学校から

変な感じ・・全国小学校道徳教育研究会・大阪大会

2011年11月20日掲載

 11月18日、大阪府河内長野市で開催された全国小学校道徳教育研究会の全体会に参加しました。

 舞台の上は、河内長野市市長をはじめ、文科省、府、上廣倫理財団など来賓と関係者で埋められ、1階席には、府下の市教委がずらり。

 私もかつて全国的な研究会に何度か参加したことがありますが、この日のように、一般席に空席が目立ち雰囲気もどこかしらけ(携帯メールをする人もいる!)ているのとは対照的に、来賓・関係者が熱気にみちた研究会は初めてでした。

 イベントは、文科省の初等中等教育局教育課程課教科調査官、赤堀氏の「指導講話」(前日の道徳の研究授業の講評)、日本道徳教育学会会長、横山氏の記念講演でした。

 赤堀氏のパワーポイントには、茶髪の若い女性のイラストが出てきます。道徳教育推進教師です。職場のさえない年配教員たちが「クラスの問題を解決するために、明日の道徳の時間の重点目標ポイント(「おもいやり」とか「規範意識」)を変更したい」と言うと、彼女は「当初に決めたものから変えてはいけません」と言い、「今朝の新聞記事をぜひ道徳の時間に使いたい」と言われると、彼女は「アイデアを急に入れてはだめです。最初に決められたとおりにします」と答えます。「そうじの時間に起きた問題を道徳の時間に話し合いたい」には「他の時間にやってください。」とつっぱねます。パワーポイントの年配教員たちは、最後に「わかりました」とひきさがり、赤堀氏は、「推進委員の先生たちはこのようにやればよいのです」と励まします。

 「地域清掃活動をするので、あらかじめ道徳の時間に「公徳心」について勉強させたい」という年配先生には、彼女は「道徳は深化統合の時間なので、事前学習はダメ、終わってからです」と答えるのですが、赤堀氏は「それでも実際に『前にやってはだめなのですか』と質問されるのですが、私が決めたわけではありませんのでね」と冗談めかして言います。
 
 「決めた人間が来てしゃべれ!」とツッコむ前に、この人、学校の状況を知らないなあと思いました。教室では日常的に大なり小なり問題が起き、ひとつひとつ子どもに考えさせながら解決していくことが、子どもの成長につながっていくのです。百歩下がって、クラスの問題を話し合う時間を道徳の時間外に取るとするなら、一体どこで取れば良いと言うのでしょう。今年から学習指導要領が変わり30%増の学習量です。空き時間などありません。きちんとクラスで話し合い担任がフォローする手続きを遅らせ、問題山積みの中で決められたとおりの「重点目標」を整然とこなしていく・・タテマエとホンネが乖離し、シラっといた雰囲気が教室を包む・・そうならない事を祈るばかりです。

 赤堀氏の講話の中に、「愛国心」の授業講評もありました。内容は、浮世絵の構図をゴッホが大いに取り入れたこと等を学び、日本の伝統文化に誇りを持とう、というものです。研究授業の写真では、浮世絵が何枚が黒板に貼られていました。この授業だけでなく、この日の集会全体に感じたのは、その浅薄さでした。一体、安藤広重や葛飾北斎が後世の子ども達が自分の版画を見て愛国心を持つことを望むでしょうか。斬新な構図、奇抜でありながら渋い色のトーンに驚く子ども達、「昔の絵もいいね」と楽しむ子ども達をこそ望むでしょう。「いつも学ぶ立場にあるのは子ども達。対する社会は子どもの目標となる所」・・という安易なプロットの設定も、浅薄さを助長させているのでしょうか。

 壇上でしゃべった二人のゲストには、超特大の花束が贈呈されました。なぜ?そんなにいいことしゃべってないのに。アンバランスで何か浅薄、変な感じ。
 他の参加者もそう思われたのか、閉会宣言の前にどっと大勢の参加者が駆け出すようにホールを後にしたのが印象的でした。

     
(長谷川)