1.丸亀商店街再開発事業
(http://www.marugamemachi.ne.jp)
高松丸亀町商店街振興組合の常務理事の方にお話を聞いた。親からは振興組合の仕事は家業に影響するから止めときなさいと云われてきたと言いながら、キーマンとして事業を推進しているその情熱と迫力に圧倒された。また丸亀街商店街を含む中心市街地を歩いてみてそのコンパクトな街と整然とした街割等、歴史の蓄積と再生力を感じさせるところであった。
(1)事態の正確な認識努力
高松港に作られた新規集積地、南部の郊外型大規模商業流通施設等の大型スーパーが急増したことと、メーカーに対する商店街側のコントロール力がとれなくなってきたこと等が商店街衰退の要因であるとのこと。しかし、高松市は1拠点で、中心市街地がコンパクトに形成され、業務機能等の都市機能が密度高く集積している。中心商店街も「通り」が集中して形成されている。未だ競争に負けないだけのポテンシャルを有しているようである。少子高齢化の進展、地域経済衰退の傾向に対しても、高松市が商圏とする消費性向自体はそれ程減少していないとのことである。
従ってポテンシャルを有している今の内に、競争力の回復を図ることが重要であるとの認識に立って、再生の可能性について香川大学とも協働で調査・検討行ってきたとのことである。
(2)再生のフィロソフィーと戦略
話を聞く前は、今時多大な投資をする再開発事業をして、かえって加重負担になるのではないかと懸念していた。しかし話を聞いて事業コンセプト、戦略があるなと感じた。
まずは個々の商店の努力とチャレンジが第一であり、儲かりそうであれば業種業態転換等何でもする貪欲さが必要である。そしてその相乗効果こそが力となる。一方団体である振興組合でなければできないことがある。即ち人が集まるようにする仕掛け作りが役割である。インフラの魅力づくり、イベントの開催等とのことである。商店街に人を呼び戻すための魅力とは何か?、買い物にはコストパフォマンスを求めることと、また一方ショッピング自体を楽しむというニーズがある。前者は、とりわけ大規模商業流通業者の得意とするところであり、中小の商業は価格競争だけでは苦しい。差別化されたオンリーワンの商品を持っているところは強い。しかしそれは少数である。後者については数ヘクタールの敷地で、アミューズメント性を持った施設もある。しかしここの中心市街地全体は数十ヘクタールの規模を持ち、多様な機能を持っている。これを基盤に更に魅力のある、エイジングも発揮できる街を作っていけば人は戻ってくるのではないだろうか。特に観光客・交流人口とお年寄りを集める、そのためにはここに来なければ体験できない都市の魅力をもつことがポイントであるとのこと。
「100年持つ本物の町並みを創ろう!」。歴史を振り返ったとき、「ヨーロピアン」か「江戸」。ここの商店街は前者を選んだ。ヨーロピアンの魅力でもあり、人を集める場として「広場」づくりがキーコンセプト。ヨーロッパの広場は市場があったり魅力ある交流の場である。広場の役割が、人が交流する場であるということは変わらないが、時代によって様々なイベントを演ずる舞台であった。広場であるからこそ様々な活動に対応できたと言えよう。これが使用目的が特定化された箱物であればそうはいかない。広場づくりは事業採算の面からは、投資に対するリスクが少ないとも言える。加えて駐車場や公園の整備は当然のことである。また、裏通りには「市場」や「とげ抜き地蔵」の類をつくりたいとのことである。
中心市街地を活性化するもう一つのキーコンセプトは高齢者が住み易い、生き甲斐のもてるまちづくりである。高松の市街地は平坦であり、コンパクトな中に生活するのに必要なあらゆる機能が存在している。この地域には、高齢者のニーズに合った居住環境整備が容易に可能である。高齢者は買い物や生活サービスも近くの店に歩いて利用するのである。下駄履きマンション特に高齢者用マンションの整備、更には特養、ケアホームをつくる。そして「老人力」を活用してアウトソーシングを地域の中で循環させる仕組みをつくろう。そのための道具として地域通貨「亀」をもっと活用しよう!
(3)事業者の主体性の発揮と行政の活用
従来の再開発事業の欠陥を克服すべく、振興組合は駐車場事業の実績を踏まえて、自ら「まちづくり会社」を設立して主体的に事業を推進している。再開発事業費は76億円とのことであるが、多額の補助金(国40億円、県10億円、市10億円)を見込んでいる。しかし、振興組合の担当者の言は、物乞いしていただくという感じからはほど遠く、再開発事業により、固定資産税、事業者税等がアップし、然るべき年月で十分元が取れる(市の補助金10億円は固定資産税収入で10年で回収できる)のだから、行政は投資するべきだというスタンスである。地域を守り発展させていく主体は誰か!グローバルな展開をしている企業は、商売にならないと判断すればいつでも撤退する。地元の商業者は、その地域が本店であり、そこで頑張らざるを得ない。地域の人々と運命共同体である。ヤクザの世界に例えれば、外部から乗り込んでくる大企業は山口組のようなものである。その進出に対してシマを守るのが行政の役割であり、商業者はその働きに対して「みかじめ料」を払っているのである。自分たちのシマを守れなくて行政といえるか!
ここの再開発事業は、再開発事業らしい事業計画である。即ち、道路も含んだ面的再開発であり、通過交通を捌き、訪れる人に便利で、快適なヒューマンな街づくりを目指している。道路の付け替えまで計画しているし、現在の建築基準法では困難な道路上の空中エスカレータ計画を何とか実現しようともしている。これらは既存の制度にとらわれることなく、如何にして良い街づくりをするか、合理的な街づくりをするか、妥協したのでは事業が上手くいかないと必死である。
2.千葉市中央第6地区再開発事業
(http://www.city.chiba.jp/tosisaikaihatsu/toshin
/chuuodairoku.html)
千葉市は政令指定都市とは言っても、東京都心へのストロー現象がみられ、また郊外へのスプロールと東京湾の埋め立て等により市域が広く、中心市街地の規模、密度は必ずしも高いとは言えない。しかも市の整備構想では、中心市街地と、幕張副都心、蘇我臨海地地区開発と3地区を都市構造の拠点とすることとしている。また千葉駅が2度も場所を変えたこともあり、中心市街地もその影響を大きく受けている。このような経緯により、中心市街地は高松市に較べて都市要素が散漫であることは否めない。日本の社会経済の中長期的変動の波を千葉市も同様に受けているのであるが、千葉市の財政悪化と行政サービス水準の低さは全国都市の中でとりわけもひどい状態である。
中心市街地の現状は看過できないものであり、何らかの対策を講じたいところではある。中小の商業店舗がシャッター通りになりつつあるだけでなく、大規模店舗も撤退が相次いでいる。一方海浜ニュータウンや、国道16号線沿いには次々と大型店が立地し続けている。更に、蘇我の臨海地区にはイトーヨーカ堂を中核に、アミューズメント機能も有した大規模な集積地が今春のオープンをめざして建設が進んでいる。
このような環境の中、一昨年末に組合が設立された中央第6地区の再開発事業は、上手くいくのであろうか。民需の衰退によって、立地条件の良い千葉駅西口再開発事業すらも事実上のストップ状態になっているのである。中央第6地区の再開発事業は、権利者の大部分は千葉市であり、導入される機能も千葉市役所の行政業務機能等が大部分であり、組合事業という形は取っているが市直轄事業と言っても過言ではない。しかし、それにしてはこの事業のPRは不十分であり、市民に対する訴求力は無いに等しい。市に聞けば組合事業であると言うし、組合からの事業PRは寡聞にして知らない。中身についても市の各セクションに分散しており事業の責任部署が不分明である。誰がやっているのか顔が見えない。市が旧扇屋ジャスコから購入したビルの始末に困って始めたわけでもないだろうが、、、。従ってかどうか、この再開発事業には地元の中小商業者の関わりが見えない。行政機能を大部分としたビル建設事業としかいえない。地区再開発と言うよりもビルのスクラップアンドビルドとでも言った方が適切である。この事業の必要性はよく理解できないが、お題目の一つに中心市街地の活性化が謳われている。行政業務機能は従来のあったものをリニューアルしたもののようである。商業店舗もほんの一部である、「こども科学館」は人寄せパンダであろうか。400億円ともいわれる税金を使う事業であるこのような箱物建設や、こども科学館がこの地域の活性化に繋がるか疑問であり、税金の無駄遣いにならなければと危惧する。高松丸亀商店街再開発事業をヒアリングして改めてその思いを強くした。
(サポーター会員・家永 尚志)
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