「ゴールデンボーイ」所収『刑務所のリタ・ヘイワース』(原題:“Rita Hayworth and Showshank Redemption ”)スティーブン・キング著 訳は浅倉久志氏で新潮文庫
COMMENT:映画「ショーシャンクの空に」をご覧になった後で原作を読むと少し物足りなさを感じるかもしれない。(映画は本当に良かった!可能な方はあわせて見て欲しい。)物語は一人の老受刑者が語るという形式になっている。そのため淡々と展開されていく。しかし、その中に多くの監獄が、受刑者が、あるいは職員が、ひいては外の社会が抱えている問題も浮かび上がってくる。例えば、―小説では「施設慣れ症候群」と称しているが―刑務所に長く入っていればいるほど出ることが怖くなる、という現実を老受刑者は何度か語っている。心身が「指示待ち」に慣れてしまい、逆に社会に適応出来なくなってしまうのである。どこかで聞いたようなエピソードが小説のはしばしで語られている。読後、「人間らしく生きる」「生きる強さ」「自由」とかいった言葉が、―こんな言葉は並べただけではどうということもないが―自分の中で躍動しはじめるという感じである。