2001年監獄人権センター総会報告
2001年5月26日 CPR事務局長 海渡 雄一
海渡事務局長の報告に先立って、菊田幸一副代表が挨拶を行った。
挨拶は、ここをクリック。
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総会で報告する海渡雄一事務局長 |
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- 重点課題の第1は過剰拘禁です。一時5万人を切って推移していた被収容者数が6万人を超えているという事態は危機的です。諸外国を見ても、過剰拘禁は被拘禁者処遇の悪化の諸悪の根源といって過言でないと思います。犯罪件数が取り立てて増えていないのに急激に過剰収容が起きている背景には組織的犯罪対策法などとも関連して、求刑と判決の重罰化があるのではないかとも考えられます。
ともあれ、過剰拘禁の理由を明確にして、過剰収容を防止する政策を提言していくことが必要です。同時に過剰収容によって処遇の劣悪化を招かないように、また職員の過労死寸前といわれる労働条件の改善にも職員の増員などの緊急の取り組みも必要かと考えています(施設の増設には賛成できませんが、職員の人員増は不可避と思われます)。
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- 重点課題の第2は拷問禁止条約の政府報告書に関することです。報告書はまもなく提出される見通しで、近く拷問禁止委員会で審査が行われる予定です。そのカウンターレポートの作成は監獄人権センターの総力を挙げて取り組む必要があると考えています。
このレポートの中では処遇の改善された点(改善の兆しのある点)と、改善の図られていない点の双方を公平に指摘したいと思います。
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- 重点課題の第3は第2と関連しますが、処遇改善の取り組みが進んでいない懲罰と独居拘禁の問題、無期懲役受刑者の長期拘禁の問題、死刑確定者・受刑者の外部交通の問題、実効的な人権救済手段の欠如などの問題を掘り下げていくことです。これからも定期的に独居拘禁の実態について調査して行くつもりです。懲罰に関しても調査を準備中です。
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- これは重点課題ではありませんが、日弁連の勉強会について、CPRとしては、動向を慎重を見守りたいと思います。なお、矯正局は規律秩序や未決についても勉強会を呼びかけてきています。私は、展望がはっきりしないのに次のステップに進むことには反対していますが、日弁連が法務省との話し合いを断ることは困難な状況です。
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- 組織的には、なんとか近い将来に専従職員と事務所をもてるような体制を作りたいと思っています。NPO法人化も考えたいです。会員拡大だけでなく、財団からの補助なども申請してみようと事務局で相談しています。
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- 将来的な課題になりますが、元受刑者の社会復帰に役立つNGO作りがなかなか進まない中で、我々もこのような活動に取り組むことが、今後NGOとして助成を受ける上でも有益なのではないかといった議論も出ています。
監獄人権センター2001年度活動方針
A 重点活動計画
- 現状の過剰拘禁状態の早期改善のために、調査・原因究明、改善勧告に努める。
- 拷問等禁止条約に基づく政府報告書に対して、カウンターレポートを作成する。
- 情報公開法に基づく行政文書の開示請求を通じて、矯正行政に関する情報の集約に努める。また情報公開制度の利用方法をわかりやすく伝える。
- 「所内生活のしおり」「遵守事項」など、被拘禁者の生活をとりまく規則などを調査し、その結果を積極的に公開する。
- 厳正独居および無期刑受刑者の問題を定期的に調査し、必要な改善勧告を行う。
- 死刑確定者の処遇について、調査するとともに、改善を求める。
- 懲罰の問題について、調査するとともに、適正な運用を求める。
- 施設内の医療問題について、改善を求める。
- 刑確定者と弁護士との看守の立ち会いのない面会を求める。刑確定者の外部交通の状況について、調査するとともに、可能な改善策を提案する。
- 文通を通じて、被拘禁者と市民との可能な範囲での交流をめざす「Shake Hands with Prisoners Project(SHPプロジェクト)」の一層の充実を図る。
- 外国人被拘禁者の処遇問題について調査する。
- 個別の被拘禁者からの人権侵害の申し立てを支援し、弁護士を紹介する体制を作る。「受刑者向けマニュアル」の作成、「刑確定者当番弁護士制度」の創設など、一連の弁護士会による被拘禁者の処遇問題への組織的な取り組みに協力する。
- 劣悪な矯正職員の労働条件について、法的な支援も含め必要な提言を行う。「矯正職員の人権教育に関する国連マニュアル」の翻訳と国連からの出版を実現する。
- インターネットによる情報の提供に努める。
- 刑事施設内での人権状況を報告する出版物を作成する。また監獄問題を紹介するビデオなどの視聴覚素材を作成する。
- 国内人権救済機関の創設に際して、刑事拘禁施設などの公的機関による人権侵害を対象とするよう、求めていく。
B 組織作りのための活動
- NPO法人化に向けて準備する。財団や基金からの寄付を申請し、将来的には独立した事務所・事務局機能を確立する。
- 会員の拡大に努力する。財政基盤を確立する。
- 研究者・学生に対しての広報に努め、広くボランティアを募集する。
- 2ヶ月に1回程度の割合でニュースレターを発行する。
- 半年に1回程度「監獄人権セミナー」、年に1回総会及び記念講演会を開催する。