2016年9月21日掲載
教科書採択の不正の真相究明
この間、全国的にも大阪府下においても教科書採択における教員の不正が問題になり、頻繁に報道されてきました。そこで組合(学校労働者ネットワーク・高槻)として、「高槻市でも不正があったのかどうか、あったら事実を聞きたい」と、高槻市教育委員会(指導課・教職員課)に真相を明らかにするよう求めました。最初、指導課に問い合わせたところ、「高槻市でも不正があり、11人の処分(訓告1人、厳重注意10人)があった」と口頭回答がありました。詳細を求めたところ、「処分問題なので教職員課に聞いてくれ」と逃げました。それで教職員課に情報提供を要請しました。教職員課の回答(口頭)は、高槻市の場合、訓告1人、厳重注意10人(以上、全て教諭)、注意1人(校長)、そのうち採択に関与しうる立場にあった者1人でした。(選定委員か調査委員だと思われる)11人全員に金品の授受があったとのことでした。情報提供された文書は、「教科書発行者による自己点検・検証結果の報告に関する情報提供について」(大阪府教育委員会、2016年3月18日)、「申請本の閲覧に係る事実確認について(依頼)」(大阪府教育委員会事務局から各市町村教育委員会事務局宛、2016年1月29日)のみで、処分の実態は分かりませんでした。ただ今回の調査が、文部科学省が教科書会社に不正の「自己点検」(文科省への申請)を求め、教科書会社から提出された「対象者一覧」に基づき都道府県教育委員会に調査依頼し、大阪府教育員会は各市町村教育員会に調査を下ろしたという経過が明らかになりました。
情報公開の結果、驚くべき不正実態が明らかに!
教職員課の情報提供は、高槻市の処分に関する文書が一切出てこず、情報提供と言えない代物でした。「せめて『処分一覧』ぐらい出せ」と要求しましたが、「個人毎の処分なので、『一覧』(文書)は作っていない」と逃げました。それなら「公開請求するぞ」とこちらが言うと、「個人情報だからほとんど墨塗りです」とディフェンスします。
そこで、7月25日付けで「教科書採択の不正問題とその処分(高槻市)とに関わる文書全て」を内容とした情報公開請求をしました。公開期間延長を経て、9月16日付けで「公文書部分公開決定通知書」が出て、公開文書を入手しました。
最初の予想は、「個人情報保護」という理由で、ほとんどの文書が「墨塗り」ではないかでした。確かに公開文書は174枚の大量でしたが、大部分に黒のマーカーが塗ってありました。しかし個人名、住所等の個人情報、事情聴取の内容、教科書会社名等を「個人情報保護」を理由に消しても、処分内容を伏せて、隠すことはできません。公開文書を読んでいくに従い、市教委が隠した、驚くべき教科書採択に関する不正の実態が浮かび上がってきました。以下、情報公開で明らかになった高槻市における教科書採択の不正の実態を報告します。
大阪府教育委員会の処分
<減給1ヶ月(10分の1)の懲戒処分>(2015年12月18日)
府教委から懲戒処分が出ていました。あまりにもひどい不正の実態です。高槻市教育委員会は情報提供の際、懲戒処分があったことを明らかにしていませんでした。
「懲戒処分の対象となる事実」
○○○○は、平成26年8月23日(土)、○○○○○○が東京ドームホテルにおいて開催した英語教科書の「編集会議」に出席し、高槻市教育委員会の許可を受けていなかったにもかかわらず、当該編集会議への出席に係る報酬として、同社から現金5万円を受け取った。
また。○○○○は、当該編集会議終了後、同ホテル内において行われた同社の社員も参加した懇親会に出席し、さらに、同日は同ホテルに宿泊し、懇親費と宿泊費は同社が負担した。
加えて、○○○○は、平成22年9月4日(土)、愛知県名古屋市で行われた○○○○○○の「中学校英語編集ブロック会議」に出席し、この時も、高槻市教育委員会の許可を受けていなかったにもかかわらず、報酬を受け取っている。
さらに、平成に26年4月24日(木)に行われた校長会において、高槻市教育委員会から「教科書会社の社員から、資料の提供や意見の聴取、研修会への勧誘等がなされる可能性があるが、教科書採択の公平性の観点から、対応することがないよう」と注意喚起されていたにもかかわらず、当該編集会議に出席した。
高槻市教育委員会の処分
訓戒 1人
訓告 1人
厳重注意 10人
注意 5人
<訓戒>(2016年3月28日)
あなたは、平成26年12月24日、○○○○○○が高槻市内で開催した会議に出席し、当該会議において、同社が文部科学省の教科用図書検定審査会に提出している申請図書等の内容を知らされ、また、高槻市教育委員会の許可を受けていなかったにもかかわらず、当該会議への主席に係る報酬として、同社から現金1万円を受け取った。(以下、略)
*訓戒は処分(服務上の措置)の一番上にあり、以下訓告、厳重注意、注意と続く。
<訓告>(2016年5月18日)
あなたは、平成に22年9月4日に○○○○○○が名古屋市内で開催した会議に出席し、また、平成22年12月17日に、同社が高槻市内で開催した会議に出席し、当該会議において、同社が文部科学書の教科用図書検定審査会に提出している申請図書等の内容を知らされ、また、いずれの会議への出席も服務監督者である市教育委員会の許可を受けていなかったにもかかわらず、当該会議への出席に係る報酬として各回、同社から現金1万円を受け取った。(以下、略)
<厳重注意>10人(2016年5月18日)
あなたは、平成26年8月24日、○○○○○○が東京都内で開催した会議「教育フォーラム」に出席し、当該会議において、同社が文部科学書の教科用図書検定審査会に提出している申請図書等の内容を知らされ、また、服務監督者でありる市教育員会の許可を受けていないにもかかわらず、当該会議への出席に係る報酬として、同社から現金2万5千円を受け取った。(以下、略)
以下、その他の<厳重注意>につい金品授受のみ書きます。
・1万円(7人)
・図書カード(2人)
<注意>5人(2016年6月7日)
校内または教科書会社が開催した会議で、同社が文部科学省の教科用図書検定審査会に提出している申請図書等の内容を知らされ意見を述べた。(学校長からの注意)
各地で教科書採択の不正問題の情報公開を!
このように高槻市での教科書採択の不正の実態が情報公開によって明らかになりました。 高槻市での事例は「氷山の一角」です。各地で教科書採択の不正を糾すため、情報公開することによって、現在の教科書採択の不正の実態、教育界の腐敗がもっと明らかになると思われます。全国各地で情報公開を進めていきましょう。
>>>PDF「教科書採択不正処分」(高槻市)を表示します。
(2016・9・21)