2005年6月4日掲載
平成16年(行ウ)第50号 賃金等請求事件
原 告 松 岡 勲 外4名
被 告 大 阪 府 外8名
準備書面(5)
2005年5月16日
大阪地方裁判所 第5民事部合議1係御中
原告 松 岡 勲
原告 家 保 達 雄
原告 志 摩 覚
原告 末 広 淑 子
原告 長谷川 洋 子
記
目 次
Ⅰ、被告(高槻市外)への反論
Ⅱ、被告(大阪府)への反論
Ⅰ、平成17年3月30日付き被告(高槻市外7名)準備書面(4)に対し、原告らは以下のとおり陳述する。
原告らが養護教諭の休憩時間が、他の教職員と同一時間帯にないことの違法性を陳述するのは、被告・高槻市(教育委員会)の休憩時間に係る行政指導のあり方を問題としているものであり、(原告らの所属する小中学校では同一時間帯にあるので)本件との関連性がないとの被告らの主張は失当である。
第1の1に対する反論
「児童の給食時間に、養護教諭の休憩時間が設けられている場合」は、労基法上の休憩時間でないこと明らかである。なぜならば、労基法上の休憩時間は、労働者が職場を離れた場合においても、業務の正常な運営を妨げない場合でなければならないからである。
従って上記養護教諭の休憩時間は、児童がいつ来室するかわからない児童の在校時におけるものであり、「休憩の自由利用が妨げられ、かつ、勤務の強化になる」場合にあたる。よって、「一斉付与の除外」規定に該当しない休憩時間であること明らかである。
第1の2に対する反論
被告・高槻市(外7名)は、『「丙1」は「丙2」を受け運用されているところであり、何ら問題はない』とのべている。
ところで「丙1」(高槻市立学校の府費負担教職員の勤務時間、休日、休暇等に関する規則)は、昭和41年2月23日に制定されたものであり、制定時より40年近く経過している。それに比し「丙2」(職員の勤務時間、休日、休暇等に関する規則)は大阪府人事委員会が平成7年3月17日に制定したものである。
原告らの所属する高槻市立小中学校教職員は、長年に亘り「丙1」の第4条(休憩時間)により一斉付与の除外は認められていなかったものである。
従って、原告ら高槻市立小中学校教職員の休憩時間は、上記長年に亘る事実からしても大阪府人事委員会規則第2号(丙2)の第3条の二、の三(休憩の自由利用が妨げられず、かつ、勤務の強化にならない場合)は、「丙2」の第4条の規定(「正規の勤務時間以外に勤務する場合には、職員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならない。」)にそって、特段の事情の存在しない限り、一斉付与は除外できないものと解釈されなければならないものである。
なお、被告らは『休憩時間の付与は、平成13年の試行を踏まえ、目下検討中であり、「行政の怠慢」と批判されるいわれはない。』とのべている。(*高槻市教委の休憩時間の試行は2002年度(平成14年度)であり、「平成13年の試行」はありえない。)
ところで労働基準法は昭和22年9月1日施行(同法55条)され、休憩時間は同法34条に規定され、刑事罰(六ヶ月以下の懲役・三十万円以下の罰金)で保護された権利であり、(54年後の)「平成13年度の試行」とは、何たることかと言わざるを得ない。
これは「行政の怠慢」でなくて『行政の犯罪』である。
第1の3に対する反論
被告・高槻市らは『労働基準法では、休憩時間を何時与えるのか、分割して与えても差し支えないのかについて何ら規定はなく、かえって、国家公務員については「おおむね毎4時間の連続する正規の勤務の後」に休憩時間を置くよう規定されている(人事院規則)ことからすれば、勤務時間の途中であれば分割付与も差し支えないと解せられ』と述べている。
しかし、この主張は労基法の法的性格を全く理解できておらず、被告らの都合に合わせた勝手な解釈である。なぜならば、労基法は最低基準(同法1条の②)であり、最高基準ではないのであり[また、休憩時間は(前記)刑事罰で保護されたもので]、従って上記、府人事委員会規則は、「正規の勤務における就業4時間後に、分割しないで一斉に付与する」ことを規定したものと解釈すべきであり、これが労基法の規定に沿ったものである。
原告らの休憩時間は、松岡を除いて就業6時間後に設定され、かつ自由に利用できないものであり、府人事委員会規則に反するもので、また分割付与は休憩時間とならないものである。
なお、被告は、丙3号証(昭23・5・14基発769)によって、授業の合間も自由に利用できれば休憩時間であるという主張をする。しかし、それは現実的に「自由に利用できている」場合に限り言えることであり、原告が今まで主張するように、授業の休み時間に設定された休憩時間があったとしても、児童生徒が在校して、休憩している教職員に替わって、児童生徒の世話をする職員がいない以上、気を休められ、自由に取れる休憩は考えられない。また、休憩どころか、授業の合間の時間は、児童生徒の指導や授業の準備等で、自由に利用できる時間であり得ない。
児童生徒は教員に休み時間中のトラブルの解決を求めることも多いし、提出されたノートや小テストの採点、また、いじめ問題などにかかわり、休み時間中も気にかかる子どもの観察は必要になる。様々な子どもへのケアや、指導がなされる可能性がある以上、授業の合間の時間は、授業そのものは無くても、授業に不可欠な本務同様の労働時間、あるいは「手待ち時間」となっている。
よって、「勤務場所を離れるなど自由利用ができる」という判断を、現場の実態も把握せずに教職員が「休憩」できるとしたら、それは丙3号の主旨をも曲げているとしてか言えず、被告側の主張は失当である。
第2に対する反論
被告(高槻市)は『高槻市立小・中及び養護学校の各学校長は、「厚労省基準」に定める始業・就業時刻の確認及び記録に関しては従来から職員の出退勤時間を出勤簿等により適正に管理しており』と述べているが、具体的にどのような方法で「確認・記録」を行っているか明らかにしていない。また、教職員の場合、「始業・終業時刻の確認及び記録」は、「基準」の2の(2)始業・終業時刻の確認および記録の原則的な方法のうち、『ア、使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること』が適用されるものであり、「出勤簿等により適正に管理」できるものではない。被告高槻市は「終業時刻の確認及び記録」を行っておらず、よって、「無定量な労働をチェック」することが出来ていないことは明らかである。
Ⅱ、平成17年3月4日付き被告(大阪府)準備書面(4)に対し、原告らは以下のとおり陳述する。
1[休憩時間の一斉付与除外について]の(1)に対しての反論
説明不足であったので補足すると、原告準備書面(3)で指摘したのは、大阪府は「分割付与」と「一斉休憩除外」とは同時に成り立たないとして、「分割付与」のみとし、「一斉休憩除外」を例示から外していると指摘したかったのである。(甲13号証、乙16号証)
このことについては、原告準備書面(4)(49頁5行目~10行目)でも次のように被告高槻市の労働基準法違反について追及している。
「②(大阪府教委は)休憩時間調査項目中の付与形態「3、一斉休憩除外(分割付与)」を→「分割付与」と訂正し、「※一斉休憩除外を行った後に、さらに分割付与することはできず、この記述は誤りですので訂正願います。」としている。(甲57-4号証)高槻市教委は「一斉休憩除外(分割付与)」を認めている。(甲8号証、甲41号証。「一斉付与除外(職種別等休憩)」に分割の事例がある。)これは労働基準法34条違反である。」
甲41号証(2002年度高槻市立小・中・養護学校休憩時間割振)から「一斉休憩除外(分割付与)」の事例を上げると8校にもなる。
「B)一斉付与除外(職種別等休憩)・・・ 阿武野小(分割もあり)、三箇牧小(分割もあり)、芝生小(分割も有り)、日吉台小(分割もあり)、津之江小(分割もあり)、若松小(分割もあり)、第3中(分割もあり)、如是中(分割もあり)」
労働基準法第34条の休憩時間の3原則(途中付与、一斉付与、自由利用)については、無原則に例外を認めては原則の意味がなくなり、高槻市教委のこの点での原則逸脱は違法である。
1[休憩時間の一斉付与除外について]の(2)に対する反論
職員の勤務時間、休日、休暇等に関する規則(丙第2号証)第三条の二の三は、休憩時間を一斉に与えなくていい要件として「休憩の自由利用が妨げられず、かつ、勤務の強化にならない場合」と規定しているが、(本件における養護教諭の休憩時間の例から明らかなように)、児童・生徒が何時訪れるかわからない時間帯は、休憩時間に該当しないものであること明らかである。
2[厚生労働省の「基準」の周知について]の(1)ー(3)に対し
被告(大阪府)らは、厚生労働省通知(甲9号証)が原告らの服務監督権者たる高槻市教育委員会及び同市立小中学校に通知されなかったことが、違法な行政行為ではないと縷々のべているが、どのような経過、理由があるにせよ通知されなかったのは事実であり、そのもとで違法な勤務時間管理が行われていたのであるから、本件に重大な関連性があり、違法な行政行為であることあきらかである。
厚生労働省労働基準局長名で発せられた文書「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(乙第14号証)の前書きにおいて「本基準の考え方、周知及び遵守のための指導等については、下記のとおりであるので、これが取扱いに遺漏なきを期されたい。」と書かれている。
この基準の「周知及び遵守」のためには、まず、高槻市教委及び同市立小中学校長に「基準」を通知し、その後管理職によって所属の全教職員に周知するという手順をふまなければならない。
上記市教委及び小中校管理職に「基準」の通知がなければ、全教職員に周知されないことは明らかであり、大阪府及び同教育委員会の違法な行為であることは明らかである。
なお、給特法に関する被告(大阪府)の主張についての反論は次回準備書面において詳述する。
以上