2002年2月2日午前11時30分〜午前12時15分
コスタリカ国サンホセ:ホテルバラモラールにて
<カレン・オルセン女史の挨拶>
みなさんに会えて光栄である。平和は、単に戦争がないことではなく、決意のある行動である。1948年に平和文化創造のために1人の将軍が平和創造の道を歩んだ。それがホセ・フィゲーレス元大統領その人である。また、明日の選挙のシステムの確立も、私の夫が取った一つの大きな選択でもあった。軍隊廃止の目的の一つは、選挙システムの確立だった。当時、他のラテンアメリカ諸国では、選挙システムが確立されていた国はほとんどなかった。選挙制度は法律により定められた。1948年の内紛によって、軍備が全く不要であるとの結論に達した。選挙制度確立・向上は、制度そのものの向上を目指していただけでなく、教育や福祉の向上をも目的としていた。
1949年、新たな体制のもとで、公的サービス機関による施策の具体化がはじまった。そして同年、選挙管理裁判所も設立され、コスタリカは、特に、ラテンアメリカの国々に対して、国の運営のあり方のモデルを示した。コスタリカが公的サービスを開始するにあたっては、市民の考え方を基本にした。市民たち、特に、数の多い農民のニーズに沿って考えていった。そして、国の根本であるところの教育の必要性を認識した。そして、このころ、女性に対する視点の転換がなされた。例えば、参政権の付与がなされ、人々の女性に対する味方も変わった。そして、女性は、男の子が産まれた時に、その子どもが軍隊に行かなくてもいいという喜びも感じられるようになった。女性が参政権を獲得した課程で、女性の家庭や地域社会、政治への参加についての社会変革も起こった。女性についての意識変革は、精神の昇華に帰結し、女性の人権の尊重や教育の重要性等という概念の確立となった。
また、女性の政治参加については、憲法・選挙法によって、議員の最低40%以上が女性と定められている。男性が議員になるのは難しくなっているくらいの状況である。議員になるという課程で、男性と女性は平等には競争できないのであるから、社会建設への参加の道を女性にも開くために、このような方策が取られた。
政治家は、なぜ、何のために、政治に参加するのかを明確にしていく必要がある。政治家になる人は、責任感が必要である。これはとりもなおさず市民の責任感でもある。政治家は地位のため、経済的な恩恵のためにあるのではなく、国民にサービスを提供するために存在する。政治家の責任は、世界中で意識されるべきと言われているが、コスタリカでは比較的よく根付いていると思う。
女性について特に強調したい。女性は子どもを持てるというすばらしい可能性を持っている。また、その精神性から、国民に尽くすという心を持ちやすい。男性に対しても、生命の尊厳を教えることができる。女性の社会参画は、社会のバランスのためにも必要である。女性の社会参画の運動は精神的運動を含む。この運動は、熱情的な平和を獲得しようという精神の活動であり、人権や平和にも関連する。
最後に、今回の、私は、皆様から学びたいことが多くある。日本が、平和を勝ち取ってきた技術を学びたい。また、子ども達、老人に対する配慮を学びたい。人間性、生命の尊厳を感じ、これを大切である子ども達に伝えていくことが需要である。私の知人のユダヤ人がいる。そして彼と話をして、夢を持つことが重要であるという結論になった。この「夢」とは、義務として持つものではなく、自分自身がそして他人が幸せになりたいという情熱である。その夢を持ち続け、忘れないことが大切である。皆様とともに夢を実現するようにして行きたい。
<同行者:ラファエル博士の挨拶>
27年前にスペインからコスタリカに来て、大学で教鞭を取っている。平和の促進が、法律家の権利、義務であると考え、これが正しく行われなくてはならないと実感している。
[以下:質疑応答]
<質問>
平和とは貧富の差が少ないことであると考えている。サンホセを散歩をしたところ、ここにもかなりホームレスの人たちがいて、家を持つことができない人がいるとわかった。軍備にまわすお金を福祉に回すので、そのようなことがないと思っていたのだが、どうしてこのようなことが起こるのであろうか。また、失業率についても教えて欲しい。
<質問>
女性の職場への進出の状況、賃金差別などについて教えてほしい。
<答>
確かに、ホームレスの人たちがサンホセにも多数存在する。但し、私たちは、明日の選挙で勝って、変化を起こしたい。国民の3分の1がニカラグア人などの移民であり、貧困層を構成している。しかし、コスタリカは、中米の中で突出して、ホームレスの人たちに住居等を与えるという最大限の努力で結果を出してきたと思っている。
また、コスタリカの主要産業であるコーヒーの価格が世界的に下がってきている。ベトナムでのコーヒー農園労働者に対する搾取が原因である。そして、コーヒーのみならず、コスタリカのバナナ、コーヒーなどの価格は不平等であり、先進諸国がこの値段を決めてしまっている。今回、私たちが政権をとって、これらの産品の価格の決め方を変えていきたいと思っている。9月11日のテロで、世界中の人たちが、世界のあり方について再度高慮しようという雰囲気が出てきた。法律家、政治家を通じて、権力を人々に取り戻すという運動を行っていきたい。
<質問>
ホセ・フィゲーレス大統領が武装蜂起をして権力を取りながら、武装解除をしたのはどうしてか。
<答>
夫は、兵力によって、軍隊廃止、選挙制度獲得を行ったのは確かである。しかし、その当時の政府は、新しい憲法を作る直前に、民衆による真の選挙の道を閉ざした。例えば、投票箱を閉じるとか、投票用紙を見せろといったりした。夫やその他選挙への道を閉ざされた農民達が、政府に対して反対運動を起こした。そして、夫は、ラジオを通じて、自らの考えを述べ、自らの運動を起こしていったが、結局、メキシコでの2年間亡命を余儀なくされた。この運動に参加したのは、女性や、農民達であった。女性は、黒い服を着てデモで行進をした。農民もデモ行進をした。しかし、それでも、政府による正当な選挙がおこなれる兆しが全くなかったので、これがゆえに、夫が中心となって、最終手段として武装蜂起したのである。
夫には、憲法制定のために18か月間の考慮期間があったけれど、その中で、様々な人が、夫に対して軍隊が必要だと言った。しかし、夫は、これを拒絶した。この中で強調されるべきは、農民達、市民達がこの武装蜂起の中心にいたということである。
<質問>
軍備の廃止の心理はどのようなものか。
<答>
女性達が子どもを産む時に、軍隊に取られなくてうれしいというのは、全地球の母の共通の願いであるはず。平和を求める女性の願いを全面に出していきたい。
軍隊の廃止と選挙制度の確立を結びつけた理由の一つは、国家の予算を軍備のために使用することは価値のないものにお金を使うことになるからである。価値のあるもの、例えば、音楽、文化などにお金を使う方がよいというのは万人の思いのはずである。軍隊を持ち続けていたのならば、言論の自由は阻害されただろうし、政府不信も増したであろう。プラスの価値でマイナスの価値を凌駕しなくてはならない。誰もが願っていたけれども、誰も達成できなかったことを、コスタリカは真に達成したのである。
しかし、コスタリカも、国家として攻撃を受けたことがある。この時、農民は農具で、他の人はその他の行動でこの国家侵略に対して立ち向かった。この愛国心に基づく自衛は、何よりも価値のある行動だった。負の価値に対しては、人権や平和というプラスの価値で対抗すべきである。
どんな女性も戦争を起こそうと思わない。戦争を起こすのは男性である。平和の実現のために、女性が参加する政治が必要である。私たちは、武器を持たないが闘士である。平和は戦い取るものである。不断の戦いだけが、真の平和をもたらす。私が以上に述べた考え方は、考え方としてはシンプルだが、実現は本当にむずかしい。みなさんと、実現の道を歩んでいきたい。