Subject: [fem-women2000 624] 司法正義におけるジェンダーバイアス
From: lalamaziwa <lalamaziwa@jca.apc.org>
Date: Tue, 13 Mar 2001 07:57:00 -0500
Seq: 624

lalamaziwa です。

これは、途中から参加したのでまとまった話を聞けたのは米国だけで
したが、思わず聞き入ってしまいました。というのは、日本の取り組み
をよく知らないからなんですが・・。とりあえず、以下、メモから・・・

#さて、NYはよーやく朝8時。長い夜が明けて、これから「出勤」です。
#やっぱり朝はベーグルですね〜!

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2001/03/12(月)  13:00-15:00 Conference Room C -- during CSW45
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国際女性弁護士家連盟、国際女性法律家連盟、NY州弁護士連合会 共催
ラウンドテーブル:司法における性差別、世界の視点から(*1)
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NOW Legal Defence & Education Fund 所属 「(法廷における女性
と男性の平等を推進する)全米司法教育プログラム」(*2)のディレクター
Lynn Hecht Schafran さんが "THE UNITED STATES - Does Activity
Equal Progress?" をテーマに話を始めたところでした。

   *

「妊婦の差別は差別だが、それは女性差別ではない」といった話がま
かりとおっているのがアメリカだ。なぜ、そうしたまやかしに反論で
きない状況が続くかと言うと、それは裁判官がジェンダー教育を受け
ていないからだ。そして、司法におけるジェンダーバイアスに取り組
むプロジェクトが始まった。

初期の反応は「ヨソの州ではそんな問題があるのか?」「でも、女性
をそんな風に扱う人はうちの州には居ない」といったヨソゴト扱いで
しかなかった。司法教育教材は膝元の問題を扱った資料を組み込んだ
ものでなければ絶対に理解してもらえないことが実感できる。弁護士
連盟のレベルでできることも多い。各州でモデル教材をつくり、10
0の自治体に普及させた。ジェンダーバイアスがかかっている問題の
ある判決を再審させる仕組みもできてきている。しかし、現実には、
再審の判決の方が女性に厳しい判決となってしまうという問題が残っ
ている。

弁護士、裁判官、に対するジェンダー研修はほとんどの州で義務化さ
れている。人種バイアスについても同様だ。週に数時間の研修を受け
ることが求められる。以前は裁判官を教育できるのは裁判官しか居な
いという考えがあったが、ジェンダーに詳しい経験のある裁判官がそ
うそう居るものではない。ようやく専門教育(expert education)に対
する関心が高まってきた。1994年に4時間のビデオ教材と付随するパ
ンフレットを制作した。

このプロジェクトを始めて今年で20年になる。この間、アメリカで裁
判官をしている人全員に会ったんじゃないかと思えた時期もあるがコ
トは単純ではない。高齢化して退職したり、政治環境の変化に応じて
転職したりして、人材は流動している。

現状改革のためには、おおまかに言って2つの問題がある。
(1)提言や改革案を持ち出すと「若い人が入ってくれば考え方も変
わっていく」といった反応が必ず返ってくる。待っているだけでジェ
ンダーバイアスが無くなるのならそんなに楽なことはない。若手だか
らといってジェンダー研修を受けているとか、ジェンダーに詳しいと
いうわけではない。放っておいて何かが変わるわけではないのだ。
(2)追教育(retraining)しましょう、と持ちかけると「なんでも
う一回やるの?そんな時間ないよ」という反応が返ってくる。問題の
根の深さに対する理解が行き届いていない。

法律を専門とする人々に着目した研修だが、非法律家に対する研修も
必要である。この部分についてはまだ手が届かないままだ。被害届け
に記入するときに、気の無い対応や差別的な対応をされてめげてしま
うといったことがママある。児童虐待の相談窓口や、被害相談の窓口
の担当者の研修も必要だ。受付のところで誰かの人生を左右してしま
う可能性があるのだという認識を持つことが必要である。

質疑
====

Q.女性が法律面で直面する問題にはどのようなものがあるか?
A.タイの場合:近代の法制度が導入されたことで女児の権利が侵害
されることになった。以前は農地の耕作は娘に引き継がれていたが、
19世紀に西洋の法的権利概念を導入したため、土地を相続するため
に田舎にもどるというケースも出てきた。土地の分割縮小で生存に不
十分な面積しか残らず、人口移動を引き起こすこともある。

Q.数の問題と刑罰システム(criminal system)の問題がある。研修
を広めていくといっても、監獄などは対応できるのか?
A.米国では、女性は女性に対してよい対応ができるという考えがあ
る。女性の看守は女性囚人に人気がある。しかし、上司の評価が悪い。
男性である彼らとやり方が違うからだ。勤務評定を悪化させないため
に、女性囚人とは仲良くしないというフリをしてしまうことがよくあ
る。こうした事態を避けるためにも、統合されたアプローチをとる必
要がある。例えば裁判官に対する研修を始めると「検事の研修もやら
なければ意味がない」といわれる。「彼らはこうしたことを何もわか
っていない。」というわけだ。保護観察を担う人材への研修も必要だ
ろう。それからアムネスティが人権侵害を追及しているような、特定
の問題に特化したアプローチも必要だ。いろんなグループと連携して
学際的なアプローチを取る。月に一度、関係者の連絡会議を持つなど
も有効。ワイドレンズとズームレンズを使い分けるように動かしてい
く必要がある。

Q.どういう働きかけをすれば、女性議員に動いてもらえるだろうか?
A.南アフリカの場合、アパルトヘイトに対するコミュニティでの取
り組みの歴史が長いという点で特殊だろう。労組も多く動いている。
その結果、コミュニティと法律家がうまく連携できている。A.米国
では、ワシントンDCに駐在するスタッフが立法府と常にコンタクト
している。米国では議員の1/4が女性だが、Eagleton Institute
of Reference to Women in Politics (?) が女性議員への働きかけを
積極的に行っている。

Q.イタリアでは警察や弁護士に対する研修はできるが、裁判官や検
事にアクセスできない。弁護側よりも検察側に対してより細かい研修
が必要だと考えるが、一体どうやって彼らにアクセスすればいいのか?
A.理解のある女性議員がいるかいないかは別として、立法府に居る
女性に働きかけて変えていくしかないだろう。

Q.米国内の人種差別について取り組んでいるか?
A.「有色人種女性の裁判における対等な正義」については1998
年にモデル研修コースを作った。ジョージア州、カリフォルニア州、
ワシントン州が対象である。このうち、カリフォルニア州では、ここ
からいろいろな教材に取り入れられている。

Q.暴力被害に会った移住労働者女性(battered immibrant women)
についてはどうか?
A.課題のひとつに掲げているが、カリキュラムは開発予定である。

C.女性の敵は女性だという言い方がある。米国の女性囚人の大半は
25-29歳 の有色人種で、高等教育からドロップアウトした者も多い。
そのうち、40%は 8-15歳の時点でレイプ被害に会っている(*3)。身分、
収入を問わず、女性として理解する姿勢がどれだけあるか?というこ
とが問われていると言ってよい。

Q.人種主義・排外主義・非寛容の国際会議では女性の問題を取り上
げる予定が内容だ。
A.どういう内容になるかをいま判断するのは時期尚早だろう。5月
の準備会合に向けて働きかけていきたい。


(*1) "Roundtable: Gender Discrimination in the Administration
of Justice a Worldwide Perspective" presented by International
Federation of Women Lawers, the International Federation of
Women in Legal Careers and the Women's Bar Association of the
State of NY

(*2) National Judicial Education Program to promote equality of
women and men in court このプログラムの連絡先は、email:
njep@nowldef.org NOW Legal Defence and Education Fund が
National Association of Women Judges の協力を得て実施しています。

(*3) http://www.geocities.com/childrensfuturefoundation/




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