Subject: Re: アジア太平洋地域NGO会議からのレポート 09.03
From: lalamaziwa <lalamaziwa@jca.apc.org>
Date: Wed, 08 Sep 1999 14:40:00 +0700
Seq: 32
lalamaziwa です。 9月6日に帰国しました。 遅れ馳せながらシンポジウム最終日の報告です。 9月3日の午前中は「これからの女性運動」のパネルディスカッション。 急用で中途退席したので討議詳細の報告は他の方に譲りますが、話題提供者の話は それぞれに好評で、発表内容をWebに掲載することと、運営委員会の責任で討議継続 のための方法を検討することが決まりました。私が参加した部分で記憶に残っている 問題提起を3つ、以下に記しておきます。 ・女性運動が大きくなるにつれて、官僚組織的(父権的)要素を取り入れざるを 得なくなってきている現状をどう捉え、どう対応していくか ・国連や政府のアジェンダにインプットするために本来の活動から提起されてくる 課題を切り捨てたり遊離していく傾向にどう対応していくのか ・いつのまにか「フェミニズム」が「ジェンダー平等」にスライドし、この概念は フェミニズムが明示した女性の抑圧状況を隠蔽し、より男性優位の社会を産み出 していくことが予想される。この問題にどう対応していくのか。 * 午後は、タッツィさん(Patricia Liucanan, Philippines)の司会でアジアコー カスの今後の運営ついての議論から始まり、以下が決まりました。 アジアコーカスの運営は、各小地域から3名(計15名)を選出し、この中から アジアと太平洋を代表する共同議長を2名選出する。このほか地域ベースのネッ トワークを最大3つ加えて運営委員会を形成する。ネットワークメンバーの選出 については運営委員会メンバーに一任する。小地域代表の選出期限は9月中旬と する。今後の情報共有と広報には、<apwomen2000@isiswomen.org>を使う。 * その後2時間にわたり、シャグフタさん(Shirkat-Ghar代表, Pakistan)がまと めた文案に 基づいてシンポジウム宣言文・草稿の読み合わせを行ないました。ア イリーンさん(Eileen Pittaway, Australia)が、この文面は「アジア太平洋地 域の女性のビジョン」を詠うものであり、詳細は報告書本文に譲るものであるこ とを説明し、文案を読み上げました。 当初の予定ではA4で2頁でしたが出来上がった文案は4頁、最終的には5頁の内容 になりました。9/3の討議に基づく抄訳をアップします。 ※メモに基づく抄訳につき、禁引用とします。確定した宣言文は2週間ほどで アップされる予定ですので、どうぞよろしく。 アジア太平洋NGOシンポジウム宣言 ―アジア太平洋女性2000年会議:ジェンダー平等、開発、平和― 私たちアジア太平洋地域の女性は、世界の女性の60%を代表する認識に基づき、 決意をもって以下を宣言する。 ▽ 女性が、気弱にならず、行動的であり、創造的であり、エンパワーされて いる状態。身体の機能と治癒という生命力が損なわれない状態。私たちの 多様な能力やリズムが評価され、私たち女性が、自信を持って、暴力を受 ける恐れなく、選択し、自己表現し、自由に移動できる状況を実現するた めに、個として、又社会的存在として女性の尊厳と福祉を正しく位置付け ること; ▽ 軍事主義が平和に道を譲り、純粋な国際的敬意がグローバル化に起因する 深刻な不平等と差異を抑制するようなアジア太平洋地域を築く作業に貢献 すること; ▽ 文化の複雑性に対峙し、そのアジア太平洋地域の多重性と多様性を保護し、 社会における女性の役割を豊かにし、かつ強化する要素を祝福し、女性を 差別し時に女性・女児の身体や人生に修復不能の損害を及ぼす文化的慣行 を改革すること; ▽ 資源が持続可能に利用され、女性・男性の間で平等に分配される世界の実 現に向けて取り組むこと; ▽ 女性が十全にエンパワーされ、私たちの暮らしの枠組みを決定する構造や、 仕組みや政策に対等に参加する世界を要請すること。 私たちは、北京行動綱領がこのビジョンの達成に向けた私たちの闘いに一定の 推進力を与えたことを認識する。 私たちは、行動綱領の原則へのコミットメントと、平等・開発・平和という行 動綱領の大枠へのコミットメントを再確認する。だが、アジア太平洋地域の政府 が行動綱領を包括的かつ統合的に実施していない現状を遺憾に思う。 私たちは、行動綱領のプロセスによって一定の成果がみられたことを認識する。 これらの多くは、NGOと活発な女性運動の貢献によるものである。 しかし、これらの成果の他方には下記のごとく憂慮すべき状況もある。 ▽ 女性のエンパワーメントに逆行する要素や態度が依然として存在する ▽ 女性と健康の問題 ▽ 総合的なジェンダーセンシティブな教育政策の不在 ▽ 情報通信技術や近代バイテクに代表される技術の社会・環境への影響 ▽ 女性に対する暴力を含む暴力容認文化が依然として代わらない状況 ▽ 環境の悪化とその対策の不充分な実施 ▽ 女性、女児、その他の周辺化された女性たちへの注目が不充分なこと による更なる主流からの隔離 ▽ 政府の実施・釈明責任を担保するメカニズムの不在 ▽ 問題解決をミクロの取り組みに依存する体質から明らかな政治的意思の不在 不正義の永続を助長し、世界平和を脅かし、女性のエンパワーメントを妨げる 以下の新たな傾向がもたらす挑戦を認識しつつ: ▽ グローバル化とSAPSの経済への悪影響は、女性の貧困化、女性の収入 減少、メディアでの扱い、保健サービスなど、すべての主要課題分野の成 果を無化する。 ▽ 多国籍企業の影響力増大 ▽ 地方自治単位や先住民コミュニティからの経済的、法的、政治的な自己決 定権の剥奪。多国籍アクターによる天然資源、科学技術の先進的管理や 世界貿易機関(WTO)による貿易関連知的財産権(TRIPs)の扱いや生命特許が もたらす問題。 ▽ 武力紛争や他の暴力的紛争状況の危機的な増大とそれに伴うレイプ、身体 部分の切除、強制妊娠と強制避妊、人身売買、買売春、国・第三セクター、 その他の主体による女性に対する系統的な暴力の蔓延 ▽ アジア太平洋地域の軍事化と核武装化 ▽ 女性の対等な参加、平等な権利享受、資源アクセス、意見表明を否定する (とりわけ暴力によって否定する)武力外交への傾倒。 以下の事柄に力を得て、 ▽ 女性の戦略的ニーズが徐々に受け入れられつつあり、いくばくかのコミッ トメントが見られ始めていること ▽ 女性のエンパワーメントに取り組むNGOや市民運動の拡大、運動の多様性と そのイニシアティブの創造性;これらの同盟とネットワークの強化 ▽ 北京行動綱領がNGOや他の社会アクター、政府、国連機構の間にもたらした 女性のエンパワーメントのためのパートナーシップ 世界、地域、私たち自身についてのビジョンを活きた現実に置き換えていく作 業にコミットする。 しかし、この作業を達成するためには次のことが前提条件となる。 ▽ 女性として、人として、私たちが置かれている状況の多様性を真摯に受け とめ、私たちの多重性に力を見出すとともに祝福し、それぞれの意見に意 義ある場が与えられることを保証する。 ▽ 私たちの異なる現実が単純化された概念としての女性を置き換えるととも に、法律・政策・具体的な取り組みに反映され、人権問題の表現において 女性の多重かつ交差するアイデンティティが認識されること。 ▽ 北京行動綱領が対応する課題分野において、女性の人権の視点が、断片化 された分野別のものではない全体的アプローチに導入されること ▽ 女性が科学と技術の力を制御する能力を身につけること ▽ 女性を、政府・市民社会によって、完全な人間存在として、それが意味す る基本的人権と開発権を有する存在として受け入れられること。 ▽ 政府、社会、個人が非暴力的紛争解決手段を固守し、人の尊厳と紛争や暴 力の影響を受けた女性の権利を尊重し、女性自らがどのような行動が必要 かということを決め、形づくることを保証すること。 私たちはこの目標に向けて、すべての女性の運動への十全な参加を担保する手 段を模索し、私たち女性の連帯を強化し、連携すべき味方を見つけ、私たちのつ ながりを強化していく作業にコミットする。 さらには、次を、政府、国連機構、市民社会に要請する。 ▽ 北京行動綱領、女性差別撤廃条約、その他の人権条約等を効果的に実施す ることにより平等・開発・平和へのコミットメントを再確認すること。 ▽ セクシュアリティや意思決定における対等な参加代表性(すべての意思決 定単位およびレベル,並びにリーダーシップの地位、統治構造など)にお いて、女性が自らの暮らしにかかわるすべての局面を自己決定し得る状況 を担保すること。 ▽ マクロ経済政策と開発政策を女性の人権並びに増大する女性の貧困化を取 り除く観点からを再検証し、正しい方向に誘導すること 最後に、混乱と性急な変化・開発の20世紀を去るに当たり、不正義や不平等で はなく、互いの尊重と正義の原則に基づく真の開発へと変革し、アジア太平洋地 域の女性が打ち出したビジョンを実現する一助となる北京行動綱領の高尚な希望 を実現させる勇気とコミットメントを世界に要請する。 -- lalamaziwa