第21回全国自治体政策研究交流会議、
第18回自治体学会・千葉大会 参加報告
8月26日(木)に自治体政策研究交流会議、27日(金)に自治体学会が幕張メッセ国際会議場を会場に開催された。全国の都道府県および市町村から約1,120名の参加があったが、この数字は過去最大の参加者数だったそうである。テーマが「明日を生き残るために、闘う自治体―危機に立ち向かい、時代のうねりをつくりだすー」というかなり刺激的なタイトルであった所為であろうか?
26日(木)は、午前中に「日本の地殻変動と自治の未来」と題して千葉県知事、北城経済同友会代表幹事、森田東大公共政策大学院長の3人による鼎談。午後は「新たな観光戦略としてのまちづくり」、「政策法務―対話と合意形成―」、「地域の再生・21世紀の道標」―景観という視点からのアプローチ―の三つのパネルディスカッションが準備された。私は「地域の再生・・・」にパネリストとして参加。その後まとめのクロージングセッションがあり、つづいて情報交換会というメニューであった。
27日(金)の自治体学会は、二つのセミナーと十課題の分科会が準備されていた。セミナーの一つは「個性輝くまちをつくる」がテーマで、前々日夜、BORNの露天風呂でお話いただいた内子町の「岡田さん」はメーンの事例報告者という設定だった。私は、「団地再生・郊外住宅地の将来」分科会にパネリスト参加した。
まず、26日の堂本県知事など3人のよる鼎談は、知事からの地方主権や地方への財源移行の話題から入り、知事は三番瀬円卓会議を成功と捉え、参加型行政の提案と自賛、また地域福祉の自発的活動を紹介し地域の活力を積極的に汲み取る行政を評価した。次に自治体改革の可能性について、民間人である北城代表幹事は危機感の共有が必要と語り、情報公開の必要性を説いた。また、森田院長は、地方分権改革は実際に現場を熟知している公共団体職員自身がどう変え、変わるかにかかっているとし、自治体政策研究集会に参加している参加者への期待を語った。
鼎談以外の会場には私自身の打ち合わせなどが入っており参加できなかったので、詳しい報告はいずれ出来る報告書を参照願いたいが、26日のパネルディスカッションの模様は、クロージングセッションのまとめを聞いている限りでは、「闘う自治体」が「うねりをつくり出す」には1日の会議では到底無理で、今ひとつ食い足りなさが残る印象だった。
27日の学会分科会は「人事制度」、「合併」、「地方議会―条例制定―」、「自治体経営」、「地域福祉とコミュニティ」、「自治の担い手を創るキャリアデベロップメント」など今日的テーマで時間もたっぷり取られており(3時間半)、それなりに議論が戦わされたことと思われる。
以下、私自身が参加した二つのパネル会場について−。
「地域の再生」に景観からアプローチする、と言う視点はなかなか手ごわい課題であり、議論としては難しい設定であった。栗生千葉大教授は、実際の設計経験から、建物を設計する時は、地域にモノを「増設」するという感覚で設計すると事例を引いて説明。千葉市、市川市の各部長は景観行政にまつわる条例の整備状況や事例の紹介、さらに大学との連携などについて語った。私は住宅地開発の事例報告と「ゆりの木商店街」のまちづくりについて報告し、地域再生や景観形成は、国立駅前のように地域によって育てられるものであり、経験のあるリタイヤした人などが積極的に活動、発言することが求められるとまとめた。「団地再生・・・」では、戦後日本で最初に計画された大阪府企業庁が造成した「千里ニュータウン」の現況報告、兵庫県から「明石舞子ニュータウン」の再生計画の報告があり、私は都市機構(旧公団)が抱えている課題に触れ、居住者活動を紹介しながら高齢化した団地生活の互助的活動の展開の必要性を指摘した。また、多摩ニュータウンの空き店舗でITビジネスを運営する事業者から、これからは緑豊かな職住近接の環境の中でこそ、新しいビジネスの可能性があるのではないか、と提案があった。
二つの団体による連携した大会は、3日目には県内見学研修が準備されており、三々五々「三番瀬」や「佐原」などの見学地へと散っていった。
1,000人を超える参加者を迎えた大会運営は県や市職員により手際よく運ばれており、成功だったといえよう。
(※参照:「千葉日報」8月27日)
■コメント:
参加者のうち、770人は首都圏からの参加者で、また公共団体参加者は総務などの政策企画セクションが多かった。会議の性格から当然の事であろうが、折角これだけの自治体職員が集ったのなら、全体的な意見集約あるいは決意表明のような場がもたれても良かったと思われた。
テーマは文字通り現在の自治体のおかれている状況を反映したものといえる。しかし、更に言えば闘うという自治体の主体は誰なのか、そして何に向かって闘うのか?三位一体改革を標榜する小泉内閣政府に対して全国知事会は正に真価が問われている。自治体は国のくびきが外れたとき本当に自立できるのか?何をしようとしているのか?自治体からのメッセージが今問われている。そんな観点からみれば、自治体とは自治体職員のことではなく、自治の中身、あり方が真剣に議論されなければならない。危機とはどこを指して、なんに対して危機というのか?時代のうねりをつくり出す、のはだれか?
公共が先導し、市民生活を指導してきた時代は終った。市民はマニュアルから自立し、地域にあった、地域で連携できる、地域主体の政策の方法を求め始めている。すでに政策分野によっては、行政的業務の地域住民団体への移行は世界的潮流といえる。イギリスの福祉、教育、住宅分野、アメリカの住宅政策などはその流れといえる。ニセコ町長は公共団体で無ければできない事は僅かしかない、と断言し、すでにかなりの分野に民間人の活用を始めている。公共の仕事の足元を問う事そのものが、今最大の課題なのだ。
テーマを受けて、これから自治体の職員自身がどう解答を引き出すのか、注視していきたい会議であった。
(副代表・泉 宏佳)
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