Subject: [fem-events 262] Cultural Studies Forum(CSF)5月例会のご案内
From: "MURAI Hiroshi" <murai.hiroshi@nifty.ne.jp>
Date: Wed, 10 May 2000 05:18:10 +0900
Seq: 262

 下記の研究会のご案内をお送りします。クロスポストしているので、重複している
方、すみません。

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Cultural Studies Forum(CSF)5月例会のご案内

◇日時:5月21日(日) 午後13:00〜
◇会場:日本放送協会出版 地下二階のA会議室
     (東京都渋谷区宇田川町41−1)

●研究報告
◇報告者: 長尾洋子氏(一橋大学助手・地理学・開発論)
◇報告題:
  「ジェンダー化を伴ったローカル文化形成過程と消費文化の進展との関係につい
  ての試論−第2次大戦後の民俗芸能の祭典『おわら風の盆』の展開を通してみえ
  てくるも の」(仮)
◇ディスカッサント:武田俊輔氏(東京大学・院・人文社会系研究科)

●読書会
◇テキスト:
 テッサ・モリス=鈴木「文化、多様性、デモクラシー」『思想』1996年9月号、38−
58ページ
◇担当:鄭秀娟Cheng Shiowjiuan氏(東京大学・院・社会情報研究所)

●長尾報告要旨+参考文献
◇要旨
本報告は、民俗芸能あるいは地域芸能と呼ばれるものが、重層的な輪郭をもった文化
現象として立ち表れてくる過程及びメカニズムを、主に社会史、人類学、空間認識
論、身体論を含んだ複合的な視点と手法を用いて解明しようとする試みの一部であ
る。発表者は特に富山県婦負郡八尾町で行われている民俗芸能の祭典「おわら風の
盆」をめぐる文化現象に注目している。この祭典は現在、明確な年齢および性別によ
る芸能集団編成によって伝承されており、また演技においても踊り・楽器演奏・唄・
演出等の担当が年齢および性別によって大きく規定されている。この事実はしばしば
「古き良き日本」を象徴する秩序として観光客に理解され感銘をもたらすのだが、一
方、この(想定された)「古き良き日本の象徴」は、消費文化の浸透と共に盛んに
なった観光産業・文化産業の「商品」として流通している。さらに、第2次大戦前ま
で、「おわら風の盆」への女性の参画は、階級・職業・年齢・居住地区によってかな
り限定されていたものが、戦後は民主主義的価値の受容、女性に対する社会的認知の
向上、地方行政における住民動員の必要などから、「一般女性」が参画するように
なった。その一方、戦前の芸能「おわら」の重要な担い手・伝承者であった芸妓が存
在しなくなってしまい、芸妓が社会的に要請され、かつ体現していた「女らしさ」は
変形しつつも「一般女性」に担われるようになった。この新しい文脈での「女らし
さ」は戦後に進行した芸能集団の性別・年齢別編成の再編成に取り込まれ、「古き良
き日本の秩序」の効果的な表象として機能しているように見える。

ジェンダー化を伴ったローカル文化形成過程と消費文化の進展との関係は、本来なら
ば(「おわら風の盆」の事例が示唆するところによれば)工場や都市への労働力移動
が近代的大衆文化の発生を促し、花柳界の存在が大衆文化や男女関係のあり方の一端
を担っていた時代、また「民俗」が発見され、有意な情報として流通しはじめたこ
ろ、すなわち明治末頃から現代にかけてを対象とすべきであろう。本報告では、消費
文化の隆盛を見た第二次大戦後から90年代前半までを中心に、ローカル文化形成過程
と消費文化の進展との関係をジェンダーの視点を取り入れつつどのように理解を深め
ることができるのか、試論および課題を提示してみたい。

◇<参考文献>
鏡味治也(1999)
  「インドネシアにおける文化の消費−バリの『地方文化』をめぐって」
  (田村克巳編『二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容4 文化の生産』
  ドメス出版 pp.47-64)
八木康幸(1994)
  「ふるさとの太鼓:長崎県における郷土芸能の創出と地域文化のゆくえ」
  『人文地理』46巻6号 pp.23-45
吉見俊哉(1998)「グローバル化のなかの文化と権力」
  (川田順造ほか編『人類の未来と開発』 岩波書店 pp.81-103)








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