これは、はなはだしい暴挙である。今回の執行は、中村法務大臣があえて記者会見まで行い明言した国連規約人権委員会の勧告をすべてないがしろにするため、そして国会での非難を避けようと休会中を選んで死刑執行をしたものである。さらに本日は米クリントン大統領の来日日にあたり、マスコミの対応がそちらに集中することを狙ってなされたきわめて恣意的・政治的な執行である。
国連規約人権委員会が去る10月28・29日の両日開かれ、日本の人権遵守状況に関して審議し、11月5日に最終所見を採択した。(1)人権の保護や人権の基準が世論調査によって決定されることのないよう強調する。義務違反を行っている締約国の姿勢を正当化するために世論調査結果を繰り返し使用することには懸念を有する。(2)(自由権)規約の文言は死刑の廃止を指向している、と極めて強い論調で現状の日本政府の死刑制度・死刑執行の在り方について勧告している。この勧告に、中村法相は11月10日の定例記者会見において、「死刑の執行は国内問題だ」との見解を表明、公然と勧告を無視することを表明した。
死刑廃止を求める議員連盟は11月16日、中村法務大臣を訪問、死刑執行をしないよう直接申し入れた。この席で法相は「執行しないようにするためには、国会で議論し決めてくれ」と、議論の必要性を強調した。国会では5月の衆議院で「死刑問題の実質上の集中審議」が行われ、参議院においても同様の議論がなされようとしていた。
中村法相は、国会ではじまった死刑をめぐる議論をまったく無視し、執行を命じたと言わざるを得ない。
世界の過半数の国と地域が死刑を廃止しており、死刑廃止は世界の潮流である。政府が唯一のよりどころとしている国内世論にあっても条件付き死刑廃止の意見を含めると、すでに死刑廃止の意見は死刑存置の意見を凌駕している。このような状況下で、年二回、一度に複数の執行の維持と、執行命令を出さない法務大臣を作らないことを目的とした死刑執行は、不当で異常な行為である。
私たちは、法務大臣ならびに法務省及び内閣に対し、
私たちは、すべての人々にとりわけ政治家及び専門家に対し、死刑存置及び廃止の立場を超えて、国民的合意の形成を目指し、広く議論を尽くすことを呼びかける。