1.千葉県のNPOサポートスペース
11月5日、千葉県庁本庁舎2階にNPOサポートスペースが開設された。設備は現在のところ130uのスペースに長テーブル6、椅子18、ホワイトホード1で、市民団体が申し込めば会議等に利用できる。県庁内に設置したのは、県庁職員を刺激したいという堂本知事の考えもあるようだが、使用できる時間帯が平日の午前9時から午後5時までに限られていては、なんとも使い勝手がよくない。現在は、本格的なNPOサポートセンターを開設する準備段階ということなので、今後、印刷機や製本機等を備えた作業スペースや情報・相談コーナーなども充実してくると思われる。本格的なNPOサポートセンターについて、「千葉県NPO活動推進懇談会」で検討されている。
2.市川市の「まちの縁側センター
千葉県内の市町村レベルでは、既に市川市に「まちの縁側センター/ボランティア・市民活動センター」がある。この「まちの縁側センター」は、1999年度のボランティア・市民活動推進懇話会及び2000年度の同推進検討委員会から提言された「まちの縁側構想」に基づき開設されたもので、ボーンセンターも構想策定に関係した経緯がある。JR本八幡駅から徒歩5〜6分の「まちの縁側センター」には、印刷コーナー、相談コーナー、会議コーナー、情報コーナー、書籍・資料コーナー、サロンコーナーがあり、平日と土曜日の午前9時から夜の8時30分まで使用できることから、隔月に開かれる「ちばNPO協議会」の幹事会もここの会議コーナーを利用している。管理・運営している市民ボランティア支援課の話では、今年4月のオープンから毎月300〜400人程度の利用者がいるという。
この「まちの縁側センター」の他に、各小学校区に一つの割合で将来的に市民が運営する「まちの縁側」をつくっていこうというのが、市川市民がつくった「まちの縁側構想」であったが、現在の「まちの縁側センター」は公設公営であり、平日の昼間は、ボランティア支援課が、平日の午後5時以降と土曜日は、行政と随意契約を結んだ「社団法人市川市シルバー人材センター」が管理している。市民がつくった「まちの縁側運営委員会」の今後の動向と市川市の対応が注目される。
3.千葉市の「市民公益活動サポートセンター
千葉市は5カ年計画に「市民公益活動サポートセンター」の開設を位置づけており、2003年のオープンをめざしている。今年度は基本調査を外部研究機関に委託して行っており、その結果を受けて、2005年の予算請求に間に合うように、来年度9月頃までに施設整備計画を固める方針でいる。来年前半は「(仮称)市民公益活動サポートセンター整備懇談会」を3回程度開催して、市民や市民団体の意見を参考にしたいとのことだが、こうした行政主導の計画づくりは、形式的な住民参加になりかねず、千葉市がめざす行政と市民の対等なパートナーシップの確立につながっていかない。
千葉県が1999年度に作成した「ボランティア等社会活動促進指針」は、千葉市と同様に従来型行政主導の形式的市民参加で味付けしてつくられたものだっただけに、既に「千葉県NPO活動推進懇談会」は見直しを決めた。21世紀が、これまでの行政主導の時代から、行政と市民のパートナーシップの時代になることはもはや必然であり、企画・計画の段階から行政・市民の協働のプロセスデザインを描き、実行していかなければ、行政も無駄な時間、無駄な予算を使ったとの誹りを免れない。千葉市の「(仮称)市民公益活動サポートセンター整備懇談会」が形式的な懇談会にならないことが望まれる。
4.千葉県のNPOサポートセンター
千葉県のNPOサポートセンターについて、どのように考えるか……。NPOという言葉及びその概念を正確に理解するのは難しいので、市民活動支援センターとして考えた方がよいかもしれない。既に他県にはNPOサポートセンターを持っている県もあるが、県民が身近なサポートセンターということになれば、むしろ市町村の設置が望ましく、県としては市町村と協議して補完的な設置場所を検討していくべきと思われる。
もっとも、それは千葉県内の市民及び市民団体の情報拠点、作業拠点、相談拠点、会議拠点という狭い意味でのサポートセンターを考えた場合である。このようなサポートセンターの機能は、ほぼ決まっており、市川市の「まちの縁側センター」も基本的な機能を備えているし、他県にはもっと充実した事例も多い。
県レベルのサポートセンターを考える上で重要なのは、どういう市民社会を目指すのかという、視点であろう。
市民社会とは、市民が公共の活動に自発的、主体的に参画する社会であり、それは市民活動・市民事業を決定するのも市民であり、責任を担うのも市民であり、評価をするのも市民が主体となる社会である。市民の自発的、主体的な活動を促すには、もちろん資金も必要であり、最低限のルールも必要であり、政策提案を行う能力も必要である。日本の公共活動は、行政主導のボランティア活動(お上への奉仕)という側面が強く、市民の自発的、主体的な活動を促す仕組みが出来ていない。政策を決定したり、評価したりする民間パネル、市民活動を資金的に支えるファンド、市民の思いを具体的な政策提言に高める民間非営利のシンクタンクなど、こうしたものの実現を検討することは、もはやサポートセンターのレベルではないかもしれないが、市民社会には是非とも必要なものである。
「千葉県NPO活動推進懇談会」は、1999年度に千葉県が策定した「ボランティア活動等社会活動促進指針」を見直し、新たな「NPO活動促進指針」を提言することと、千葉県NPOサポートセンターの内容を提言することを11月26日の会議で決定した。
どちらも市民活動にとって意味があり、結果が期待されるが、行政主導ではなく、市民及び市民団体の代表が多数を占める「千葉県NPO活動推進懇談会」のメンバーが策定するプロセスに意味があると思われる。
委員の一人は「NPOサポートセンター」ではなく、「NPOセンター」をつくりたいと発言していた。狭い意味のNPO支援ではなく、市民活動を促進するには、市民社会にとって何が必要かを踏まえた発言として印象に残った。
栗原 裕治
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