2003年8月2日掲載
「心のノート」の導入部を読んでみると、かなりの低レベルだけど、これはもしかして俗受けするのではないか。そう考えるととってもこわい。
そこで、一作(中学1年生担任)はmomo pon(中学2年生の子をもつ母)に「心のノート」についての問いかけを投げかけてみることにした。
(一作)
「自我像」って造語は気味わるいね。
(momo pon)
でしょ?ここ突っ込みどころです。(笑)
造語まで使い、自我=心の像を自分で描くのです。
鏡に映った自分はとげとげしていないか?
ニコニコ笑うことができない自分になっていないか?
自分の心の姿がよい子か悪い子かを促し、誘導しています。
(一作)
教師に自我を全部見せるものではないよね。
これはとってもあぶない。
ぼくのクラスにも教師としか関係がとれない子がいるけど。
その子をできるだけ生徒のなかにもどすようにしてるんだけど。
(一作)
教師のなかでは「心のノート」の話になると、「これは使える」という声があるんだよ。生徒の心を「のぞく」ことが普通の教師の日常があって、教師が「心のノート」を容認す傾向があるような気がするんだけど?
それと学校カウンセラーの配置はこの学校の構造を問題にせず、矛盾の上塗りになってやしないかな。
(momo pon)
そうね。心のノート容認とカウンセラー配置がより生徒の心を「覗く」ことを正当化しているよ。そして、不登校や問題のある子どもに対し、このカウンセラーの配置が果たして学校が抱える諸問題の解決策になるかどうなのか疑問よ。
(一作)
うちの学校でもカウンセラーがいるんだけど、問題のある子を教師がカウンセラーにまわす傾向があるんだ。カウンセラーはとってもいい人なんだけど。
そのカウンセラーの書いている文章にこんなのがあるんだ。「心のノート」と共通するものがひそんでいるね。
「みなさん“自分”のことをどう思っていますか?自分で自分のことをどう思うかで、“自分”は変わります。自分のいいところ・わるいところ、すべてひっくるめて、あるがままの自分にOKをだしていると、心が生き生きしてきます。」
(momo pon)
そんなに簡単にいくわけないでしょう。
そして、そのカウンセラーの書いていることって矛盾してるよ。あるがままの自分にOKをだしていると心が生き生きとするといいながら、どこかで今の自分を変えないといけないと心の矯正を促しているんだもん。レトリックを用いるなよといいたくなっちゃう。
カウンセラーが置かれて、養護教員が日教組の分科会で「自分はもっと生徒の心をわかってあげなくてはいけないないのかと思い、生徒に話しかけている。」といったのよ。
これはカウンセラーの配置が常態化していることから、そんな傾向になるのか、もともと先生という職業がそのような傾向を生み出しているのかわからないけど。ここでわたしはこの先生は生徒の心の内面まで知ることが使命のような錯覚を起こしているんじゃないかと恐怖がつのったの。
そこですかさず、「先生方は生徒の心を無理に知らないでもいいんです。生徒が保健室に自由に出入りできる雰囲気を創り出せばいいだけです。そして生徒が話しかけたら聞くだけでいいんです。」と思わず、カッとなっていってしまった。
さらに「子どもは自分の心や大事にしている秘密を親にさえ、言わなくてもいいんです。」と最後にはっきりいった。これは子どもの人権=内面の自由に関わることだから、親でさえデリケートに子どもの心を扱っているんだといいたかったからなの。子どもを親や先生が所有物のような扱いをしている限り、子どもの自己決定権なんてわかりもしないでしょうし、手紙や交換日記を読む行為が犯罪行為であることすら鈍感でわからないと思う。だって私の町の中学校では、毎日先生にノート(生徒と先生の心の架け橋になると思っている馬鹿な中学校)を提出させ、生徒の内面を書かせている学校すらあるのよ。「心のノート」以上のものを平気でやっている。日教組の先生が何人いても問題にしない。(笑)
(一作)
おれもそんなことしてたよ。
日の丸・君が代問題で「内心の自由」「思想・良心の自由」の尊重がいわれてきたけれど、学校では子どもの「内面の自由」を大切にしない気風があるね。これではだめだね。
(momo pon)
教員一般の問題の一つに思想・内面の自由を尊ぶことが欠けている。これが日の丸・君が代を認め、学習指導要領にナショナリズムを盛り込まされた結果であるとわたしは思ってる。もうちょっと教員一般が敏感であればよいのだけど、この現実は悲しいよね。
学習指導要領にしばられた教育の現実がすでに憲法の骨抜き、教育基本法改悪になっているんだわ。とっくに指導要領でやられた後に教育基本法改正反対の狼煙をあげたって、今さら遅いねん!(笑)ちと、愚痴になっちゃった。
(一作)
あくまで学校の現実から問いを発していかなければならないね。