第37号のピーナッツ通信でもご報告したとおり、白紙段階から市民参加で策定された「千葉市(稲毛区)地域福祉計画」が昨年5月に公表されましたが、それからまもなく1年が経とうとしています。計画は当然実現させるために作られるものですが、果たしてこの計画はどれだけ実現された(実現に近づいた)のでしょうか。策定からこの計画に関わっている筆者が、この1年間の動きや課題、今後の展望などについて報告します。
○地域福祉“計画”推進協議会
策定された計画の中には、計画の推進に向けた取り組みとして「地域福祉計画推進協議会」(以下、推進協と略します)を設置することが盛り込まれましたが、実際に各区に推進協が設置され、稲毛区では計4回の集まりが開かれました。委員は計画の策定に関わったメンバーの大半に、新たに公募の方が数名加わる形となりました。
ただこの推進協については、立ち上げの前から「推進協が計画に書かれた取り組みの担い手になることは想定していない」ということを事務局(市)に言われており、これに疑問を持った委員は多かったのですが、結局押し切られる形でスタートしたということを付け加えておかなければなりません。このため4回の会議では、主に各委員が行っている地域福祉活動の紹介(情報交換)が行われたくらいで、あとは毎回、推進協のあり方や検討内容に対する疑問や意見が出されるがそれに答えは出ない…といったことの繰り返しで、非常に消化不良な場となってしまいました。
ちなみに推進協の設置要綱には、「地域福祉計画の取り組みの成果を共有する」ことが役割として定められていますが、成果の前に取り組みをどのように推進するかが肝心なのに、その部分がどこかへ飛んでしまっているという印象がぬぐえません。実際、“計画”の推進協議会なのに、計画に書かれた取り組みの推進に関する議論は、まったく行われませんでした。
○地域福祉パイロット事業について
もう一つ、計画を推進するための仕掛けとして「地域福祉パイロット事業」という補助金を使った事業も実施されました。これは地域福祉計画に掲載されている事業“など”、地域福祉の推進に資する“先進的・模範的”な事業で、社会福祉協議会地区部会が中心となって行うものに対して、1件につき最高10万円(合計600万円)を助成するというものです。市は「社協の機能強化」という方針を打ち出しており、それ自体は悪くないことですが、パイロット事業についても「NPOなど地区社協以外の団体は補助対象にならない」という条件が付いており、これにも多くの委員が疑問をもったものの、やはり押し切られてしまいました。また補助対象は、社協が“地域と連携して”行う事業となっていますし、推進協の役割に「パイロット事業の申請内容に対する意見の具申」という項目もあり、実際に委員から意見が述べられもしましたが、申請のあった事業はこれらの如何に関わらず、すべて採択されたという点からも、やや疑問の残る事業だったという感想を私は持っています。
○市民主体の取り組みと公助を両輪で!
何だか文句ばかり言っているようですが、もちろん、パイロット事業の中には市民グループと社協が協働して取り組んでいる素晴らしい事業もあります。助成金などの制度に頼らず、計画ができる前から地域福祉活動を行っている市民グループもありますし、策定に関わった委員が自発的に集まり、出来ることからやろうと検討する動きも稲毛区では起こっています。(これらの詳細については、あらためてご報告したいと思います。)
地域福祉計画の区計画は、地域住民どうしの支えあい、いわゆる“共助”の取り組みが中心に書かれているので、確かに市民の主体的な動きに頼らざるを得ない面もあります。それでもこうした取り組みを支援する市の施策(いわゆる公助)も必要とされているのは明らかで、計画(市計画)には公助の取り組みについても記述されているので、共助と公助を両輪に計画を推進するという視点が欠かせないと言えます。
○今後の展望
とりあえず来年度も推進協は存続し、委員も希望する人は継続できることになりました。筆者は、今年度はやや斜に構えていましたが、来年度はもっと主体的に、「推進協を変える」というくらいの気持ちで臨もうと思っています。同時に、推進協にとらわれない市民主体の動きも、区域を越えて展開できればと思っています。まずは情報交換や意見交換など、小さなことからになると思いますが、関心のある方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントをお寄せいただければと思います。
(運営委員・原田正隆)
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