会報・第6号(2004.11.12発行)

<目 次>

合宿報告
  上村雄彦さん講演概要
  伊藤千尋さん講演概要
  合宿の感想(1)
  合宿の感想(2)
「イラク戦争支持は違憲」とコスタリカ最高裁憲法法廷が決定
同上の決定通知書(スペイン語)


〜新年会のお知らせ〜

 来年1月23日午後6時から、日本料理・コスタリカ料理の店「二葉」にて、新年会を行ないます。同店にて、竹村卓教授による「最新コスタリカ情報」(イラク戦争支持違憲判決、前大統領の汚職事件の真相など)の講演があります! 皆さん、ぜひご参加ください。
<「二葉」連絡先>
TEL:03−3731−5846
「京急蒲田駅」より徒歩10分

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コスタリカ平和の会 恒例! 夏合宿のご報告


 コスタリカ平和の会の恒例となっている夏合宿を下記の要領で行ないました。参加者19名で楽しく学習をしてきました。講師をしていただいた上村雄彦さん、伊藤千尋さん、コスタリカやその他の中南米の国の様子について詳しくお話になり、興味深かったです。この場をお借りして御礼申し上げます。

<合宿概要>
日時:2004年9月4日(土)午後2時〜9月5日(日)正午
場所:箱根湯本「箱根湯本ホテル」

<スケジュール>
(1) 初日
合宿概要説明・自己紹介 14時00分−14時30分
上村雄彦さん講演    14時30分−16時30分
休憩          16時30分−17時30分
夕食          17時30分−
懇親会         20時00分−

(2) 2日目
朝食          07時00分−
伊藤千尋さん講演    09時00分−11時00分
これからの会・意見交換 11時00分−12時00分

また、来年も企画したいと考えております。ぜひ、みなさまもご参加くださいませ。

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上村雄彦さん講演

「もうひとつの平和は可能か? コスタリカから日本へのメッセージ」

報告者:福井基夫

 今年2月から3月にかけてコスタリカとキューバを訪問された上村雄彦さんから「日本はコスタリカから何を学ぶべきか」について講演と問題提起をいただきました。」

1.なぜコスタリカを訪問したか」
 現在CSR研究所(CSR:Corporate Social Responsibility)で企業の社会的責任について研究を進めているが、地球上の環境破壊や人権侵害、食料不足等の発生根本原因が先進国や、多国籍企業の利益追求により引き起こされている。これらの問題を解決するにはこれからの企業行動が抜本的に変わることで貧富の差、地域紛争などが収まるのでないかと考える。
 20世紀では第一次大戦で約1000万人、第二次大戦で4〜5000万人の犠牲者を出した。また、現在、世界で武器生産に約100兆円の軍事費が費やされている。これだけあればあらゆることが出来ると思う。武力がすべてでない。新しい平和のあり方を探りたいと思いコスタリカ、キューバを訪問した。

2.コスタリカでの検証」
●本当に軍隊が無いのか。−>憲法上では恒久制度の軍隊は無い。
●何故軍隊を廃止できたのか。−>スペインから入植以来もともと民主主義の伝統を持っていたが1948年の内戦を通じ1949年に常設軍隊が廃止され、軍事費を教育、医療、福祉政策に向けたことで軍隊が無くても当たり前という平和的な国民性が定着した。
●なぜ軍隊なしでやっていけるのか。−>米州相互援助条約(リオ条約)、米州集団安全保障機構(OAS)等により国連を中心に積極的な平和外交を推進。
●コスタリカの経験を他の国は応用できるのか。
日本の状況−>自衛隊はあって当たり前、北朝鮮問題、有事立法等・・憲法9条で軍隊をなくしたメリットは薄れてきている。アジアにおける地域安全保障体制はなく、日米安全保障体制に依存した積極的アメリカ追随外交で「平和憲法よりも自衛隊派遣を」の空気が強い。日本はアメリカに従属したままで自立出来ていない。(食料自給率約26%エネルギーは約6%等々)これからの日本は国際社会に向け地域ごとに行政や企業、NGOが手を取り合って自立して行かなければならない。現在、活動の一環としてJJプロジェクト(日本自立プロジェクト)10・7ピース・ルネッサンスの立ち上げ活動に取り組んでいる。新しい平和運動や既存の平和運動に携わるさまざまな団体(環境、福祉、人権、平和・・・)が集う場(地球平和公共ネットワーク)を作り日本の自立活動を推進したい。平和大綱(ピース・マニュフェスト)をつくり、平和省を創設。国際的な紛争地での仲裁や調停に活躍できる人材を育成し、より平和的手段(自衛隊を国際災害救助隊や植林救助隊に改組)で参加、憲法9条を海外に輸出し世界に平和を発信できる自立日本を目指したい。

●コスタリカの小学校(8歳から11歳までの)での質問
・コスタリカのこと好きですか? −> 好き。
・何故ですか? −> 平和、自然、川
・日本のこと知っていますか? −> 知らなかった。武道のことは知っていた。
・大きくなったら何になりたいですか? −> 医者、先生、弁護士・・
・尊敬している人は誰ですか? −> お母さんが多かった。
・幸せな人は? −> 幸せかとても幸せな人が多い。
・幸せとは何ですか? −> 「アモール」(愛) 
・一番貧しくて危険なところ −> ラカルピオ。(ニカラグア人が多い地域)
3.質疑討論
・コスタリカは小国だが、理性的、敏感に国際社会を見ている。自国の強みと弱みをわきまえ平和外交を積極的に強調している。
・平和教育というものはない、学校や家庭内教育で習ったことを実践できるよう教育している。人間は違っていていいんだという人権感覚を育てている。国と国とでも同じことが言える。民主主義につながっていく。対等、平等な人が集まり物事を決めていく。日本に活かそうと思っているが日本の教師が変わらないといけない。
・コスタリカでは選挙の大切さを教えている。日本でも2〜3年かけて市民の意識を変えていくために大同団結すべき。
・大学入試、入社試験などでのチェックポイントでの重点の置き方をかえる必要がある。
・平和の大切さについての宣伝が必要で、その為にはマスコミの果たす役割が大きい。政府とは見方の違う報道や平和に関する全部の情報が集約されているピースポータルサイト的な市民メディアを作る必要がある。

コスタリカの経験を日本に生かす為お互いにもっとやれることがあるはずだ。

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伊藤千尋さん講演

報告者:野村修身

 講演の中で最も印象が強かった言葉は「決してコスタリカをそのまままねすることは出来ないが、良いところはまねる必要がある」です。ややもすると、コスタリカをあたかも理想郷と見誤る傾向が出てくることがないでしょうか。
 コスタリカは参考にする対象であり、日本に丸写しにすることは出来ないのは、きわめて当然のことなのであり、私たちの活動を進めるにあたり、常に反省し続ける必要があると思います。

 伊藤さんが講演の最初に示されたことですが、コスタリカの現体制が出来上がった原因や背景を簡単にまとめておきます。

●スペインからここに入植した人々は、主にカタルーニャ地方の人々であり、貧しい生活をしていた人が多く、勤勉実直な気質を持って征服欲は少なく、共同生活を基本とし自由な気風があった。

●当地の先住民は戦闘能力が旺盛であったが、一方、入植して来た人々は、上記の理由により、戦争を起こして支配する考えが乏しかったので、自然と先住民と住み分けをすることに落ち着いていった。

●しばらくして中米連邦という国家体制に組み込まれることになったが、中央政府はグァテマラに置かれていたため、政治的地理的に遠くて僻地といえる状態となり、中央政府の影響はかなり小さかった。そのために、入植者たちは自由に独自性を発揮することが出来た。

●以上の理由により、資産は少なくても、誰もが自家栽培農園を持って富を蓄積していったため、大農園の発生がほとんどなく、貧富の差が極めて少なかった。

 細かいことあげればきりがありませんが、主に以上の理由により、現コスタリカの基本が出来上がったようです。つまり、自分のことは自分で解決する気風が出来上がっていったと言えるようです。言い換えれば、自分のことは自分の責任で解決しなければどうしようもない、そのためには、まず自分で方策を考えること、さらに、自分の能力にはどうしても限界があるので、他人の力を借りること、そのためには話し合いが絶対に必要であること。以上の考えが生活の基本として、根つかせることの重要性を徹底的に認識し、教育の基本となっています。何も、コスタリカの教育は進んでいるわけではありません。

 アリアス氏が大統領の時代に、周辺国の内戦を終わらせることに大きな貢献をしたことで、ノーベル平和賞を受けたのですが、アリアス氏が述懐するには、何も自分が特別な秘策を編み出したわけではない、子供の時に学校で習ったことを実践しただけと言うのです。この言葉は、コスタリカの教育の原点をはっきりと示しているでしょう。

 コスタリカは小国です。人口は400万人程度しかありません。近くのメキシコでもコスタリカから見たら大国です。いわんや同じアメリカ大陸には、アメリカ合衆国という世界一の超大国があります。このようの悪条件の中で、独立国として独自路線をつらぬくのは並大抵でないことは容易に想像できます。その中で他国との関係を維持していくには、あらゆる外交的な手段を駆使して切り盛りして行くほかはありません。言い換えれば「外交大国」となることが、コスタリカ独自性を維持する絶対条件なのです。日本がまねすることが必要な項目と思います。

 コスタリカには近代社会が必要とされる地下資源がほとんどありません。超大国の侵略がそれほど強力で無かったのは、この自然条件が要因の一つでしょう。この自然条件は日本と共通しています。日本はコスタリカよりも人口が多く、地理的にも超大国より切り離されています。日本では、非武装国家となる条件はコスタリカよりそろっています。コスタリカですら非武装国家が実現できたのです。日本が出来ないはずはありません。

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合宿感想

天野佑香

 PARMANの活動を通じてコスタリカに関わるようになり早2年が経ちますが、まだまだ新しい見方や考え方、様々な方々との出会いを与えてくれていると感じます。今回の合宿もまたその一つといえます。
 上村さんのお話しの冒頭に、上村さんの経験や考えの変化などをお話しされましたが、共感する部分が多くありました。私が経済学を選考した理由は、世の中のあらゆる物事を動かすお金について知りたいと思ったからです。人々は生きていくためにお金を必要とします。そうした人々の集まりである企業も利潤を追求します。それは当然のことです。しかし、企業の利潤追求が必ずしも企業の社会的責任と矛盾するとは思いません。私の専門である環境経済学の考えにも共通しますが、企業の社会的責任の放棄は世論やがては売上の低下という形で跳ね返ります。長期的な利益を考えるのなら、企業は社会的責任を積極的に果していかざるをえません。私たちに必要なのは、社会的責任を果す企業が最も利益を受けるような社会の構築であろうと思います。
 また、伊藤さんのお話しや植村さんの話の中で何度か出てきた教育問題に関しても印象に残っています。私は、神戸の児童殺傷事件の加害者と同じ年代であり問題児の多い中学校にいた経験からか、教育という問題には強い関心があります。最も重視したいのは“そもそも問題はなんなのか?”ということです。子供たちが幸せに生きるための教育になっているのかどうか、それが全てです。今現在の小学校時代の友達を見るとそれぞれの道で頑張っていると思いますが、小中学校では一元的な評価であった印象を受けます。社会に出て評価されるのは、人柄であったり発想力であったり遂行能力であったりするわけです。ならば、教育の場もその力を育てる場であるべきでしょう。“テストの点数”を過剰に重視する理由はどこにもないにも関わらず、一元的な評価がされる事実は無意味としか思えません。
 様々な方のお考えに触れて考えることが出来て、勉強になることの多い合宿になったと思います。

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合宿に参加して

塚本純子

 定例会には参加したいと思いつつ、なかなか参加できないジレンマがあったためとても楽しみでした。一番興味深かったことは伊藤千尋さんのコスタリカエンドレス報告です。6月19日の講演が大変面白かったからです。ただ一番印象に残ったのは、ついでに話していただいたベトナムの話です。
 最近、平和というものは単純に人の心が決めるのではないか、と思い始めたからです。身近な平和活動は「平和っていいな」「平和とは戦争さえなければよいのか・・」等と考えること、それから始まるのではないかと思っているからです。
 ひとりひとりの平和への思いは小さなものかもしれないけれど集まれば力になる、世界は変わっていくと信じてます。
 1円は1枚では消費税も払えない。けれども1万枚集まれば1万円の価値となる。1円なれど大切にという事を平和にたとえると飛躍になるかもしれないけれど、シンプルに考えても良いのではという思いが強まりました。ベトナムのある橋はどうしても陥落しなかった。ベトナム人のどうしても守るという意志が強かったのではないでしょうか。
 本題に話は戻しますが、コスタリカの話では教育に対する考え方、積極的平和による隣国の平和への貢献が印象的でした。私達も隣国の東アジアの友好関係をさらに親密にできないでしょうか。これらの問題について私達にできることを次回合宿では議論できるとよいのではと感じました。
 また、上村雄彦さんのコスタリカ・キューバ報告では、平和省の設立の話が印象的でした。現実を考えると実現は厳しそうですが、必要なものは自然と賛同者が増えると信じて、コスタリカ平和の会で取組めればと思いました。
 しかし、この合宿で得た一番大切なことは平和のことを日頃から考えている参加者の皆様とたっぷりお話でき親しくなれたことです。あせらず、あきらめず質の高い平和をめざして日々をすごしていきたいと思います。
 最後になりましたが、子どものことを配慮してくださった浦田さん、遊んでくださった夏子さんありがとうございました。充実した合宿が送れたのは、なにをおいてもお二人のおかげです。
 また快く我が親子を受け入れてくださった皆様ありがとうございました。そして出張後何も言わず息子を迎えに来てくれた主人にも、この場をかりてありがとう!

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「イラク戦争支持は違憲」 とコスタリカ最高裁憲法法廷が決定!

 軍隊を捨てた国コスタリカで、イラク侵攻についてアメリカを支持したコスタリカ政府の行為を違憲とする判決が、9月8日コスタリカ最高裁憲法法廷で出されました。日本でもイラク派遣が違憲であると訴えた裁判が起こされていますが、たいへん参考になる判決です。以下、これを報じる新聞記事の抜粋です。

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【朝日新聞 9月11日】米国に「有志連合」からの国名削除要求へ コスタリカ
 中米コスタリカ政府は9日、米政府に「有志連合」リストから国名を削除するよう求める方針を明らかにした。イラク侵攻について米国を支持したコスタリカ政府の行為を違憲とする8日の最高裁憲法法廷の判決を受けたものだ。
AP通信によると、トバル外相は「9日中に米国に国名削除を求める外交文書を送る」と明言。パチェコ大統領も「憲法法廷の判決に従う」と述べた。
同国の規定によると、憲法法廷の判決は即時発効し、過去にさかのぼるため、国名削除とともにコスタリカの「米国支持」という事実はなかったことになる。

【毎日新聞 9月12日】「イラク戦争支持は違憲」、最高裁が決定 「有志連合」脱退、米に要請
 コスタリカ最高裁の憲法法廷は8日、米英など多国籍軍によるイラク戦争を政府が支持するのは、常備軍を禁じ戦争を放棄する同国の49年憲法に違反するとの決定を7判事の全会一致で下した。これを受け、同国のトバル外相は9日、米政府に対し、現在49カ国で構成される「有志連合」からコスタリカを外すよう要請した。
 コスタリカのパチェコ大統領とトバル外相は、イラク戦争開戦直前の昨年3月19日、「対テロ戦争の連合を支持する」との文書に署名し米国が率いる有志連合に加わった。直後、同国の護民官や弁護士団体が「コスタリカによる軍事行動支持は違憲で、イラク攻撃は国連安保理の承認も得ていない」と非難し、政府に撤回を求めた。
 護民官らの告発状によると、パチェコ政権は「連合参加は道義的なもので軍事支援ではない」「米国などテロ被害国の戦いは我が国の平和主義と矛盾しない」と解釈し、撤回を拒否してきた。米側も「我々はコスタリカの平和主義を尊重し、軍事支援は求めない」と表明してきた。

【日経新聞 9月10日】コスタリカ、「イラク戦争有志連合」の削除を米に要請
 コスタリカのトバル外相は9日、イラク戦争を支持する「有志連合」のリストから自国を削除するよう米政府に外交文書で要請したことを明らかにした。最高裁判所が8日、政府がイラク戦争支持を表明したことは、軍事行動への参画を禁じた憲法に違反するとの判決を下したことを受けた措置。
 コスタリカは1949年、憲法で軍隊の保有を禁じており「永世的な非武装中立」を宣言している。しかし、パチェコ大統領は昨年3月、イラク戦争開戦に向け、米国政府を支持する姿勢を表明。その後、コスタリカ大学の学生が「違憲」として裁判所に訴えたことを皮切りに、国内で政府に対する反発が高まっていた。

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