昼夜間独居拘禁に関する質問主意書への政府答弁書

大山 武(監獄人権センター事務局)


表−1 昼夜間独居率が全国平均を超える刑務所
順位施設名昼夜独居者合計受刑者総数昼夜独居率
1城野医療刑務所6317735.59%
2八王子医療刑務所10429535.25%
3姫路少年刑務所4737112.67%
4府中刑務所294253811.58%
5旭川刑務所2523110.82%
6岐阜刑務所6964510.70%
7盛岡少年刑務所4140810.05%
8名古屋刑務所17419408.97%
9沖縄刑務所243237.43%
10宮城刑務所679307.20%
11月形刑務所436316.81%
12松本少年刑務所213376.23%
13札幌刑務所6510736.06%
14京都刑務所8013595.89%
15大阪刑務所12321045.85%
16岡崎医療刑務所132295.68%
17前橋刑務所366605.45%
18広島刑務所5510215.39%
19佐世保刑務所254745.27%
20秋田刑務所163135.11%
21鳥取刑務所193814.99%
調査対象施設全体2036459534.43%
 植田至紀議員(衆議院・社民党)が昨年10月25日に提出した「昼夜間独居に関する質問主意書」に対する内閣の答弁書が、昨年12月26日付で出された。また、補足質問に対する法務省矯正局の回答が今年1月30日になされた。

昼夜間独居拘禁の全国的な実態が初めて明らかに

 今回の答弁書によって、今まで断片的な情報しかなかった昼夜間独居拘禁(そのほとんどはいわゆる「厳正独居」)の全国的な実態が初めて明らかになった。調査に当たる法務省矯正局の負担に配慮し、今回は調査対象を刑務所と少年刑務所の本所(合計67施設)に限定した。質問のメインは、昨年10月1日現在の各施設の受刑者総数と昼夜間独居者数である。昼夜独居者数は昼夜独居の通算期間別に6ヵ月未満、1年未満、3年未満、5年未満、10年未満、10年以上にランク分けした統計を求めた。 その回答から、まずは各施設の昼夜間独居率を監獄人権センターで算出した。調査対象施設の平均昼夜独居率は4.43%であった。この平均を超えるいわば「ワースト刑務所」のデータをまとめたのが表−1である。紙面の都合で掲載できなかったが、比較的大きな刑務所でも岡山、大分、函館少年、静岡、三重、山形の各刑務所など、昼夜間独居率が1%未満(実数にして数人)の「優良刑務所」もあった。

厳正独居の通算期間10年以上が28人
城野医療刑、旭川刑には30年以上が5人も

表−2 昼夜間独居の通算期間が10年を超える受刑者
順位受刑者仮名通算期間執行刑期執行済刑期工場出役歴
1城野医療137年00カ月無期懲役41年08カ月9
2旭川136年07カ月無期懲役07カ月2
3城野医療235年06カ月無期懲役45年00カ月14
4旭川234年11カ月無期懲役39年06カ月4
5城野医療334年09カ月無期懲役34年09カ月0
6大阪127年00カ月無期懲役38年04カ月5
7大阪222年06カ月無期懲役31年07カ月6
8広島122年02カ月無期懲役47年06カ月3
9城野医療421年05カ月無期懲役34年09カ月9
10岐阜120年11カ月無期懲役30年07カ月6
11城野医療520年05カ月無期懲役20年05カ月0
12城野医療620年04カ月無期懲役21年10カ月3
13城野医療719年04カ月無期懲役25年05カ月28
14大阪319年03カ月無期懲役34年01カ月4
15岐阜219年01カ月無期懲役22年06カ月1
16宮城118年11カ月無期懲役23年09カ月1
17岐阜318年10カ月無期懲役29年00カ月5
18大阪417年00カ月無期懲役29年03カ月12
19宮城216年07カ月無期懲役28年09カ月16
20宮城315年02カ月無期懲役17年01カ月2
21岐阜414年05カ月16年02カ月15年03カ月3
22八王子医療114年02カ月無期懲役42年00カ月4
23岐阜513年11カ月無期懲役14年03カ月9
24城野医療812年02カ月無期懲役27年00カ月7
25城野医療911年11カ月無期懲役12年00カ月1
26宮城411年01カ月無期懲役18年00カ月2
27宮城510年04カ月無期懲役24年07カ月8
28城野医療1010年02カ月無期懲役13年04カ月13
 今回の調査で判明した最も驚くべき事実は、厳正独居の通算期間が10年を超える受刑者が28人もおり、30年を超える受刑者が5人もいることである。表−2がその一覧である。特に城野医療刑務所に10人と集中しており、旭川刑、大阪刑でも長期の厳正独居者が目立つ。大阪刑は現在はL級刑務所ではないが、L級刑務所時代の受刑者が残っている(法務省矯正局の説明)。  国際的人権基準からすれば1年以上の独居拘禁ですら問題視されるのに、このような超長期間の厳正独居拘禁が少なくない現状は、驚くべきことであり、直ちに改善に着手すべきである。今回質問主意書を提出した植田至紀議員やCPRからも、この28人に関しては定期的に追跡調査することを法務省矯正局に予告してある。[答弁書の詳細な分析資料あり。希望は事務局まで。]