第41回 ボーンセンター露天風呂 「老後の安心と団地再生を考える」 報告

【講師】
浅川澄一さん(日本経済新聞編集委員)


平成21年1月26日、高洲コミュニティセンター(千葉市美浜区)にて「老後の安心と団地再生を考える」と題した講演会を開催しました。今回の講演会は、NPO法人たすけあい美浜第11回福祉講演会、ボーンセンター第41回露天風呂の合同講演会として開催されました。ボーンセンターでは、介護付きバリアフリーリフォーム住宅と、地域型福祉サービスによる団地再生のプロジェクトをスタートさせましたが、今回はこのプロジェクトの第1回の講演会で、講師として日本経済新聞編集委員の浅川澄一さんをお招きし、高齢者の住まいの現状と未来への可能性についてお話し頂きました。当日は高洲周辺の地域住民の皆さんを中心に約100名の来場があり盛況でした。講演では、下記の内容についての話がされました。
1.高齢者向け施設の現状と課題
2.介護保険の変遷
3.ケア付き住宅とは
4.ケア付き住宅の種別
5.適合高専賃とは
6.老人ホームと適合高専賃の違い
7.新しい高齢者の住まい方:
ケアサービス+適合高専賃
8.ケア付き住宅の具体例

「1.高齢者向け施設の現状と課題」では、県別高齢者の増加率、人口当たりの施設数及び整備率などが説明され、いずれも千葉は最も不足していることを示していました。今後の課題としては@在宅サービスの削減、A認知症ケアの置き去り、B首都圏介護「難民」、C介護労働者の低賃金、離職、人員不足が指摘されました。
「2.介護保険の変遷」では、今後介護保険の重点は@認知症ケア、A小規模多機能、Bケア付き住宅の3つの充実に変化していくという説明がありました。
「3.ケア付き住宅とは」では、まず、病院で死を迎える状態を、自宅で迎えることが出来る社会に移行させようとしていることや、一人暮らしの高齢者が増加していることが示されました。そこで、安心して老後を過ごせる自宅としてケア付き住宅の必要性が認識され、高齢者向け住宅の制度がつくられました。
それには「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」「高齢者向け優良賃貸住宅(高有賃)」3類型があること、さらに高専賃は@ケアなし高齢者専用賃貸住宅、A有料老人ホームになる高専賃、B「無届け」適合高専賃、C「届出」適合高専賃、D特定施設(包括ケア付き)に分類されること、適合高専賃の4条件として@部屋面積25u以上、A台所、トイレ、収納、洗面、浴室完備(台所、浴室共用なら部屋面積18u以上)、B前払い家賃があるときは保全措置、C入浴、排泄、食事介護、食事提供、洗濯、掃除、健康管理の提供が挙げられました。
「6.老人ホームと適合高専賃の違い」では、部屋面積、部屋移動の有無、契約などが適合高専賃の方が利用者に有利な条件となること、また法改定で医療法人も適合高専賃を運営できるようになったことが示されました。
「7.新しい高齢者の住まい方:ケアサービス+適合高専賃」では、老人ホームのサービスより高度なサービスが受けられる可能性があること、また、将来の展望として訪問介護+適合高専賃からスタートして包括的なサービスが可能な小規模多機能+適合高専賃に進化していくとの考えが出されました。
「8.ケア付き住宅の具体例」では、福岡市「楽居」、京都府京丹後市「ほほえみ」+「ふれあいホームあみの」、広島県福山市「ケアビレッジ楓」、神奈川県伊勢原市「風の丘」、神奈川県藤沢市「ぐるーぷ藤一番館」の事例が紹介されました。これら施設の成功のポイントは@地域住民の理解と協力があること、A地域型の介護団体が核となり、介護事業の発展した姿として高齢者の住まいを実現したこと、Bこれら事業に対して自治体が協力的で側面からの支援を行っていることなどが挙げられました。
現在の高洲地区も、これら条件を兼ね備えている地域であり、今回のプロジェクトの成功を予感させる内容でした。
次にボーンセンターの会員で都市再生機構OBでもある泉さんから、公団住宅居住者の意識と経済状況についての報告がありました。
まず、公団住宅の居住者像として@高齢化、A収入の減少が挙げられました。千葉県の公団住宅では、平成17年現在で65歳以上の世帯主が38%を超えており、世帯収入が大幅に減少、新たな改善工事を受け負担能力は小さいことが指摘されました。そこで、これからの高齢者住宅は新築より改装に重点が移っていくことが考えられるという考え方が示されました。
この現状と問題点も今回のプロジェクトの方向性に大きな示唆を与えるものでした。
最後に、高洲地区で活動するまちづくり、福祉の地域団体の紹介があり、NPO法人たすけあい美浜(訪問介護事業)、NPO法人福祉の街美浜をつくる会(みまもりサービス他)、NPO法人あいあい(階段昇降支援)、NPO法人ちば地域再生リサーチ(生活用品配達支援、リフォーム)、たすけあいの会たんぽぽ(制度外生活サービス)、NPO法人ほおずき(医療連携支援)、株式会社グッドメディックス(お薬お届け)の各団体から、高洲地域での活動内容、サービス内容についての説明がありました。どの団体もこれからの地域再生に対する情熱の感じられる紹介で、会場は熱気に包まれました。
また、講演会後の反省会では早くも浅川さんから紹介のあった先行事例の見学会も企画され、今後に向けた大きな第一歩となりました。
運営委員・柳澤 吉則


 

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