千葉県内自治体のNPO施策の状況

1.NPO活動支援施策の学習会
6月18日(土)に「ちばNPO協議会」の定例総会が、市原市市民会館で行われた。総会が終わった後に、恒例の総会関連イベントが開催され、協議会の会員団体以外にも、市原市民を中心に多数の参加があった。
今年のテーマは「市町村のNPO活動支援施策についての学習会」で、地元の市原市市民政策課をはじめ、我孫子市市民活動支援課、市川市ボランティア・NPO活動推進課、浦安市地域活動支援課、柏市市民活動推進課、松戸市地域振興課、千葉県NPO活動推進課の職員諸氏が各自治体のNPO活動支援施策について発表し、その後会場とから寄せられた意見交換を行った。ボーンセンターは、この学習会のコーディネータの役割を担った。
学習会の冒頭で、市原市の佐久間市長が挨拶し、今後の自治体における市民参加の重要性や市原市でNPO活動支援を推進する決意を語った。
各自治体の発表からは、NPO活動支援施策の大きな流れが読み取れた。主な施策として、市役所職員の意識改革を含めて庁内推進体制の整備、NPOと市役所の協働マニュアルの策定などを含む制度面の整備、NPO支援センター等の活動拠点の整備、NPOのレベルアップのための講座やセミナーの開催、NPO活動を助成する基金の整備などが紹介され、取組の進捗状況に時間的な差はあるものの、次々にさまざまな事例が紹介されたことで、参加者が受けた刺激も大きかった。
各自治体の施策にはそれぞれの工夫があり、市川市の「納税者が選ぶ市民活動団体支援制度(1%支援制度)」は特に参加者に注目された。

2.広がる自治体格差
「市民参加」という言葉は、どこの自治体でもあたりまえの言葉になっているが、ほとんどの自治体で行政のコントロールの下での形式的かつ操り型の「市民参加」にとどまっている。市民の意識も、行政職員の意識もここからなかなか変わっていかないし、本当の信頼関係が構築されていないことが多い。
しかし、この学習会では、市民との対話や情報の共有の重要性が掲げられ、徹底的に市民と行政が一緒に施策を検討し、真の市民参加を構築していく姿勢が示されていた。そこには壁を一つ乗り越えた未来の自治体の姿が感じられ、共感の輪が広がった。
千葉市に目を移すと、2002年度にいち早く市民活動を支援する「千葉市民活動センター」が要綱で設置されたが、その後、今回の学習会に参加した自治体に比べて施策が停滞している。役所内に市民活動を支援する横断的な連絡体制がなく、協働マニュアルのような連携の仕組みもなければ、市民活動を活性化させる基金もない。
千葉市の市民活動の支援センターである「千葉市民活動センター」にしても、会議室、作業室、談話室の部屋貸し事業が中心で、計画的に情報提供や市民活動のレベルアップ等の事業は行われていない。「ちばNPO協議会」から市民活動の担当部署である市民総務課に今回の学習会への参加を打診したが、参加できないという回答があった。
自治体運営への市民参加や市民と行政との協働に積極的な自治体とそうでない自治体の地域格差がますます広がっているように感じられる。
以下の表は、学習会でNPO支援施策を発表した各自治体の配布資料をベースに作成したものである。配布資料では、自治体によってNPO支援施策の情報に偏りがあったので、各自治体のホームページや直接あるいは電話等でインタビューを行うことで情報を捕捉した。市原市で発表のあった自治体は、我孫子市、市川市、市原市、浦安市、柏市、松戸市の千葉県内の5市と千葉県であったが、浦安市と松戸市については情報を捕捉しきれなかったことから、この2市は割愛した。

(ボーンセンター副代表 栗原裕治)

 
千葉県内の地方自治体のNPO活動支援施策(表)   2005年7月11日NPO法人千葉まちづくりサポートセンター・栗原 作成
支援施策 我孫子市 市川市 市原市 柏市 千葉県
(1)担当課 市民活動支援課 ボランティア・NPO活動推進課 市民政策課NPO・ボランティア支援室 市民活動推進課 NPO活動推進課
(2)庁内の取り組み
◎組織
・市民公益活動・市民事業支援指針推進委員会(支援の基準づくり、庁内調整、調査研究)
◎職員研修
・1年目職員(3時間)
2年目職員(3時間)
3年目職員(2日間)
◎職員派遣研修
・担当職員をNPOに1年間
◎行政評価
・事務事業評価票に「市民との協働を工夫しているか」の記述を義務づけ
◎管理職試験
・管理職試験の申込書に「市民活動への参加や取り組みについて」の考え方を記入させる

◎NPO研修会
・市職員を対象の研究会があったが、現在は、事業の中で必要に応じて実施
◎庁内調整
・特に正式な調整連絡会議のような機関はないが、業務内容によって担当課が関連課室に協力を要請

◎職員研修
・若手職員を中心に2時間程度のNPO関連研修を実施
・県のNPO支援施策に協力し、同時に職員の意識改革や知識の向上を図る
◎庁内連絡会議
・2003年度から「市原市市民活動支援推進会議」を設置
・14課が参加し、各課の主幹クラスが担当

◎市民との協働推進リーダー
・2004年4月設置
・各部署に具体的な協働事業、協働の観点から市民や市民公益団体の対応を推進する旗振り役を選任
◎職員研修(決まった研修はない)
・市民との連携や協働は重要なので事業ごとに説明
◎今のところ市民活動推進課が調整役

◎NPO活動推進会議の設置
・環境生活部長を会長とし、各部次長、教育庁企画管理部次長、企業庁管理部次長、警察本部警務部長により構成
・年5回開催
◎NPO活動推進会議幹事会
・推進会議から付議された事案を調査検討及び調整するために、環境生活部次長を幹事長とし、各部主管課長、教育庁企画財務課長、企業庁総務広報課長、警察本部警務課長により構成
・担当者会議(各部局に担当職員)
◎協働マニュアルの職員説明会
・年4回(30〜50人参加)
◎職員研修
・新任研修/節目研修
・特別研修(NPOとの交流体験セミナー/5日間)
◎職員派遣研修(過去に実施)
・担当職員を1年間NPOに派遣
◎政策評価(事務事業評価)
・県民/NPOとの展開の項目
◎県とNPOとの意見交換会開催
(3)市民参加および協働の仕組みとルール
づくり
◎NPOとの協働を実りあるものに−協働のルール−
・2004年5月策定
・「誰のため、何のため」の共通の目標を明確にする
・NPOの特性を理解する
・NPOへの委託は協働の一つの形態にすぎない(NPOの自主的活動との連携が基本
・「金」を出したら「口」も出す
・第三者の評価を受ける
・職員一人一人の自覚
・市民感覚を持った役所づくり
◎NPOに委託して事業を行うための留意点
・NPOに門戸を開き、しかし特別扱いしない
◎まちの縁側構想
・1999年度:「ボランティア・市民活動推進懇話会」の設置
・2000年度:「ボランティア・市民活動推進検討委員会」の設置
・公募市民が「まちの縁側構想」として活動推進の拠点や仕組みについて市長に提案
◎ケースバイケースで対応しており、特に協働のルールは定めていない
・既に多くの課室が市民・市民団体と協働しており、今後企画部門が中心になって市民参加条例等を検討していく可能性はある
◎いきいき市原ふるさとづくり事業
・2004年度に実施された千葉県、市原市、NPOの3者による協働のモデル事業で、「市原市地域活性化推進委員会」(市、県、有識者で構成)が推進役となるとともに、「市原市地域活性化プロジェクトチーム」などの市内のNPO活動をサポート/2005年度継続
・フォーラム、説明会を経て活動に取り組む市民活動団体を募集、公開プレゼンテーションを経て、審査会が8団体を選択
・8団体がそれぞれ活動を展開し、中間報告を経て2005年2月に最終報告会
・毎月発行する「いきいきいちはらふるさとづくりニュース」等で市民とプロセスや成果についての情報を共有
◎協働によるまちづくりルール策定会議(まちづくり課担当)
・公募委員を含む13人の委員で検討
・2005年度中に最終報告書
◎市民との協働に関する指針
・2004年10月1日施行
・市民の知識や活力を活かし、市民と市が対等な立場で相互理解を深めながら進める
・市の役割や責任を減らすものではなく、よりよい市民サービスの提供を目指す
・計画、実施、評価のさまざまな場面で協働してまちづくりを進める
◎柏市民公益活動促進条例
・2004年10月1日施行
・市民公益活動の自発性、自立性を最大限尊重
◎市民との協働推進会議
・2004年8月設置
・提言、協働事業等のモニタリング及び成果の検証と評価、結果の公表
・年3〜4回開催
・公募市民、学識経験者、市民団体や地域団体の代表17名
◎千葉県NPO活動推進指針
・2002年11月策定
◎NPO活動推進委員会の設置
・学識経験者、市町村代表、公募市民、NPO活動推進課で構成
◎2003年度〜2005年度の行動計画の実施
・NPOに関する知識の普及啓発
・「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」の実施
・千葉県パートナーシップマニュアルの作成
・「ちばパートナーシップ市場」の実施
◎県民との協働による計画づくり
・NPO活動推進委員会(年5回)
・NPO活動推進検討部会(年5回)
・指針策定ワーキンググループ(年8回)
・タウンミーティング(年6回)
・意見公募(年2回)
・県・市町村市民活動担当連絡会議
(年2回)
◎NPO法適正運用事業
・NPO法運用マニュアル の作成・発行
・NPO法適正運用小委員会の開催
(年9回)
(4)活動資金 ◎既得権に左右されず、NPOの自立を支援する補助金
・2000年4月から実施
・補助金を「国・県・他市町村との協定により支出」「施策的」「公募」に分類し、「公募」「施策的」補助金を市民の委員会で審査して交付
・補助金は、最長3年で白紙に戻し、再応募の場合は再審査
・交付額は補助対象経費の100分の50から100分の10
・応募者の公開ヒアリングを実施
◎市民(納税者)が選ぶ市民活動団体支援制度(1%支援制度)
・2004年12月20日「市川市納税者が選択する市民活動団体への支援に関する条例」を公布
・(目的)納税者意識の高揚と市民活動の活性化
・前年度分の個人市民税を完納している納税者が、支援対象を選ぶ
・事業経費の2分の1まで補助
・納税者は支援したい市民団体を1団体選択、または基金に積み立てることを選択して届け出る
・1団体の支援金の額は、その団体への支援を選択した納税者の個人市民税の1%相当額の合計
・市は支援額の枠を団体ごとに集計して公表し、団体はその結果により事業を拡大または縮小
・団体は事業実施後に実績報告書
等を添付して清算する(概算払いでの支援金の交付が可能)
・この制度を適切に運用するために「市民活動団体支援制度審査会」を設置(学識経験者4名、公募市民3名)
・納税者が基金への積み立てを選択した支援額、個々の団体の申請額を超えた支援額、その他市民や法人等からの寄付金は基金に積立
◎ボランティア・NPO活動支援金制度
・2004年度実施
・事業提案を受けて1次審査(書類審査)、2次審査(公開プレゼンテーション)で支援先を決定
・対象事業費の1/2、上限10万円
・公募市民を含む審査会

◎補助事業
・市民活動を上限20万円まで補助する制度があったが、現在は「いきいき市原ふるさとづくり事業」の中で提案募集事業のかたちで補助事業を実施
・協働によるまちづくりルール策定会議の中で今後の補助事業を検討中
◎市民公益活動補助金
・1998年度開始
・立ち上げ支援コースは活動事業費の2分の1(上限10万円)補助、自立支援コースは活動事業費の2分の1(上限50万円)補助
・公募(それぞれのコースで3回まで応募可能)
・選定委員会(学識経験者、公募市民、NPOの代表者等)が評価
◎協働事業提案制度
・2005年度創設
・協働事業提案を公募し、翌年度の事業化(予算化)を協働して模索するシステム
・市民公益団体の事業力強化、市職員の協働意識の醸成、市の既存事業の見直しが目的
・条例に基づく「特定契約(業務委託)」として実施
・審査は「協働事業選考委員会(8名)が行い、市長に提言
・委託契約とは別に協働事業協定を締結
・協働コーディネーターを設置
◎NPO活動費補助金事業
・A(スタート・自立支援)
 上限30万円
・B(新たな活動展開支援)
 上限60万円:補助率1/2
・審査基準により審査会が審査
・Bについては応募者の公開プレゼンテーションを実施
◎(県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業)の実施
・市町村単位でパートナーシップによって取り組むモデル事業で各主体の役割と主体間のパートナーシップのあり方を明らかにしつつ、今後の地域の課題に取り組む手がかりを見つけ出す
・コーディネート役の事業体を公募し、選考委員会で決定
◎ちばパートナーシップ市場
・県が抱える課題解決を目的に、市民活動団体と県が互いに情報や意見の交換を行い、提案を持ち寄り、パートナーシップを組んで共同で行う事業をつくる
・当該年度コースと翌年度コースがあり、更に翌年度コースには、県が課題を示すコースと市民活動団体が課題を示すコースがある
・パートナーシップマニュアルの改訂に反映させる
(5)支援施設
◎ボランティア・市民活動サポートセンター
・2002年4月オープン
・社協設置のボランティアセンターと市設置の市民活動センターを統合し、社協と市の共同設置に
・運営は運営委員会を設置し、市民・市・社協の共同運営
◎ボランティア・NPO活動センター(まちの縁側)
・2001年4月、ボランティア・NPO活動推進課に隣接して開設
・2005年1月、行徳支所2階に2箇所目を開設
・会議室、作業室、情報提供、相談事業等
◎(仮称)市民活動支援センター
・2005年10月開設予定
・市民団体に運営を委託する予定
◎(仮称)市民公益活動支援センター
・2006年度設置予定
・2005年4月に設置した「市民公益活動支援センターを考える会(公募市民、市、社会福祉協議会20名で構成)」で内容を検討中、今年11月上旬まで11回開催の予定
◎パートナーシップオフィス
・県庁本館の2階(県庁が開いている時間帯に利用可)
・会議室の利用
・法人認証等を含むNPOについての各種相談
・情報の提供(パソコンあり)
(6)広報・情報 支援
◎「市広報あびこ」に掲載
・市民活動団体の募集やイベント開催等の記事を掲載
・認証されたNPOの特集記事を掲載
◎ホームページによる情報提供

◎情報誌「ボランティア・NPO情報」
・年4回発行
・市内各駅の広報スタンドや公共施設で配布
◎ホームページ
・市民活動団体やNPO法人の活動紹介、助成金情報などの提供
◎ライブラリー
・ボランティア・NPO活動に関係する書籍、資料等の提供
・ボランティア・NPO活動センターで
◎(仮称)地域活動情報サイト
・市民活動団体、行政、その他関連機関のネットワーク化
・市民活動団体がホームページを持つことができ、活動情報をタイムリーに受発信できる
・市民からの質問や参加申し込みの受付にも対応でき、情報の双方向性が確保される
・ インターネット利用で、全国どこからでも利用できる
◎市民活動のひろば
・2003年2月から稼動している市民活動関連情報を提供するポータルサイト
◎市民活動情報データベース
・2003年2月から稼動している市民活動団体(サークル活動を含む約500団体)の活動情報をインターネットで提供するシステム
◎ホームページ(千葉県NPO情報ネット)
・NPOについて知る
・NPO団体について知る
・NPO関連施策について知る
・掲示板
◎情報誌
・NPO活動情報誌「さあ!NPO」
・ニュースリリース
(7)自立支援
(サポート・育成)

◎市民活動支援パソコン講習会
・実施できるNPOが存在しているので今年度は実施しない
◎市民活動レベルアップセミナー
・2003年度開始
・市外のNPO法人に委託
・組織を立ち上げて間もない団体対象と、活動期間が長い団体を対象にしたセミナー
◎市民活動フェアinあびこ
・2002年度開始
・公募市民活動団体で実行委員会を組織
・展示、交流、講座、体験、実演等の催しを実施
◎コミュニティビジネス支援事業
・2002年度開始
・講演会、起業講座、サロン(交流会)、ポータルサイト

◎体験イベント・講演会等
・「夏休み体験ボランティア」の  
実施(2001年度〜)
・「あゆみまつり」の実施
(2001年度〜)、 団体間の交流、活動の活性化や理解の促進を目的として年1回開催
◎研修会・講座
・市民対象の「NPO講座」や「出前講座」を実施
◎総合学習の支援
・公・私立学校における総合学習の取り組みを学校の要請でサポート
◎相談事業
・NPO法人格取得のための申請、書類作成のアドバイス等
・団体の組織管理、運営上の相談
・ボランティア・NPO活動センターでは、職員のほかに、実際に地域で活動している団体の関係者等10名のアドバイザーが、週2日程度交代で、来館者への相談に応じている
◎.「市川災害ボランティアネットワーク 」
・市には災害が発生した時、ボランティアを受け入れて、被災地や避難場所に派遣する「ボランティア受入委員会」があり、ボランティアのことはボランティアでという考えを基本に、これをサポートする市民組織が、月1回のペースで研修会や模擬訓練などの活動をしており、その活動を支援

◎自立支援事業
・協働によるまちづくりルール策定会議の中で今後の補助事業を検討中
・(仮称)市民活動支援センターの開設にあわせて検討中
◎自立支援事業
・(仮称)市民公益活動支援センターの開設にあわせて検討中
◎県民NPO基礎講座
・市町村の希望により、県内8箇所で開催
◎NPOの事業力強化支援事業
・NPOの事業力強化小委員会の設置(6回/年開催)
・下記の事業の実施
◎NPO力向上セミナー
・事業開発や資金調達に関するセミナーをNPOから企画募集し委託する
◎NPO活動事例集の作成
・NPO活動の優良事例集
(8)その他 ◎市民活動災害補償制度
・事故による障害や損害賠償のために市が行う保険契約
◎法人市民税均等割の減免
・NPO法人に対して収益事業の有無に関わらず減免
◎「NPO法人ネットワーク連絡会」の運営に対する支援
◎常磐線沿線NPO担当者会議
・我孫子市、松戸市、柏市、流山市、鎌ヶ谷市のNPO担当者の情報交換・共同事業等を行う場
・会議は年4回。年1回の共同事業開催
    ◎市民活動災害補償保険
・市民活動中におきた事故の補償をするもので、掛け金を市が負担
 


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