第22回 ボーンセンター露天風呂 「都市再生とNPO」 |
NPO設立5周年記念ということで代表の登場となりました。代表からは以前、これまでの仕事の全リストを頂いた事がありますが、非常に多方面でご活躍されています。今回は都市再生を俎上にのせ、真の都市再生とは?その時NPOなどとの関係は?と具体的な方法論を交えて語っていただきました。
*資料は「真の都市再生めざして:サスティナブルなコミュニティ開発を構想する」近々発刊予定本の原稿ということです。
*今回はお話と資料とをミックスして報告します。
◇ 講演要旨 ◇
はじめに結論から言うと、「都市再生」の5つの条件は
@ 美しいまちなみ(人間的、協調的な都市空間へ・・・超高層だけが解ではない)
A ビジョンと戦略(コンパクトな都市と周辺には緑地のコンパクト・シティー)
B 合意形成システム(まちづくり規範:デザインコードによるイメージの共有を)
C 開発システムの転換(土地利用と所有の分離へ・・・個別行為が全体を創る)
D コミュニティ・デベロッパー(市民が主体となりデベロッパーの役割を)
具体例を紹介すると高松の丸亀商店街はAからGまでの街区で再開発を行っているが、大手デベロッパーの街区では超高層住宅と建物で囲まれた広場を計画しており、閉じた空間で協調的とはいえないし(図-1,2)、手法も地元商店はなじみにくい原則型。川越の一番街では1983年から“蔵のまち”づくり活動に取り組んでいるが、(図-3)住民主体の発想で、活性化のための保存ではなく保存のための活性化と捉え、住民が財団を造り、ナショナルトラスト的に市民がデベロッパーの役割を担っている。ここでの二本柱は合意形成システムであるまちづくり規範と住民主体のまちづくり会社。規範に則り個店を改装し、夫々が近代化資金を利用して協調建替しつつ、全体共同施設を運営する。また、長浜の黒壁では(図-4)、寂れた街の古い銀行を市民が資金を出し合って買収。ガラス館として再生し、今や年間150万人を呼ぶ観光名所となっている。こうした「まちづくり会社」の成立構造は図-5として説明される。そのモデルは図-6の様なパターンが考えられる。
住民主体の活動やまちづくり会社の構想は外国でも活発で、コミュニティ・デベロッパーは、アメリカのC.D.C(Community Developmennt
Corporation)や、C.B.D(Community Based Developer)がそうであり、またイギリスのE.ハワードによる田園都市構想も住民から資金を集め、途中で運営主体の変遷はあったが、今は住民主体のまちづくり会社が運営している。これらはまさにNPO的活動として捉える事が出来る。住民主体の活動は非営利非公共として捉えれば図-7のような形が考えられる。
現在の政府の都市再生は「大規模・一体型・総合的・一気呵成型」だが、これまでの事例のように「小規模・連鎖型・個別的・順次型」で5つの条件に沿って身の丈にあった事業で展開すべき。まちづくり会社は地権者が共同して作り、土地はいじらないが建物は共同化して、一括全館保留床としてまちづくり会社に信託する。地権者は会社から地代を貰うが、お店や住宅の家賃を払う。所有は別だが事業のリスクは共有する関係となる(図-8)。ただ土地をいじらない分リスクは少なく、高容積の必要は無い。事業の展開は、1.会社設立、2.計画立案、3.事業計画、4.法手続き、5.工事と資金計画、6.完成及びマネージメントとなる。資金は公的支援を頼りつつ、地域の資金を循環させるべき。
都市再生の基本は、いかなる社会を創るかである。E.ハワードは田園都市論で、自律的な個人が集って自分達のコミュニティを開発する方法と可能性を描ききったからこそ人々の心を捉え、実践する人々を生み出した。活力あふれる都市は、自由な市民が協調・連帯する事によってしか生まれない。市民・住民側の力量も問われているのである。このことをまとめたのが5つの条件である。
◇ 討 議 ◇
短い時間の中で、代表の都市再生論は多面的に展開されました。
続いての質疑では、NPOの財源はどのような形が望ましいか、資金援助以外のNPO支援策はあるのかなどの質問があり、海外では住宅供給を事業とするNPOには土地収用権を持たす例が紹介されました。また中心市街地の活性化を目指したTMOの成功例の紹介では、温度差があるが自立更生的に、それまでも住民中心で活動していた高松、長浜などは活用していると説明があり、そうした所ではキーマンがリードしていると補足がありました。団地建替にも話が飛び、建替に伴う土地処分に際し、住民に安く払い下げられないのか、などアメリカのC.D.CのようにNPOを生かすような処置への期待も語られました。
都市再生の具体例として、幕張駅前の再開発や寒川地区の区画整理をNPOで出来ないのか、生活環境の改善に関わる方法は無いのか、など議論も多面的に展開されましたが、はからずも制度的に支援策の整わない日本でのためいきが聞こえそうな気がしました。是非、川越の活動を見学に行きたいものです。
(副代表・泉 宏佳)
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