Subject: [fem-events 302] 傍聴ありがとうございます
From: Shiba Yoko <yoko-s@jca.apc.org>
Date: Fri, 07 Jul 2000 03:06:21 +0900
Seq: 302


台湾の元「慰安婦」裁判へ傍聴にいらしてくださいましたみなさま、ありがとうご
ざいました。

意見陳述をした阿媽は原住民、タロコの女性です。彼女は、匿名で訴状に載って
いる原告ですが、今回意見陳述をするに当たって原住民としての名前を名乗って
裁判をしていくことを自ら宣言しました。原住民の人々は、もともとの民族の名
前と、日本植民地化で押し付けられた日本名、戦後中国時代になってつけられた
中国名と3つの名前をもっています。日本名も中国名も本来の自分の名前ではあ
りません。彼女は積極的な意味で本来の自分の名前であるイワルタナハを名乗って
語り始めました。タロコ語から北京語へ、北京語から日本語へという二重通訳で
はありましたが、幼いときの生活、自分が日本軍に強姦されていったときのこと
などを時々涙をぬぐいながら、静かな語り口でていねいに話してくれました。
そして、最後に「言いたいことが、まだまだたくさんある。タロコで日本軍の性
暴力を受けた人は8名いるが、そのうちの2人はこの裁判にも(意見陳述にも)、
まにあわず死んだ〈今年2月と,最近7月2日に死亡した〉。今,86歳の阿媽
がいる。身体の調子が悪く日本にこれない。これでもあなたたちは〈裁判官や国
に対して〉何もしないでいいのですか!」と、声を大きくし、「心が激しくゆれ
ている」と語った。
そして、「辛いとき、心をやわらげるときいつも歌う歌がある、それを歌いたい」
とタロコの教会で歌っている賛美歌を最後に歌いました。10代の少女が受けた
性暴力は、今は過ぎ去った過去のこと、ではなく、阿媽になった現在も、昨日の
ことのように引きずっている痛みなのだとその歌声を聞きながら痛感いたしまし
た。

夜の報告集会は、夕方から雷鳴とどろく激しい雨に見舞われ,電車が止まるなど
の状況の中で参加者の有無を、主催する側としては気にいたしました。阿媽たち
が待っているなかで参加者の出足が悪く、気が気でありませんでした。やがてず
ぶぬれになった若者があらわれ、受付台をびしょびしょにしながら名前を書いて
くれました。どんなに感動したことか!
やがて、びしょぬれになった人たちが集まってきてくれました。多い参加者とは
いえませんでしたが、感謝いたします。ありがとうございました。

柴 洋子




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