名誉毀損・控訴審第3回報告


いよいよ高裁判決です

上杉 聰

 2月27日午前11時から、東京高裁で第3回口頭弁論が開かれました。事前に小林・小学館側から書面提出がなされましたが、これまでの主張を繰り返すのみで、新しい主張はまったくゼロ。完全に行き詰まったことを示していました。これなら今回、早くも裁判長は結審を言い渡すだろうという高橋弁護士さんの予想を聞きつつ法廷に臨みました。

 双方が陳述を行った後、裁判長がいよいよ結審の話をはじめようとしたところ、小学館側の弁護士が立って、次回もう一度入れてほしいとのこと。その理由は、今後単行本で「新ゴー宣55章」を発行する際、著作権裁判の判決紹介を掲載する予定があり、その文面で小林側と調整がついていない、それまで判決を待ってほしい、とのこと。

 裁判長は、「著作権の判決内容を解説しても、それまでの被害が解決するわけでないのですが…まあ少し待ちましょう。では3月いっぱい待ちますから」とのこと。

 いったい何が起こったのか、高橋弁護士にうかがうと、小学館は負けを意識して、今単行本に収録されて発行され続けている第55章に対する誠意ある態度を示すことで、なんとか敗訴を免れようとしている、これは柳美里裁判などでも彼女が改訂版を出したことを裁判所が評価した先例にならおうとしているのでしょう、とのことでした。しかし、すでに小林は文庫本の新ゴー宣には、判決を歪曲して解説文を付けており、その内容をめぐって小学館と対立している様子。

 つまり小林・小学館は、かつて55章を出版しただけでなく、マンガの引用を適法とする判決が確定した今も、"マンガを引用した上杉はドロボー"という書籍の出版を続け、あまつさえ著作権判決を歪曲した文章を文庫本に加えて名誉毀損を継続している(この点は高裁第二回口頭弁論で主張しました)ことは、どうしても言い逃れのできない不当な事実。著作権判決以前はともかくとして、以後の侵害に対して何らかの措置をとることで著作権判決以前の侵害に対する敗訴も免れようとする小学館と、今も歪曲し、嘘をついていることをひたすら読者に隠し通そうとする小林側との対立といってよいでしょう。

 著作権判決後の名誉棄損については、すでに第一回の口頭弁論で裁判長が指摘(本HP参照)したことですが、それ以後も文庫本『新ゴーマニズム宣言』(小学館、2002年9月)で判決を歪曲した解説がなされていることが発覚し、どうも、小林・小学館の不当性は、ことここに至って完全に煮詰まったようです。文庫本の存在は、楽しむ会の皆さんから指摘されたもので、それが事態をもうひとつ突き動かしたようです。

 次の第4回口頭弁論は、4月15日午後3時から824号法廷と決まりました。判決は5月頃でしょうか、楽しみになってまいりました。

 裁判が終わってから、傍聴の皆さんと食事をして後、歴史認識と東アジアの平和フォーラムに参加し、昨日帰宅しました。フォーラムでは私も「日本における『宗教右翼』の台頭と『つくる会』『日本会議』」と題して、韓国・中国60人の研究者を含む方々の前で報告させていただきました。その内容は、今朝のサンデー・プロジェクトで報告されたブッシュ政権を支えるキリスト教原理主義と同じものが日本で起こっており、それが「新しい歴史教科書をつくる会」や「日本会議」であることを、確実な資料などを使って論証するものでした(詳細はhttp://www.h2.dion.ne.jp/~kyokasho参照)。小林よしのり君も彼らに騙されて「つくる会」に参加したのでしたが、藤岡信勝氏に追われて脱会したことで、今は少し反省しているようです。最近の小林君については、またの機会に書きましょう。