2005年度総会&講演会
日時:2005年9月19日(土)午後1時〜5時
場所:東京都千代田区・明治大学研究棟2階第9会議室
<内容>
・講演「コスタリカ人から見た日本」
・報告「コスタリカの現状」
・活動報告と活動計画
なかなか終わらない残暑の中で行われた2005年度の総会&講演会。下に掲載している写真は終了後の記念写真。最前列中央は「コスタリカ人から見た日本」を講演されたジゼルさん。在日22年。コスタリカ生まれで、日本人の男性と結婚し、4人の息子と共に暮らしている。ジゼルさんに向かって左側は共同代表の一人の伊藤千尋さん、右側はもう一人の共同代表の藤原真由美さん。最前列の向かって右端は事務局長の大山勇一さん。二列目向かって左から3人目は「コスタリカの現状報告」をされた、竹村卓さん。
<ジゼルさんのお話(抜粋)>
- 日本は21世紀的な技術を持つたった1つの国として認識していた。新幹線、マンションなど。貧乏人がいない。みんなで同じお風呂にはいるのはおどろいた。
- 私の母親は日本人と結婚するのに反対だった。日本人は神様を信じないから、腹切りや神風など、いのちを大切にしないと。
- 食べるときはちゃぶ台でクッション(注:畳のこと)に座る。ちゃぶ台をしまって布団を弾いて寝る。母親に「床で食べて床で寝る」という手紙を書いたら、「そんな生活をせずに早く帰ってきなさい」。
- 一番辛かったのは靴を脱ぐこと。頭から足先までをワンセットと思っていたので、靴を脱いだ瞬間におしゃれがだいなしになってしまう。
- 友達から、子育ての間はおしゃれをするものでないと言われた。そのかっこうのままでコスタリカに帰ったら、母親は「あなた、そんな苦労しているの。早く帰ってきなさい」。
- 日本では「子どもは愛の結晶」というすばらしい言葉に感動した。コスタリカでは神様からの贈り物と言うのに。
- 子どもの通学校を親が決められないのか、どうしても納得できなかった。子どもが「先生が怖い」と言ったので、校長先生にクラス替えをお願いしたが、聴き入られなかった。先生と子どもには相性があるのに。コスタリカでは、バスで一時間の学校でも親が選べる。また、先生は自分の希望地の学校で仕事ができる。そのため、先生もいい先生になるように努力するようになる。
- 日本では、教育委員会やPTAなどで、先生が縛り付けられている。コスタリカでは学校運営する役所が無く、校長先生の責任でいろいろやっている。
- 日本では、親たちの懇談会では様々な意見が出るが、懇談会の後で先生に何も言わない。これでは、先生が何の計画もたてることが出来ないのではないか。自分は先生に率直に意見を言ったら、他の人たちが、「あなた、すごい。よく言えましたね」。
- 人前ではキスをしたり抱き合ったりすることは禁じているのに、ポルノ雑誌は氾濫していて、子どもの前で平気で見ている。コスタリカでは、ポルノは子どもから隔離している。そのかわり、コスタリカの夫婦は子どもの前でもキスをしているし、子供がどこから生まれるかを教えている。
- コスタリカには、子どもに個室を使わせても、部屋に鍵をかけるようなことはしない。子どもがどのような本を読んでいるか、どのようなテレビを見ているかなど、子どもの世界を親がきちんと把握している。日本では、親が子どものことを知らな過ぎると思う。
- 日本では、家族で過ごす時間が少なすぎると思う。コスタリカでは、すべての食事は家族一緒が普通。日常生活で会話が多い。テレビも家族で一緒に見て、番組を見ながら会話をする。父親は息子が15歳になるのを楽しみしている。これはスペインからの習慣である。
- 日本では、男の子は父親を嫌っている。いつも勉強しろと言うから。それなのに、子どもが何か言うと父親は「何も知らないくせに」といって意見を聞かない。子どもと父親が会話をしないのが、とてもショックだった。日本では、母親と一緒だとマザコン、父親と一緒にいるとダサイと言われる。
- 子どもからはスパルタ教育と言われている。例えば、子どもの門限が決められている。また、お尻までズボンをおろしてはくことがはやったが、父親は許さなかった。子どもたちは、大学生になって、父親のことをある程度は理解できるようになった。また、父親に面と向かっては言わないが、子ども4人の面倒を見るというのはすごいことだと言っている。
- 政治については誰も何も言わない。友人だけでなく、夫ですらもだれを支持しているのかは分からない。コスタリカでは政治が日常生活になっており、子どもでも政治の話をし、選挙には積極的に参加する。例えば、子どもたちが投票所に案内する。一般の人でも、支持する政党に投票してもらうため、投票所に案内するなど、選挙のために働いている。
- 平和のためには、まず会話をする必要がある。紛争を解決するためには、まずは「どうして争う必要があるか」を話し合えば良い。
- 日本では、人がどれくらい居てどこに住んでいるかをほぼ完全に把握している。コスタリカではそうではない。例えば、私が日本に住んでいるにもかかわらず、コスタリカの選挙に参加することは問題なく出来る。また、コスタリカ大使館は日本にいるコスタリカ人を把握していないだろう。
- 日本の情報を共有するシステムはすばらしい。回覧板とか公民館の使い方とか。コスタリカでは雪が降っても誰も雪かきをしないのは、自分に関係ないから。日本だと、すぐにみんなで雪かきをする。夫に尋ねたら、「みんな自分でやっているんだ。みんなで決めてやっているんじゃない」。
- コスタリカでは、自分の家は誰に対しても開かれているという意識がある。日本では、家は他人に対して閉じられているものという考えのようだ。
<竹村卓さんの報告(要旨)>
- コスタリカは経済のグローバル化に直面している。これまでは、大きな政府として機能し、富を均等に配分してきたのに。例えば、電力や銀行を国有化して産業をリードしてきた。ニカラグア内戦でコスタリカ経済が悪化し、小さな政府路線をとらざるを得なくなり、不採算部門を切り捨てた。貧困世帯は増えているのに、外貨準備高はあがっている。
- 勝ち組と負け組が固定化されてきている。国連の定める貧困ライン(1日1ドル)所帯が4万世帯増えて21万世帯となり、21.5%増えている。12月には、25%になるだろうと言われている。社会保障費のカットや競争原理の導入がいわれている。外貨準備高が過去最高の24億ドルとなっている。
- 中米自由貿易協定は、必ず成立するということではないだろう。抵抗する力が強いので、経済自由化を進めるにしても、少しずつということだろう。周りの様子も見ながら行う政策をとっている。これを「プーラビーダ方式」と言っている。
- 化石燃料に依存しないと宣言しており、今がいいチャンスであるが、モータリゼーションがますます進んでいる。石油価格上昇の影響が大きく、タクシー代なども含めて物価を押し上げている。サンホセ中心部に車乗入禁止規制もあって、少しは排ガスの悪影響が減っている。サンホセの中心部までサバナという公園を通る線路を活用して、コミュニティ鉄道(乗車賃100コロン)を始める。自動車の代わりにバイクやバスなどの利用も始める予定。
- 憲法裁判所が、大統領再選禁止を憲法違反と認定し、通算2期8年を限度とした。アリアス氏は平和政策で有名だが、経済政策でも有名で、人脈もあるし、イラク戦争についても発言を行い、小型武器規制についても積極的に活動をしている。アリアス氏だけは大統領にさせないと反対する人はかなりあるが、当選する可能性は高い。アリアス氏以外に大統領候補者が無いと言っても間違いではないだろう。
- 女性解放を掲げる女性党ができたが、選挙裁判所から登録をいったん拒否された。なぜなら、党員がすべて女性だけだったから、偏った団体とされたわけ。今は男性も登録しており、正式な政党とされている。
- 来年は総選挙が行われるが、来年の投票率が心配。行かないという人が35%もいる。このままでは若者が関心を持たなくなると、憂慮している。政党登録は52もある。若い人を中心として、インターネット利用の選挙活動ができるかどうかが注目されている。
- ノムヒョン大統領が2005年9月に訪問している。韓国はいったんIMFでの管理下に置かれた後経済を再生したので、コスタリカは注目している。
- 台湾と国交を保っているが、国交のない中国ともバランスをとってつきあっている。コスタリカの多面的な外交は重要。日本からは、技術援助などで来ている人は多い。中米では、日本がアメリカを抜き、最大の援助国家となっている。
- 2005年7月に、スペインの副首相がコスタリカを訪問しようとしたが、使う飛行機がスペイン空軍に所属するという理由だけで拒否された。これは、イラク戦争でアメリカ支持をしたことを憲法違反と憲法裁判所で認定されたことが影響しているようだ。これくらい慎重に行動するということは、コスタリカがまだまだ信頼できる国だと思う。日本では、野党第一党の党首ですらが、集団的自衛権と個別的自衛権とを区別しないとの発言しているのと対照的だ。
- 現大統領が、環境サミットに際して、化石燃料に依存しないという宣言をしている。基本的に電力、地熱、風力発電、である。これに便乗して、日本のトヨタが巨大プラントを輸出しようとしている。
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