第16回 ボーンセンター露天風呂 「"COMPACT"とは?」

講演要旨 "COMPACT"に取り組むきっかけ

サッチャー政権の時、市民サービスに欠陥があった。イギリスの国是である「ゆりかごから墓場まで」ができなくなった。そこで、ブレアー政権になって、市民サービスが求められるようになり、NPOやNGOといったプライベート・セクターが社会的責任を受け持つことになる。

英国では、BMC(Black and Minority Ethnic)が多く居住しており、National Compact が、1998年11月に締結された。これに基づき、Local Compact が結ばれ、ボランティアセンターが行政と取り決めを行った。すなわち、業者選定そのものを行政がNPOに委託し、市民感覚で物事を進める仕組みが整えられた。


図-1 イギリスのCOMPACT概念図


名古屋でNPOの会議があったとき、村山氏が堂本暁子千葉県知事と20分ほど話をする機会があり、知事はイギリスのCompactの考え方をベースとした行政を今後進めようとしていることをキャッチした。そこで、堂本支援隊である市民ネットワークの議員達と政策勉強会を行い、10日間のイギリス視察を行うことにした。

イギリスでは、1999年時点では、女性問題の本が2〜3割を占めていたが、2002年1月時点では、これが1割程度に減少し、階級制度(Class)が2〜3割を占めるようになった。図-1に示すように、イギリス社会は人口15%の上層階級が約44%の資産を所有し、残りの下層階級が22%の資産を持つ。

イギリスのチャリティは、日本のNPOにあたる。Compactは、自治体とボランタリー・セクターが対等な関係となっており、実践的行動規範として存在している。CAMは、ボランタリー・セクターの活動の場であり、生き生きとしたスペースである。Prince's Trust は、チャールズ皇太子がつくったもので、国・市民からの寄付・事業収益が各1/3ずつで運営している。
Bromtey-by-Bow Centerでは、職業教育を行っている。レストランは、働いたことがない若者の教育の場になっている。顔や、体型でClassがわかる。視察者に対しては説明料を徴収し、資金の回収に努めているようだ。

Glasgowは、昔造船で栄えたところだが、地域により貧富の差が激しい。貧しいところでは、特別な子供の教育が行われている。ここでは、権限を持った元気なおじさんが活躍している。
SUFFULK県IPSWICH町は、人口66万人で、議員はボランティアで、知事が選ぶ。報酬は、週150時間の労働で、120万円の年収である。従って、施策展開するとき、Local Compact は必要。週1回の議会で、各議員が担当を持っている。知事はペンダントを着けていて、これをはずすと会社の社長となる。議員は80人いるが、このうち22人は女性である。

県は、教育、福祉、道路、交通を受け持つ。市町は、住宅、ゴミ、レジャーを担当。コミュニティは、地域コミュニティを担う。公社は、上位のNPOで、設計事務所の選定やボランタリーを選定する。行政は、計画を立てるとき、必ずボランタリー・セクターの意見を聞き、パートナーシップで、前向きな行動をとる。事業NPOや設計事務所を選定した公社は、社会から何重にもチェックされる。

PLAISTOWは、働いたことのない子供達に、パソコン教室などの職業教育を行っている。イギリスでは高層アパートはセキュリティが非常に悪いので、低層住宅に作り直している。

結論的にいうと、CompactやLocal Compactは、"Independence"(独立、自立)ということである。NPOは、提案、審査、フィールドワーク、予算配分なども行う。ボランタリー・セクターの人件費が高いのは、若者、子供に視点をおいたブレア政権の支援が背景にある。

 

意見交換


【二宮】行政とCompactの関係は、国県市いずれも同じか。

[竹内]助け合いの精神がもとになっており、タテの関係はなかった。
[谷口]イギリスの公務員の給料は安い。
[村山]日本の公務員は有能。イギリスの公務員は無能。有能な者がCompactに参加している。タテの役割はない。社会の中の役割分担が決まっている。これが、CLASSである。
チャリティは40万ある。このうち18万がチャリティ委員会に登録している。政治的活動キャンペーン団体は登録できない。企業もボランタリーな部分をもっている。

【新井】団地建て替えでは、日本の自治会は無能というしかないが、イギリスでは、地域型コンパクトが活躍しているのか。

[村山]設計事務所をNPOが選ぶ。3年〜10年すれば、千葉県もそうなる。なぜなら知事がその気でいるから。

【宮田】日本では省庁別予算が固定しているが、イギリスでは省庁が対等なのか。もう一つの政府としてCompactがあるのか。

[村山]ボランタリー・セクターが、タテ割りをくくっている。
[竹内]申請をまとめてできる。

【泉(ボーン)】予算規模は。

[村山]土地代にお金を使っていない。消費税が17.5%もあるが。

【成岡】土地の所有権はどうなっているのか。

[村山]利用権のみで、所有は王様と貴族である。

【新井】お金はどこから出ているのか。教会か財団か。

[村山]主に教会などから。

【新井】有給と無給のボランティアはどのくらいか。

[谷口]イギリス国内では、66万人のボランティアがいるといわれている。SUFFULK県では、登録している非営利セクターは2,700あり、働く人の4%にあたる12,500人がスタッフとして雇用され、週に2時間以上働くボランティアも56,700人もいる。

【田上】NPOを審査する人材はどのような人か。

[村山]私みたいな人。今回の調査は、下層階級の人々を主に視察してきた。ROYALはお金を出す。BMEは体を動かす。

【二宮】信用できるNPOを行政はどのように判断するのか。

[村山]情報は公開されており、行政がお願いする立場。

【成岡】Compactの分野はどのようなものか。

[谷口]あらゆる分野にわたっている。

※回覧資料によると
1.市民社会セクター全般
2.コミュニティ再生
3.国際協力、開発援助
4.子供の権利擁護
5.障害がある人の支援
6.高齢者の支援
7.環境保全・保護
8.女性・家庭の支援
9.民主主義の推進
10.教育の訓練
11.その他


延藤代表のまとめ

行政とNPOの関係の協定(合意、コンパクト)の論点及び検討したい課題

A 哲学

1.Socially inclusive Society−すべてのひとが包みこまれる社会
2.Not-for-profit−独立、利益を求めないで、社会的に阻害された人々を代弁活動
3.People Power−個人グループの技能、関心、信念、価値観etcを保証、相互触発

B 定義

コンパクト(協定)とは、上の哲学を生かすことが社会の大きな共通の利益になり、政府かNPOの活動支援に積極的役割を果たすことを認識した文書。(下線の部分を村山氏は、「政府とNPOが役割を相互に認識した文書」と修正した。)

C 共有原則

1.Well-being(よりよく生きる)(not welfare)の実現
2.性質は異なるが相互補完、協働
3.付加価値、質の向上
4.違う形で、accountability(説明責任)信頼性ある活動
5.独自キャンペーン(NPO)
6.資産提供(政府)


D A Code of good practice (すぐれた実践のための行動規範)

1.Value of money お金に見合った価値が得られたか?
2.目的・業績、評価指標etcを両者が合意して評価する
3.中長期計画、複数年にわたる資金提供

E キーワード

1.C Create effective social and economic change−効率的な社会的、経済的変化の創造
2.O Opportunity for people to achieve excellence−住民が居心地良さを実現させるための機会づくり
3.M Mutual respect−行政とNPO・市民間に相互敬愛のイーブン関係づくり
4.P Pride of the approach−アート、教育環境、事業、健康等の領域にプロの誇りをもつ
5.A Autonomous authentic appraisal−自立的、事業性と運動性の両面バランスあるコミュニティ
6.C Communistic in business and action−事業性と運動性の両面バランスあるコミュニティづくり
7.T The Third Way is going−「第3の道」をひらきつつある
※以上の頭文字をつなぐと"COMPACT"となる!

最後に村山氏より、「今回は議員10人が視察に行ってきた。今後、Born Center は、このテーマについて行政職員の講習会などを行うべきである。」と提案した。これを受けて延藤代表は、「千葉のコンパクトをどんなふうにつくれるか、提案、構想をみんなで考えていきたい。」と締めくくった。

(運営委員・成岡茂)

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