Subject: [fem-women2000 36] アジア太平洋地域NGO シンポ報告と今後の動き
From: <hiroko@jumonji-u.ac.jp>
Date: Sat, 28 Aug 1999 10:05:47 +0900
Seq: 36

アジア太平洋地域NGOシンポジウム報告
及び女性2000年国連特別総会に向けての動き

橋本ヒロ子

 8月31日〜9月3日に、タイ国バンコク市郊外のカセサート大学カンペサンキ
ャンパスで開催された。主催はタイウオッチ(タイ北京行動綱領実施監視団体)、
カセサート大学および太平洋東南アジア女性協会の3者。タイウォッチの代表のス
マリと東南アジアウオッチの代表パトリシア・リクアナンがこのシンポジウムの
共同議長。参加国は27(南アジア、東南アジア、東アジアはほとんど参加したの
にたいし、南太平洋からは4カ国、中央アジアからはアゼルバイジャン1カ国と
参加状況が良くなかった。)、海外からの参加者総数は約400人、またカセサート
大学は農学部が代表的な大学ということもあり、国内の農村女性が200人参加して
いた。日本からはNGOレポートを作る会から29名(各領域から二名その他ユース等)、
直接申し込んだ12名合計41名であった(直接申し込んだ日本人の中には、開会式
のレセプションで副首相と写真を撮ったり全体会議等には出席して、あとは会場
から姿を消した参加者もあったようである)。また、フィリピンは100人以上の大
代表団を送り込んだが、会場には30人だけ登録し、交互に入れ替わって出席して
いた。日本人は自費参加であるが、開発途上国はUNIFEM、UNICEF、UNDP等援助機
関からの旅費.宿泊費等貰ってくる。国による集金力の差が参加状況に大きく反映
していた。なおNGOレポートをつくる会からは、当初の予定どおり集まってはいな
い賛同金の中から3千ドルを主催者側に寄付した。

 第1日目は登録、午前中は運営委員会や分科会担当者などの打ち合わせ、午後は
基調報告も含めた開会式が行われた。北京NGOフォーラムのコンビィーナーであり、
現在はタイの総理府女性問題担当大臣であるスパトラ・マスジットの開会挨拶。
基調報告はオーストラリアの先住民でニューサウスウエールズ州の先住民局次長
のリンダ・バーニーによる自分自身の生い立ちも含めた、先住民とりわけ女性へ
の抑圧の話が感動的に語られた。会場には参加国の国旗が掲揚されていたが、リ
ンダはオーストラリアの先住民は独自の国旗(土地の色の黒、先住民に対する抑
圧に対して戦った血の色の赤、そして太陽)を持っているという説明をし、その
国旗も掲揚されていた。日の丸も掲揚され、松井やよりさんから国旗国歌法の成
立と日本人の1部とや第二次大戦で犠牲になったアジアの国の人達の日の丸に対
する感情について飛び入り説明があった。日の丸の問題だけでなく、オーストラ
リアやフィリピンの先住民の他に、インドに亡命しているチベット人や台湾から
の参加者もいるこのようなNGOの会議に国旗の掲揚は不必要であると思われた。

 東アジア、東南アジア、太平洋、南アジア、中央アジアなど各小地域のレポー
トの発表から始まった。東アジアの場合は8月17‐18日韓国で開催されたように、
いずれの小地域もすでに会議を開きレポートをまとめていた。

 第二日めは12領域のワークショップの討議とレポートの取りまとめに当てられ
た。私はHの制度的仕組みの部会コンビーナーとなった。もともと割り当てられた
ラポルツール(書記兼報告者)が来なかったため、部会の司会だけではなく、レ
ポートの取りまとめに深夜まで作業し全体会で報告した。同じ部会の織田由紀子
さん(アジア女性研究交流フォーラム)のノートと協力に随分助けられた。

 各領域ともに、北京会議以降達成できたこと、ギャップ、執拗な問題、チャレ
ンジ・障害、新しく出てきたこと、これからの行動という内容で討議を進めた。

 3日目の午前中、各領域の発表があった。12領域共通の問題として挙げられて
いたのは、グローバリゼーションと構造調整の女性に対する影響であった。女性
労働の縁辺化・非常勤化、女性失業者数の増大、移民労働に対する制限の強化と
労働基準の低下、女性・女児等人身売買の深刻化、貧困の女性化の促進などだけ
ではなく、例えばナショナルマシーナリーの整備も遅れ、環境の悪化にもつなが
っていることが報告された。

 北京会議以降、全体的に進展が見られたのは、女性の政策決定への参加(クオー
タ制度の法制化)、基本法、女性に対する暴力廃止、家庭内暴力廃止など女性関
連法律の策定、ナショナルマシーナリーの整備、識字率や産褥期死亡率の低下な
ど挙げられた。しかし、枠組みは作られても、実際に社会や社会の意識が変わり
女性の地位が実質的に向上したかという点ではほとんどの国で、大きな進展が見
られていない。むしろ、原理主義者の台頭で後退しているという見方もある。

 北京行動綱領ではあまり扱われていない、女性と科学技術とくにコンピュータ
・コミュニケーション技術の進歩に女性が乗り遅れ格差が広がっている実態、食
料や人類の遺伝子操作等、再生産に関わる生化学の人類に与える問題等も議論に
なったようである。

 その他全体会では、国連ESCAP、UNIFEM、アジア開発銀行、APDC、CIDA(カナダ
開発庁)などNGOに対する財政支援や連携活動を積極的に行っている国際機関等の
パネルフォーラム、原理主義者やナショナリズムの台頭とフェミニズムに関する
パネルフォーラムの開催、このシンポジウム開催のために作られたネットワーク
組織を今後どうするかなどについて討議も行われた。

 パキスタンに避難しているアフガニスタンの若い女性が、学校が破壊され、女
の子が全く教育受けられない一方、男の子は、女性をモノとしてしか扱わない偏
った原理主義教育を受けているアフガニスタン国内の実態と教育の機会もなく人
権も保障されない避難民の状況が報告された。

 国際人口会議のフォローアップや、今年の女性の地位委員会でも見られたよう
に、ユース(若者)の参加を促進するためのプログラムや方策が今回目立った。
日本NGOレポートを作る会からも2名ユースワークショップに参加した。先住民や
障害者の女性など弱者の参加促進とはやや異なるが、NGOの将来だけではなく21世
紀社会を担う若い世代をNGO活動にどう巻き込むかが今後の課題の一つであろう。

 その他、食料の安全保障、農業自然資源維持におけるジェンダー、持続的発展
のためのエネルギーの問題、移民労働、人身売買、政治参加など様々なテーマの
ワークショップが全体会に平行してまた夕方も行われた。

 内容的にも充実していたが、日本ではとても真似のできないほど多くの機関
(タイ航空、観光局、飛行場、郵便局、銀行など)や、ボランティア教員・学生
を巻き込み、きめこまかく行き届いたもてなしに満ちた会議であった。閉会式に
はESCAP事務局長も出席して挨拶し、最後に、中村道子日本NGOレポートをつくる
会代表が、参加者全員を代表して謝辞を述べられた。

 レポート、決議文共に10月26‐29日にESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)
が開催する来年6月の女性2000年ジェンダー平等、開発、平和をテーマとする国連
特別総会のための準備会議に提案される。その時のロビイング戦略を立てるため、
一日前の10月25日にアジア太平洋女性.・法律・開発フォーラムがワークショッ
プを持つことになった。もちろん来年2月27日から開催される第44回国連女性
の地位委員会で取りまとめられるグローバルなNGOオルーターナテイブレポートに
もinputされる。シンポジウムレポートと決議文は編集され早急にweb site
( http://www.jca.apc.org/aworc/bpfa/index.html )に掲載されることになっ
ている。

このシンポジウムの報告会を9月12日13:30から渋谷区女性センターアイリス
で行います。関心のある方はぜひご参加ください。(申し込み先:北京JAC事務局
fax 03-3407-7922)

 また、東アジアのNGOが集まり、来年台湾が担当し台湾で開催される東アジア
NGOフォーラムの日程等について話し合った。2000年8月29日−9月1日もしくは
9月5-8日に開催することになった。日本ではフォーカルポイント等体制などを今
後至急検討する。


女性2000年国連特別総会に向けて今後の日程

10月11-15日CONGO
(国連の協議的地位にあるNGOの連合体が韓国でNGOの会議を開く。
11領域の一つがジェンダー。

10月26-29日 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が女性2000年国連特別
総会の準備のために高級担当官会議をバンコクのESCAP会議場で開催。国連狭義的
地位にあるNGOおよび第四回世界女性会議に参加を認められた団体は参加が可能。
参加申し込み用紙は北京JAC事務局までfaxで。
(Webでも入手可能 http://www.jca.apc.org/aworc/bpfa/index.html )

アジア太平洋地域NGOシンポジウムで作成したNGOレポートおよび決議を高
級担当官会議の成果に入れるためのロビイングが必要。また、地域レポートに日
本女性の実態は余り入っていない。そのためNGOれぽーとを作る会では、日本
女性の実態についてアピールするため、日本のNGOレポートを各国代表団に配
布してロビイングすることになっている。

2000年2月28日ー3月17日
(日程変更に注意.。もともと3月6日から3週間となっていたが8月にDAWから変
更が発表された)
 第44回女性の地位委員会(CSW ニューヨーク)
 女性 2000年会議で検討する内容が討議される。NGOはグローバルオルターナ
テイブNGOレポートを作り上げる。NGOレポートを作る会関係者でCSWに
参加するものは日本のNGOレポートを各国参加者(政府・NGO)に配布して
ロビイング

2000年6月3-4日 NGO集会(ニューヨーク)
グローバルオルターナテイブNGOレポートの発表

2000年6月5-9日 女性2000年国連特別総会

 なお、CONGOから最近入った情報によると、国連女性の地位向上部(DA
W)に北京行動綱領について回答した国数は71。DAWでは、これらをまとめ
て、各国に決議の素案共に送ったということである。



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