2003年8月23日掲載
福岡市内の子どもたちに渡された通知表から「国を愛する心情」「日本人としての自覚」といった評価項目が削除されました。
福岡市小学校校長会の公簿等研究委員会は、今年03度の通知表案として6タイプを作りました。その中の一つには、「・・・我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を持つとともに、平和を願う日本人として世界の国々の人々共に生きていくことが大切であることの自覚をもとうとする。」という評価項目が残りました。
6月6日、福岡県弁護士会の会長は「公教育の現場で特定の思想を強制し、思想・良心の自由を侵害する」と指摘し、今年度からの不採用を求める声明を出しました。市民団体「ウリ・サフェ」や「『愛国心』評価項目の削除を求める市民の会」をはじめとする市民の粘り強い抗議活動と福岡県弁護士会の「警告」等の活動が実り、今年度は、「愛国心」通知表案を採用する学校はゼロとなりました。福岡のとりくみは「愛国心」通知票が全国化するスピードを減速させ、全国各地でどのように「愛国心通知票」に対し抵抗していくか、大きな指針になったと言えます。
西日本新聞(7月11日/福岡市)(新聞記事の為転載禁止)
「愛国心」採用ゼロへ 福岡市・小6 本年度通知表 批判に配慮か
福岡市の小学六年生の通知表に昨年度「国を愛する心情を持つ」などの評価項目が盛り込まれた問題で、本年度は同様の文言を盛り込んだ通知表案を採用する学校がゼロになることが十日、教育関係者の話で分かった。
本年度の通知表の文言は今年六月、市内の小学校長らでつくる公簿等研究委員会(委員長・徳野光昭・席田(むしろだ)小校長)が参考資料として「愛国心」を含む六案を提示。
関係者によると、市立百四十四小学校のうち、「国を愛する心情を持つとともに、平和を願う日本人として世界の国の人々とともに生きていくことが大切であることの自覚」を盛り込んだ案を十日までに採用した学校はなく、残る数校も不採用の可能性が高いという。
この問題では、福岡県弁護士会が「特に外国籍児童の思想の自由を侵害する」などとして同案を採用しないよう各校長に求める会長声明を出すなどしており、批判に配慮したとみられる。
しかし、自校で作成した評価項目に「地球市民・日本人」「世界の中の日本人」などの表現を使っている学校があるといい、「『愛国心』評価項目の削除を求める市民の会」の松尾一代表は「すり替えのような表現を使うのであれば監視を続ける必要がある」と話している。
公簿等研究委員会が提示した残る五案は「わが国の歴史伝統を大切にする」「地球市民としての自覚」などの表現を盛り込んでいた。通知表採用について、徳野委員長は「各学校の裁量に任せていることで何も言うことはない」と語った。