事業報告「富里市商工会へのアドバイザー派遣」
平成24年11月13日

ゴールデンウィークが明けた頃、富里商工会から、「全国商工会連合会が募集した『平成24年度小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援事業』で提案が採択されたので、アドバイザーをお願いしたい」と、突然の電話があった。
詳しく聞くと、事業名は「非商業集積地域の買い物弱者サービス調査事業」、その概要は、「高齢化社会を迎え、商業店舗が集積立地されていない等、市民の日常生活の不安は高まる傾向にある。これを機にコミュニティビジネスの可能性を調査し、産業振興条例の制定に向けた地域活性化の協働体制の準備をしていく。」ということであった。
小生は(副代表:栗原裕治)は、7年ほど前から関東経済産業局の呼びかけで設立された広域関東圏コミュニティビジネス推進協議会の幹事をしている。当時を思い起こすと、NPOと並行して社会起業家の必要性を説く研究等がいくつかあり、次のように考えて、コミュニティビジネスに取り組み始めた。
 行財政の逼迫は、行政サービスの低下だけでなく、地域そのものの衰退や地域格差の拡大につながる懸念が大きく、全国の事例等をいろいろ調査分析した結果、『地域の資源を活用し、持続的に地域の課題に取り組む自立した市民が中心となった地域組織によるコミュニティビジネスの推進』がまちづくりの大きな課題の一つであり、まちづくりの中間支援組織を自認するボーンセンターの役割に、コミュニティビジネスの紹介や担い手の育成があるのではないか、と考えるようになった。
こうした流れから、これまでにボーンセンターは、千葉市コミュニティビジネス推進協議会(事務局は千葉市経済企画課)の理事長や千葉県中小企業元気戦略づくりの委員を引き受け、また、千葉市の委託事業として、毎年、コミュニティビジネスシンポジウムやコミュニティビジネス起業化連続講座を開催、厚生労働省の雇用対策事業として社会的事業者訓練などを行ってきた。また、神奈川県や群馬県など、他県のコミュニティビジネス事業に講演者あるいはアドバイザーとして関わり、2年前には韓国のNPO「希望製作所」の招待で
ソウル市の梨花女子大学において日本のコミュニティビジネスの紹介を行った。その際に韓国メディアの取材を受けたことから、毎年2〜3のコミュニティビジネスの視察団体や韓国の学生が、成田空港からボーンセンターに立ち寄るようになった。
富里市商工会からボーンセンターにアドバイザー依頼の連絡があったのは、広域関東圏コミュニティビジネス推進協議会からの推薦ということであった。ちなみに、富里市商工会の寒郡会長とは、千葉県中小企業元気戦略づくりにおいて旧知であったが、ボーンセンターがコミュニティビジネスにこれほど関わっていることは知らなかったようだ。
 さて、富里市というと真っ先に「すいか畑」が思い浮かぶ田園地帯のイメージだが、成田空港の開港以来、住宅地として人口を増やしてきた。しかし、街の中心となる鉄道駅がないなどの要因もあってもともと商業店舗の集積が薄いうえに、最近は車利用の大型ロードサイド店が主流になっている。日本中いたるところにある風景になっているが、人口が頭打ちになるとともに少子高齢化が進展し、日々の買い物に負担を感じている買い物弱者が増加し、その対応が大きな地域課題になりつつある。
 そうした事態を背景に、自治会、NPO、社会福祉協議会などの個々の取り組みがはじまっているが、それぞれの連携は十分ではなく、特に買い物に関連していながら、商店や商店街を含めたネットワークは希薄であった。
 現在、富里市商工会では、市内の商店主やNPO、富里市行政などがほぼ毎月集まって会議を行っている。これまでにボーンセンターは、小生が毎回この会議に参加し、全国の買い物弱者支援の先進事例を紹介し、富里市における地域資源を生かした新たな買い物支援の仕組みづくりをお手伝いしている。近々、先進地視察のための商店街を選定し、視察にも同行する予定である。地元の人たちの本気・やる気を引き出し、一緒に効果的なネットワークをつくっていくことが、重要なまちづくり支援になる。

 (副代表 栗原裕治 )


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