甲67号証)をあげる。
③ また、学校五日制にもかかわらず、学校六日制のときに比べ、教員の事務処理時間は相対的に増加した。全体に、日本の学校教育における教員の職務内容は大きく変化している。
④ こうした教員の勤務実態の変化にもかかわらず、被告らは、厚生労働省2001年の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」通達に対して、実質的には、なにも策を講じていないという事実を指摘しておきたい。
⑤ 休憩時間が適正に利用されているかを、把握することも使用者である校長の義務であり、それが本件の争点でもある。
5.確保されない休憩時間
① 原告らは休憩時間に職務として教育活動をしており、休憩時間ではなく完全な職務あるいは手待時間になっている。したがって、現在の休憩時間は「正規の労働時間」と考えるべきである。
② 正規の勤務時間内の休憩時間に行っている職務は、教育活動あるいはそれに直結する内容である。教員である原告らは、子どもたちが学校にいる以上、非常に強く自由意思を拘束されている。それは、教育活動の対象が子どもだからである。何よりも、子どもへの教育活動・生活指導、それらに付随する業務に拘束されているのが教員の職務の特殊性である。
③ そもそも、子どもたちが周囲にいる、そのような時間に、休憩を設定し、それが自由に利用できると考えることに無理があり、間違っている。
④ 以上のことから、校長は自らが発した包括的な職務命令が、正規の勤務時間内にまっとうできるように所属職員を指導・監督する責任と義務がある。さらに、本件の争点である、休憩時間に業務をさせないように教育諸条件を整備する重大な責任を負うものである。
⑤ 休憩時間が適切に利用されているかは、労基法第34条による、労働時間の途中、一斉付与、自由利用、の三点がまっとうされていなければならない。蓄積された疲労を回復させ、勤務能率の増進と災害防止を図る目的のための休憩時間なのだから、十分な空間と時間が確保されてなくてはならない。「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(厚生労働省告示104号、甲68号証「快適職場づくり How to」14~15頁)にもあるような、「労働者の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備」としての休憩室が不可欠であるが、原告らの職場には十分なものはない。
⑥ 十分な休憩時間の確保を怠った被告らは、休憩時間の意義、つまり「蓄積された疲労を回復させ、勤務能率の増進と災害防止を図る」ことを無視しており、その責任は大きい。
6.休憩時間に勤務した未払い賃金の請求
① 一日の労働時間が決められているにもかかわらず、休憩時間に労働を提供しているのであるから、当然のことに労基法上は第37条の割増賃金が支払われるべきである。しかるに、割増賃金を支払わないとするのなら、それは労基法の第1条2項「最低条件」にもとる事態となる。
② だが、給特法下において、第37条は適用除外されている。これは、給特法により、時間外勤務を排除したからである。「時間外勤務手当・休日勤務手当は支給しない」というのは、その意味であった。ところが、実際に限定された内容以外に時間外勤務があるならば、労基法の最低条件以下になってしまい、違法となる。
③ また、時間外勤務手当が、給特法上、また労基法第37条適用除外で支払えないとしても、休憩時間に労働した分の未払い賃金は、当然支払われるべきである。ただ働きは絶対にないのであり、休憩時間に「職務の特殊性」に名を借りて強制的に労働をさせてはならない。これは、憲法27条2項(勤労条件の基準)、労基法第5条(強制労働の禁止)、第24条(賃金の支払い)、第34条(休憩時間)に違背する。
2005年8月17日掲載
準備書面(7)
《被告高槻市外への反論及び求釈明》
被告高槻市外は準備書面(5)4頁の末尾において、「原告らの主張は(中略)いずれも、稀有な実態を殊更に強調して、一般化するものであって、明示又は黙示の命令によるものであると何ら合理的又は具体的な根拠となり得ない失当である」と主張する。
しかし、本準備書面の被告大阪府への反論で述べたように包括的職務命令及びその下での黙示の命令によって、休憩時間も勤務または手待時間となっているのが原告らの職場の具体的実態である。これを「稀有な実態」と到底言うことはできない。
原告らの「休憩時間」は、通常の労働(作業)現場となんら変わらない、職員室・教室等におり、そこで為す業務・授業準備や児童生徒への指導は、その性質上、内容的には一律なものでないにもかかわらず、恒常的連続的にあり、その間も校長の黙示命令の意思を当然受けている。したがって、非常に労働密度の濃い手待時間である。「休憩時間」であろうと、児童生徒への可及的速やかな対処が学校運営には必要なのである。被告らが、子どもにむかって「休憩中だから先生は君たちの指導はしないよ」とか、職員室内で「電話がなってもとらないよ」等々の態度が取り得ると考えるとしたら、あまりに常識がなさすぎる。
休憩時間は、原則「一斉に職員が労働現場を離れても了解されうる時間」である。しかし、現実に原告らの職場でそのような休憩時間は、皆無である。被告らは、休憩時間付与義務の不完全履行の事実があり、その責任は免れない。
また、原告らは休憩時間に労働を為したのであり、その対価相当の賃金は受領する権利があり、さらに被告高槻市及び原告らの服務監督者である被告校長らは国家賠償請求を受ける責にある。
以下、原告らは被告高槻市外準備書面(5)の被告校長らの主張に順次反論する。
<原告松岡の反論>
被告高槻市外準備書面(5)において、被告竹下は「原告松岡が被告竹下と昼休みの会議に同席したことがあるとの主張及び被告竹下が休憩時間に会議が実際に入っているかどうかの確認行為をしていないとの主張はいずれも否認」とするが、この昼休みにあった会議(2003年度)は「教育改革検討委員会」であり、校長・教頭ともに同席する会議であった。また、日常的に昼休みに会議が入っていることを否認することはその確認行為をしていない証拠である。
また、被告は「現実の学校運営が職員の休憩時間に各種会議等を入れることによって成り立っていること」、「被告竹下に労基法違反が認められること」、「休憩時間の振替えが実務上不可能であること」、「生徒全員が在校している休憩時間は勤務時間そのものであること」、「黙示の命令」下の勤務、「手待時間」は労働時間等の原告の主張については争うとするが、これは本準備書面の被告高槻市への反論の冒頭で述べたようにそのまま返すことができる。とくに原告の中で生徒の昼休み(昼食時間)が職員の休憩時間であるのは柳川中学校のみであり、この時間帯では休憩時間は全く取れない。従って被告竹下は「労基法違反」を犯している。この後に被告竹下が主張する、原告松岡の主張を「抽象的」「一方的」との批判は当たらない。これほど「具体的」なことはない。
さらに被告が「因みに、被告竹下は、教職員の休憩時間の取得について十分配慮することはもちろんのこと、その勤務状況の確認も十分に行っており」と主張するが、被告竹下は休憩時間取得の具体的な配慮を何も為していない。それは2002年度柳川中学校休憩時間取得実態調査結果から明確に言える。また、厚生労働省2001年の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」通達を職員に説明しておらず、また職員の出退勤時間の把握はできていない。
【求釈明】
1)「その勤務状況の確認も十分に行っている」と言うならば2002年及び2003年度の「柳川中学校職員の出退勤記録」を提出されたい。 これまでの求釈明に答えていないことに関わって、
2)高槻市外準備書面(1)(2頁23行目)の「原告松岡以外の教員は、これらの事務を勤務時間内に休憩時間を使わないで処理している」に対して、原告準備書面(2)及び(4)で求釈明をしたが、被告の答えがない。再度釈明を求める。
3)高槻市外準備書面(3)(2頁12行目)で「上記情緒情緒障害がある生徒への対応は、養護教諭や心の相談員が専ら行っていた」とあるが、その論拠を答えられたいと準備書面(4)で求釈明をしたが、答えがないので、再度釈明を求める。
<原告家保の反論>
被告(高槻市外)の主張は、原告(家保)の準備書面(2)及び(4)による被告への反論に応えることなく、従前の主張を繰り返しているとしか思えない。
原告準備書面(2)では、2002年度の勤務状況と2003年度の勤務状況について、明確に年度を分けて述べているにも関わらず、被告高槻市外準備書面(3)で「不知ないし争う」とされた部分は、<「T・T(チームティーチング)授業」の実施、定例会議や臨時会議への出席等の校務分掌事務に加え、日常的に児童や保護者と対応するために費やした時間、5・6年の「T・T(チームティーチング)授業」の実施の準備・点検に費やした時間及び理科実験の準備・後片付けのために費やした時間>について述べており、2年度にわたる記述となっている。
被告高槻市外準備書面(5)2頁6~8行目の「原告家保は、校務分掌事務の実施、児童等への対応、朝学習用のプリントの点検等及び理科実験の準備等をおこなうためには休憩時間を利用せざるを得なかったことを主張する」の中の「校務分掌事務の実施、児童等への対応」は、原告準備書面(2)の6頁6行目より7頁20行目、さらに原告準備書面(4)の21頁3行目の②で、2度にわたり反論している部分であり、2002年度(原告の1年担任時)にかかわる事例である。また、「朝学習用プリントの点検等及び理科実験の準備等をおこなうためには休憩時間を利用せざるを得なかった」は2003年度にかかわる事例であり、被告高槻市外準備書面(3)で認められているように、校務分掌上39の「部・委員会」のうち15に所属し、全部で25ある各代表(長)のうち11に位置づけられていた年度である。
原告準備書面(4)では、再度、年度別に4点にわたり具体的に詳述した。にも関わらず、被告高槻市外準備書面(5)で「抽象的な主張の域を出ない」と断じられていることは納得がいかない。なお、「朝学習用プリントの点検等及び理科実験の準備等の各作業に要する時間が相当であるか」について疑義があると言うならば、実際に自ら確かめていただきたい。
そもそも「休憩時間」は「自由に利用でき」「一斉に利用でき」「労働の途中に与える」(3原則)とされている。しかしながら現場では、原告の2002年度から2003年度の状況をかえりみると、「自由利用」が不可能な「手待時間」として機能していたと言わざるを得ない。つまり「休憩時間」は、教育現場において「絵に描いた餅」であり、労基法にも抵触する。「自由利用」が保障されず、必要不可欠な職務が混在し、児童・生徒や保護者との対応を余儀なくされる「休憩時間」とは何なのか。教育現場をつぶさに調査し、実態を認識していただきたい。
【求釈明】
原告備書面(2)及び(4)で被告高槻市外準備書面(1)の「誇張以外の何物でもない」との主張に対して<釈明>を求めているにも関わらず、いまだ<釈明>がなされていないので、再度<求釈明>をする。
<原告志摩の反論>
職員会議について
被告高浜は高槻市外準備書面(5)にて、「職員会議の日時の設定は、学年代表の教職員や各部代表の教職員で構成される『推進会議』を踏まえたものであり、職員会議が休憩時間にかかって行われる場合についても同様」と述べているが、これには明らかに誤りがある。これは『推進会議』の構成員には『管理職』が含まれ、被告も出席していた事実を隠蔽するための記述である。
また、「職員会議が休憩時間にかかって開催される事は稀有な場合である」とも述べているが、これも虚偽である。本訴訟対象の2002年度、2003年度職員会議は、定例の水曜日なら休憩時間終了25分前の3時前後から、木・金曜日なら休憩時間終了25分前の3時50分前後から開始されたことが度々あり、「職員会議が休憩時間にかかって開催される事は稀有な場合である」との記述は嘘である。
校長自身が出席して主催する会議が勤務時間外に開催されまたは勤務時間内から勤務時間外にわたって続行され、その会議終了後までの時間外の勤務については、いずれも校長の黙示の超勤命令がなされたものと解する松江地裁判決(甲31号証)の典型的事例である。
被告は「休憩時間は働かせてはならない時間」との管理職として認識を欠いており、教職員の自発的勤務の遂行であっても適切な対処を怠ったので、黙示の時間外勤務命令となる。労働者が適法な労働をするよう監督するのが校長の職務なので、この場合職務怠慢にあたり刑事罰もあり得る。
なお且つ、限定4項目については「臨時又は緊急にやむを得ない必要があるときに限る」と制約を加えている。勤務時間が終了しても臨時又は緊急にやむを得ないので職員会議を延長する必要があるときのみの限定4項目である。以上、事実を隠蔽するための記述と虚偽の記述について釈明を求める。
また、他の被告校長らが為した「職員会議の時間が休憩時間に食い込むときには、休憩時間の変更」の指示を、何故被告高浜はせずに、原告を含む多数の教職員の休憩時間取得を侵害したのか再度釈明を求める。
市教委に対する休憩時間施行結果の意見について
被告高浜は高槻市外準備書面(5)にて、「正確には被告高浜の意見は前半部分の『児童への対応や教材研究等で、なかなか取得できない現状。』のみ」と記している。では後半部分の「時間変更等の工夫をしても子どもとの対応が長引き取得は厳しかった。」は何か?正確さを欠く教職員のアンケート記述からの単なる抜粋だったと言うのか?取得できないことを大げさにあるいは事実を歪曲した教職員の記述、あるいは人数的・回数的に特殊化された記述をそのまま市教委へ報告したのだとでも言うのか?
再度確認するが、校長の休憩時間取得結果報告は教職員の勤務状況をよく把握し得る立場の校長が、教職員の休憩時間中の勤務実態を把握しきった上で、教職員が提出したアンケートの「取得は厳しかった」記述内容を教職員の休憩時間中の勤務実態の最大公約数とみなし、校長の意見として事実報告を市教委へ上げた公文書である。これは休憩時間中に業務が土室小学校で日常的に為されていた事実を校長が認めたことになる。
【求釈明】
これまでの求釈明に答えていない事柄につき再度釈明を求める。
1)何故被告高浜は、「職員会議の時間が休憩時間に食い込むときには、休憩時間の変更」の指示をせずに、原告を含む多数の教職員の休憩時間取得を侵害したのか再度釈明を求める。
2)2003年度の休憩時間の文書明示について
被告高浜は、組合による校長交渉の席でも文書明示を求めたにもかかわらず、被告校長らの中でただ一人2003年度の休憩時間の文書明示を為していなかった。高槻市外準備書面(3)及び(4)(5)にはこの件についての見解を述べていない。原告は職務怠慢と考えるが、なぜ他の校長が為しているにも拘らず、休憩時間施行の根幹となる文書明示を為されなかったのか、如何なる考えに基づく不作為か再度釈明を求める。
3)情報主担者会議の出張について
原告の休憩時間中の情報主担者会議出張に伴い、高槻市準備書面(4)で被告が主張する「学校側は6時限目を空きにする等、休憩時間の取得のための配慮」が、いつ・いかなる形でなされたのか再度釈明を求める。
4)始業・終業時刻記録の提出要求について
原告の残業実態を証明するために、2002年度と2003年度の原告の始業・終業時刻記録を証拠書類として提出することを再度要求する。
<原告末広の反論>
①被告高槻外準備書面(5)の「休憩時間における勤務について被告佐竹又は被告大西による黙示の命令があったこと及び休憩時間も手待時間であり労働時間であると主張するが、すべて争う」について反論する。
・NIE(「学校に新聞を!」の英語略)の取り組みについて
先にも述べているようにNJEの取り組みは、校長である被告佐竹の指導の下に引き受けた(2001年~2002年度の2年間)学校全体としての取り組みである。当然校長として、この指定を受けた時点でそれからの2年間の学校全体の取り組が今までと変わるということ、公開授業に向けては膨大な準備と職員のエネルギーがいることは容易に想像できうるし、それを認識する立場にあった。すなわち、引き受けた時点からNIEにかかわるすべての教育活動は、被告佐竹が職務として命じているということができる。従って、原告末広が休憩時間に行った取り組みは、被告佐竹の黙示の命令下にあったということは当然のことである。また、「抽象的に忙しかったことを述べるに過ぎず」については、本当に同じ職場にいた校長の発言かと耳を疑いたくなる。自らの指導と責任の下で進めてきたNIEの取り組み状況を把握していないとは、職務怠慢と言わざるを得ない。
・課題のある児童等への対応について
原告末広が受け持った学年は2003年度、竹の内小学校の課題学年であった。その課題の重さのため担任がなかなか決まらなかった。また、その課題に対しては、学校全体として支援をすることが確認されていた。校長である被告大西は、この学年の課題に対する教育活動を職務として命じたということである。課題のある児童等への日々の対応は担任を通して行うが、その様子は口頭やレポートで全職員に報告し、学校全体の課題として取り組んできた。従って、これらにかかわる教育活動が黙示の命令下にあったことは、明らかである。もちろん被告大西も校長として認識し、現認していた。また、「常態化」していたかどうかは、被告大西に逆に問いたい。「常態化」以外にない。
・電話の対応について
2002,2003年度とも電話の近くの席であったので、教頭が出なければ電話対応していた。教頭が病気で長期間休んだ時は、その状態がもっと頻繁になった。電話対応は学校の信頼にかかわる重要なことであり、当然黙示の命令下にあるものである。職員室で現認していない被告佐竹、被告大西が、どの様な根拠で原告末広の電話対応状況を判断されたのであろうか。想像の域を出ない判断は、根拠とはなり得ない。
②「『手待時間』に関する主張は・・・不合理な議論以外何者でもない。」「実態を無視したものである」について反論する。
被告佐竹と被告大西は、原告末広の休憩時間を保障するためにどんなことをしたのか。例えば児童や保護者等の来客への対応、電話がかかってきた時の対応(教頭長谷川が病気で休んでも代替者はなかった)。すべて否である。何かあれば、原告末広を含めた職員が対応してきたのである。これは手待時間そのものである。本当に「実態を無視したものである」のか一度現場をみて、確かめていただきたい。
【求釈明】
原告末広の休憩時間を保障するために、被告校長2名がどんな配慮をしたのか、再度釈明を求める。
<原告長谷川の反論>
被告高槻市外の現場教員の勤務実態把握の放擲や自らの事実誤認など、法廷を侮辱しているとしか思えない姿勢を糾したい。
1、原告準備書面(2)で、原告長谷川は行事予定表(添付資料3、4)を添え、「超過密行事の準備対応、日常の学習の準備点検をする時間を休憩時間と勤務時間終了5時15分以降の超過勤務時間以外のどの時間帯ですればいいのか、釈明していただきたい」と被告高槻市に求めた。それに対し被告高槻市は「各教職員の勤務時間内の具体的な業務の仕方は、各人の事務処理能力に応じてそれぞれ委ねられているので、釈明の限りではない」と答えた。しかしながら原告の職場の行事予定表を見れば、放課後に連日会議があり、休憩時間と勤務時間以外で仕事をするとしたら、授業中に準備点検の仕事をするしかない(それは不可能である)。大勢の教員が休憩時間中や勤務時間終了後に仕事をする事で学校が成り立っているのである。被告がちゃんと実態を調べたら自明の理である。「釈明の限りではない」という主張は、全く職場の実態把握を放擲しているのか、実態が分かった上で釈明を逃げているか、どちらかである。
2、同じく原告準備書面(2)で原告は被告高槻市外の事実誤認を指摘した。
被告は「補習(大冠タイム)は月曜の6校時としていたが、7月に爆弾脅迫電話事件等が発生したため補習を禁止しており」 と主張した(被告高槻市外準備書面(1)の8頁終わりから5行目)。
補習(大冠タイム)とは、2004年4月から全校的に始められた補習時間で、全学年全児童対象で、月曜日の5校時(1時45分から2時30分まで)か、6校時(2時35分から3時20分まで)のどちらかで行われた。つまり休憩時間外の時間帯である。
被告らは、休憩時間ではない上記の時間帯に補習が行われたのであるから、原告長谷川の主張は不当だと主張する。
更に、7月爆弾事件が発生し、安全確保のため、他の曜日に子どもを数人残して補習することは禁じられ、一斉下校が多くなった。だから原告が休憩時間に子どもを残して補習する事はありえないというのが、被告の主張である。
①しかし、補習(大冠タイム)は2004年度から全校的に始めたものであり、訴えの2002年、2003年度に大冠小学校では月曜の5、6校時に大冠タイムはなかった。
②その上、爆弾脅迫電話事件の発生は2003年7月14日である。原告は2003年7月事件発生時まで、大冠タイムではなく、クラスで不定期に子どもを残し補習を行っていた。(休憩時間は6校時の終了後すぐ(月・火・木・金)、5校時の終了後すぐ(水)に設定されている。2003年度の3年生の時間割は、月曜→5校時、火曜→6校時、水曜→4校時、木曜→5校時、金曜→6校時である。)
①は大変客観的な事実であり、再調査し事実誤認を訂正するべき内容である。しかるに被告は自らの誤認の訂正を放擲し、「補習は行われなかった」という虚偽の事実を作り出したままである。これは偽りであり、中核市である高槻市のするべき事ではない。原告が校長の黙示の命令によって休憩時間に補習を不定期に行っていた事を調べ認めるべきである。
【求釈明】
被告高槻市は準備書面(5)の末尾において、「いずれも、稀有な実態を殊更に強調して、一般化するものであって、明示又は黙示の命令によるものであると何ら合理的又は具体的な根拠となり得ない失当である」と主張する。なぜ「稀有な実態」と断じる事ができるのか?被告高槻市は休憩時間の実態調査を2年間行わずにいるにも関わらず「一般的でない」と断じる根拠を持っているのか釈明を求める。
以上