凶悪重大事件に対し,刑の執行をも含めて適切に対処することは,法秩序維持の観点から極めて重要であることは言うを待たない。
ところで,凶悪重大事件を犯して無期懲役刑に処せられた者の仮出獄の運用状況を見ると,昭和40年代及び同50年代においては,その大半が行刑施設内受刑期間18年以内で仮出獄されていたところ,近時,同期間が長期化しつつあるものの,依然として,有期懲役刑の最長期である20年を下回る者が相当数を占めており,また,仮出獄中に再び重大事件を犯す等の事例も散見されるなどの実情が認められ,かような行刑実情に対する国民の関心も高くなりつつあるように思われる。
もとより,同じ無期懲役刑の判決を受けた者でも個々の事件ごとにその犯情には大きな違いがあり,比較的早期に仮出獄が許されてしかるべき者がいる反面,終身又はそれに近い期間の服役が相当と認められる者もいると考えられ,犯情に即した適正な刑の執行が行われるべきである。そして,そのためには,検察官としても,無期懲役刑受刑者の中でも,特に犯情等が悪質な者については,従来の慣行等にとらわれることなく,相当長期間にわたり服役させることに意を用いた権限行使等をすべきであるので,これらの者に対する刑の執行指揮をより適正に行い,また,仮出獄審査に関する刑務所長・地方更生保護委員会からの意見の照会(以下,「求意見」という。)に対する意見は,より適切で,説得力のあるものとする必要がある。
このような観点から,今後,下記1記載の対象者に対して刑の執行を指揮し,求意見に対する意見を作成するに当たっては,下記のとおり行うこととしたので,その運用に遺憾のないようにされたい。
なお,刑の執行は,観念的には,判決の確定と同時に開始されるものであることから,その執行指揮は,確定後,可及的速やかに行われなければならないこと,また,求意見に対する意見の作成は,判決後相当期間経過の後になされるため,担当検事がその時点で問題意識を持ち,しかも関係資料を容易に参照してこれに臨み得るように配意しておく必要があるので,各庁においては,本通達に基づく事務処理方法及び記録の保管等について,特段の配慮・工夫を願いたい。
記
(以下不開示)