第29回 ボーンセンター露天風呂 「ごみ焼却と埋立処分〜『ごみ行政』への提言」 |
【講師】
川本幸立(ボーンセンター運営委員)
昨年9月より毎月開催している「千葉のまちづくり総点検」を総合テーマとした露天風呂の第5回目は1月27日(金)夜、「ごみ問題」をテーマに開かれ、報告者(川本)を含めて14名が集いました。報告の概要を以下に紹介します。
■ゴミの埋立は、水を汚染し、生態系を破壊する
昨年、千葉市職員による個人情報漏洩問題で全国から注目を浴びた小山町(千葉市緑区)産廃最終処分場計画は、谷津田の台地部分に素掘りのゴミ捨て場をつくるというものでした。地元では台地部分に降り地面に浸み込んだ雨水などを飲料水(井戸水)や優良農地の農業用水として数百年にわたり利用してきました。あちこちから水が湧き、ホタルなどの貴重な動植物の宝庫とも言える場所です。地域住民六千名以上の反対請願が千葉市議会で採択されたことから計画は中断していますが、こうした「ゴミ捨て場の間違った立地」問題が生じる背景には、廃棄物処理法と千葉市指導要綱の制度的な不備があります。法には関係住民の合意条項や地方分権規定もなく、実効性のある水環境や自然生態系保全の視点もありません。マニフェストシステムも今や信頼を喪失しています。結果として取り返しの付かない汚染・被害が発生してからの後追い的対応で構わないというものです。市の要綱による手続きは、事業者が提出する書類を審査するという形式手続きで、住民対応も事業者任せという業者の善良性に極度に依存したものです。
■焼却は、水銀など重金属、有害化学物質による汚染を進める
焼却というと「ダイオキシン対策」が頭に浮かびますが、ダイオキシン以外にも多種多様な有害物質が排出されます。しかし、重金属類や化学物質による大気汚染の規定はありません。昨年、千葉市の旧新港清掃工場敷地よりダイオキシンや水銀が検出されました。また北清掃工場の排ガス中の水銀測定値は0.01r/?(05年度測定結果3炉平均値)といいます。ダイオキシンや水銀以外にも健康上許容基準のない多数の有害物質が吐き出されています。全世界の焼却炉の2/3が日本に集中していると言われ、国内の一般廃棄物の焼却施設は1490施設(03年度)、産廃処理を加えると数千ありますから、厖大な量の有害物質が国土を汚染していることになります。
■焼却主義を合理化する循環型社会推進基本法では「持続可能な社会」は無理
2000年5月にできた循環型社会推進基本法の第2条で循環型社会の定義がされています。この基本法の意義として、@リデュース→リユース→リサイクル→埋立処分という順序付けをしたこと(第7条)、A自然生態系への配慮をうたった(第8条)ことが挙げられますが、実効性をもたせるための具体的な施策は見当たりません。逆に、熱回収(発電・余熱利用)や焼却灰などの再利用を「循環的利用」と定義したことで、焼却主義が合理化されました。昨年9月に環境省の産廃指導課長らと面談する機会がありましたが、彼らは環境保全よりも静脈産業振興=環境ビジネスに関心があるという印象を持ちました。しかし、セメントや路盤材としての再利用には、有害物質の外部への拡散の危険性(アスベスト被害と同様)とともにそもそも需給関係の面で成り立たないと指摘されています。
■千葉市のゴミ施策は、「焼却主義と焼却灰の再利用」路線
千葉市の一般廃棄物はここ4年、年間の総排出量が42万d、収集量が40万d、収集量の8割強が3清掃工場で燃やされるというほぼ横ばいの状態が続いています。唯一の最終処分場である新内陸最終処分場の寿命は過去3年の平均埋立量で算定すると寿命はあと17年というものです。ゴミの質を見ると、家庭ごみで紙ごみと生ゴミで7割を占めるという実態ですから、資源化による大幅なごみ減量は可能です。現在、千葉市は財政負担の観点から、ごみ量を1/3減らし、現在の3清掃工場から2清掃工場化することを検討していますが、「焼却主義+焼却灰の再利用」路線は継続しています。
産廃については、先日出された第4次(06〜10年度)市産廃処理指導計画案をみると、「静脈産業の振興のため、処理施設の整備の促進」が謳われ、市民の役割として「廃棄物処理への理解」が強調されています。経済産業政策を環境保全や人権よりも優先する姿勢が露骨です。小山町問題から学ばない市の姿勢とともに、千葉大の倉阪助教授も委員ですが専門家としてそのスタンスが問われます。
■NPO・市民セクターの使命は「市民自治」「持続可能な社会」〜焼却・埋立ゼロを目指すこと
焼却、埋立が環境汚染・破壊につながるのは明らかですから、焼却も埋立もゼロを目指すしか途はありません。そのためには製品の生産システムそのものを問い直す必要があります。2020年ごみゼロを掲げた徳島県上勝町は、「地球上のごみゼロ、社会経済システムの構築に向けて、2020年を目標に、それ以降すべての商品について、消費者が不要になった場合、製造〜販売〜消費の流れと逆ルートで、製造者に消費者から有価で回収することを義務づけ、違反者に罰則を科し、逆ルートで有価回収できない商品の製造販売を禁止する法律『資源回収に関する法律(仮称)』の速やかな制定」を政府に求め、全国の自治体に呼びかけています。生産段階から廃棄段階のあらゆる環境影響に対して生産者に責任を持たせる「拡大生産者責任」制度を充実させることが肝要です。処理費用を生産者が負担し、製品の価格に含ませ、最終的に消費者が負担することが基本となります。つまり「自治体→住民」の負担から「生産者→消費者」の負担に転換する必要があります。その点で今、政府が進めている「家庭ごみの有料化」は、こうした転換を求めるものではなく「拡大生産者責任」とは無縁のものです。
千葉市もごみ処理基本計画の見直しをしていますが、各自治体で持続可能な社会に向けて市民・NPOによる代替案づくりなどの政策提言がなされることが期待されます。 以上