第28回 ボーンセンター露天風呂 「みち・モノレール  〜交通政策〜」

【講師】
谷口多恵(ボーンセンター運営委員)


 12月23日の新聞は日本の人口が減少に転じたことを伝えました。しかも少子化は顕著、10年後には4人にひとりは高齢者という時代へまっしぐらです。国も地方も財政が破綻に近い状況の中、経済を支える労働人口には格差社会の姿が見えます。非正規雇用の増加、フリーターを余儀なく選択せざるをえない若年層の課題など、深刻です。今こそ、発想転換の時期です。

■国は構造改革というけれども・・・
 03年に国で策定された社会資本整備重点計画は道路・都市公園・治水・・・など9本の事業別分野計画を一本化し、拡散型都市構造をコンパクトで多様な機能を有する市街地へ再編することをめざしています。しかし、全総時代に決められたままの事業をひきづり、利権政治最大の温床である道路建設の財源などの抜本的な見直しもなく、これで持続可能なまちづくりといえるのでしょうか。

■大きな道はもういらない
 沿線の地域開発・地域経済の発展につながるというコンセプトのもと、首都圏3環状のひとつ、圏央道を今後10年で完成させるという宣言がだされました。しかし、来年予定されているまちづくり3法の改正は、郊外進出が目立つ延べ床面積1万平米を越える大型商業施設などの出店地域を中心部の商業地域に限定するという逆行内容です。人口減・超高齢化で経済も収縮していきます。3環状まとめて評価し、戦略的アセスを行なうべきです。

■千葉市の中環状道路
 中環状道路を形成する高規格道路「新港横戸町線事業」が5年後の完成をめざして進んでいます。9年前の都市計画審議会の委員だった私は市民参加のまちづくりの視点をとりいれることを提案して、事業化に賛成しました。その後、市民・専門家(村山さん、福川先生、延藤先生たち)・議員の連携で『全面ふた掛け提案』という大きな市民活動を展開し、3年前に部分ふた掛けが実り、市民・行政の協働で緑の道、風の道づくりが始まりました。ところが、JFEスチールの跡地で始まった蘇我副都心づくりが千葉市の道路政策の優先順位を変えてしまい、同じ中環状の塩田区間の整備が臨海部へのアクセスとして先行されることになりました。穴川インターまでの残された区間が高規格道路の計画路線になっているから10年後には事業化めざして・・・という行政の説明など、沿道18自治会は納得できません。千葉外環状道路の臨海部区間整備も控えている今後、当初33000台が見込まれていた新港横戸町線事業、人口減少の超高齢社会到来や道路のネットワークの未完成などで先の状況はみえません。都市計画マスタープランの地域版構想を活用し、穴川インターまでの地下接続や沿道まちづくりを表現しておくのはどうでしょうか。

■街なかの道路整備にはまちづくりの視点を  
 04年の千葉県内交通事故死者は332人、全国ワースト3位。今年の「千葉の道アウトカムプラン」は県内34箇所に《あんしん歩行エリア地区》を指定しました。まち歩きやワークショップの手法が取り入れられ、参加型の道づくりが進んでいます。新港横戸町線の関連地域でのコミュニテイゾーン形成事業にはまちづくりの視点がなかったために合意形成がうまくいかず、予定どおりに完成しなかったのが残念です。

■モノレール事業延伸の是非
 延伸ありきの再建策が実現し、モノレールありきの交通ビジョンになりそうな千葉市。県市あわせて321億円が再建に、さらに千葉市は176億かけての延伸計画。この延伸で8800人の利用増、7億円の増収をみこんでいますが、当初の特許申請時に16.5万人の需要予測をたてていた既設路線の利用者は4.4万人です。今回の需要予測は大丈夫なのでしょか。そのためか、なんと都市計画の規制を緩和する条例づくりに始まり、パーク&ライドや全駅バリアフリー化、バス路線の再編を考えているようです。しかし、その議論には市民不在。市民に延伸の是非を問うべきです!

■都市交通ビジョンづくりを市民提案したい     
 従来型の整備計画ではなく、福祉・教育・環境・まちづくりのドッキングした交通政策が必要でしょう。これからのまちづくりのキーワードは脱車社会、市民参加での都市計画道路事業のみなおしや道路事業の優先順位づけを行ないたいものです。また、生活圏域は中学校区、住宅密集地域の散策道路づくりや生活道路づくりを子どもも参加するまちづくりの視点ですすめるべきです。公共交通手段としてのバス政策の充実、バスが走りやすい道路政策、さらにコミュニテイバス、セダン特区申請による移送サービス、」お迎えバスの活用、それらを動かすファンドづくりが望まれます。このような市民の思いが反映される交通ビジョンを提案できるNPOでありたいなと思います。           

(運営委員・谷口多恵)

 

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