平和と民主主義を大切にする人々の国、コスタリカを訪ねて

市民H

 コスタリカという国に強く興味を引かれたのは10年近く前にもなろうか。地球環境問題の研究会で知った、オスカー・アリアス氏が大統領時代にIUCN総会の歓迎演説で述べた中身によってであった。軍隊を持たない国、自然環境を保全する国、世界のやみくもな経済成長競争に参加するより国民の最低限のニーヅを満たすことを重視するという政治理念が、日本の社会がそうあって欲しいと長年望みつづけていたこととほぼぴったり一致していたからである。

 今年、年賀状にマーティン・ルーサー・キング師とマハトマ・ガンジーのメッセージを書いた。9・11以降、アメリカの報復戦争、世界を武力が支配するようになるのを恐れたからである。戦争は、どんなに正義の名目をかざそうと、絶対にしてはならない。戦争は罪のない人々の命を奪い、傷つけ、飢えさせ、狂気にさせ、悲嘆にくれる多くの人を生み出す、国家の行為としてこれ以上のない大罪であることは少し冷静に考えればだれもが納得できることである。死刑制度をなくすこともアムネスティ・インタナショナルを通して訴えつづけている。これも国家権力による殺人だからである。国家が戦争を放棄し、死刑制度を廃止すれば、その国の人々は罪の貴さを大切にするようになるだろう。

 コスタリカでヴァルガスさん、カレンさん、モンヘさんなど要人に会って話を聞くことができたことに感謝している。ヴァルガスさんが子どもたちの教育について「すべての教科で対話を通じて理解を深めることを重視している」と話されたことに民主主義を定着、発展させようとする意欲を実感させられた。カレンさんの「平和は戦争のない状態ではない、平和を維持しようとする決意を持った行動である。武器を持たない闘いである」との言葉は、予想はしていたが、いちばん聞きたい言葉を聞くことができた思いである。「幸せになりたい、人を幸せにしたいという思いを強く持ちつづけることが大事」と女性の役割に関連づけて話されたが、女性に限った話ではない、身近なところから地球規模まで「共に生きる」人々が持つべき考えだと思って聞いた。非武装永世中立宣言をした元大統領モンヘさんが「コスタリカは貧しい国だ。教育で発展するか軍隊を持つか、私たちは教育と発展を選んだ」と言われた言葉は世界の国家指導者が学ぶべき言葉だ。ヴァルガスさんが中米での和平への努力を紹介しながら、日本もアジアでそういう道を選んではどうでしょうと提案されたことも重く受け止めた言葉であった。

 日本で言う三権分立のほかにこれらから独立した選挙最高裁判所が第四の権力として存在する制度は新鮮であった。同時に、民主主義を教育の場で重視していることと併せて民主主義を重層的に追求しようとしている証左だなと感心したことであった。

 1986年、国連が国際平和年を設定したのはコスタリカの発案によるものであったこと、アリアス元大統領が「テロ活動防止のための国際組織設立を検討しよう」と先見性のある提案をしていることなど読書で得ていた情報に、現地を訪問して見聞したことが合わさって実りの多い旅であった。

 それにしても、労働者の平均月収が日本円にして3万5千円から4万円程度。子どもが街で物売りに立つ姿は痛々しい。カレンさんは私の質問に「コーヒー、バナナなどの国際価格は不当に低い。これからおおいに議論して行きたい」と答えられた。貧困の中で内戦に明け暮れる国がある中で、コスタリカこそが南北問題と言われる貿易の不公正を克服する先頭に立って豊かに発展して行ける国であってほしいと望んで止まない。遠くない将来もう一度ゆっくりと訪ねていろいろな人を話をしてみたいと思っている。


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