千葉県では2001年4月26日に、それまで県内NPO法人の認証事務を行ってきた「環境生活課ボランティア活動促進班」の仕事を継承発展させる目的で、「NPO活動推進室」が環境生活部環境生活課内に設置された。この発足にともない岩下室長、町山主幹が新たに就任した。これは、やはり4月に就任した堂本新知事の「NPO立県をめざす。」という選挙公約を受けての措置と考えられる。
現在、ボーンセンターでは、内閣府と千葉県から「ボランティア国際年記念シンポジウムちば(10月6日・7日開催)」の企画・運営業務を受託し、県内のNPOと一緒に実行委員会を組織して取り組んでいるが、この事業の担当部署も「NPO活動推進室」である。
同室の岩下室長と町山主幹に話を聞いた。 〔取材日:2001年9月14日〕
● 堂本知事が掲げる「NPO立県」とはどのようなイメージか?
−「NPOが日本一活動しやすい県をつくろう」という意味と理解している。そのために「ボランティア国際年記念シンポジウムちば」のような啓発活動の他に、今年度事業の主なものとして「NPO活動推進懇談会」の開催、「NPOサポートセンター」の開設、「NPOフォーラム千葉県大会」などを計画している。
● 「NPO活動推進懇談会」とは、どのようなものか?
−NPO関係者や有識者等に、NPO活動を活性化させるための方策について検討してもらう場だ。「NPO立県をめざす」作業は、NPOや有識者の意見を聴き、また、様々な知恵を出し合うことが必要であり、この懇談会は重要と考えている。今年の5月に知事を含めて懇談会を開催したが、これは暫定的なもので、新たなメンバーでの懇談会を、9月20日の開催を目処に準備している。年内に最低3回は開催したい。この懇談会を設置する要綱では委員20名以内としているが、第1回目の懇談会のメンバーはNPO関係者5名、有識者4名、行政関係者2名、一般公募者6名の計17名が決定している。このような懇談会の一般公募は千葉県としては多分初の試みであり、活発な討議への期待は大きい。17名の委員に諮り、一般の傍聴可能な公開の懇談会にしていきたい。
● どのような「NPOサポートセンター」を開設するのか?
−知事の指示により千葉県の「NPOサポートセンター」を開設することになり、この秋のオープンをめざしている。当面は県庁本館2階での開設で、床面積は当初85uを予定していたが、それよりも少し広くなる予定だ。利用者側からすれば、県庁の外に、しかも千葉県は広いので複数箇所に開設された方が使い勝手がよいと思うので、これは今後の課題としたい。当面は、印刷機やパソコンなどの作業スペース等を含む設備を考えているが、サポートセンターの機能等についても懇談会での検討に期待しており、NPOからも提案してほしい。「NPOサポートセンター」の管理・運営の民間委託も、来年度以降の視野に入れている。
● 「NPOフォーラム千葉県大会」とは、どのようなものか?
−この大会の目的は、これまでにあまり交流がなかったNPOの分野間の交流や、NPO活動に関わる地方自治体間の交流を促すことにある。NPOの活動分野は多岐にわたっており、それに対応している行政部局も縦割りになっていて、連絡・連携は希薄だ。
また、市町村のなかには、NPO全体の担当がはっきりしていない自治体もある。今後は、庁内連絡会議や市町村連絡会議の開催も必要であるが、この大会をそのきっかけにしたい。そうしたことを視野に入れて、NPOと行政の交流を促進したいので、「ボランティア国際年記念シンポジウムちば」のような民間の企画・運営ではなく、「NPO活動推進室」で企画を行う予定でいる。来年の2月頃の開催を検討している。
● NPOと行政の協働やパートナーシップを促進するには、行政職員のNPOへの理解が必要と思われるが?
−千葉県の職員研修所には、一般研修、副主幹研修、管理職研修、特別研修等があるが、今年度は、一般研修と副主幹研修でNPO講座を開設する。また、職員有志の特別研修でもNPOに関わる課題を取り上げ、NPOに対する理解が深まるようにしたい。
● 「NPO活動推進室」の現在の主な仕事は?
−ボランティア活動促進班から引き継いだNPOの認証事務が仕事の中心になっている。また、NPOに関連することならば法人設立以外の相談にも幅広く応じているが、こうした相談業務は、将来は外部への委託も考えられる。これまでに述べた懇談会の開催、NPOサポートセンターの開設、大会の開催等の準備の他に、県民の意識啓発のためのリーフレットづくりなども進めている。更に、市町村や県民がNPOの講座や講演を開催する場合の講師派遣等を検討しており、そのための有識者の登録など、これから必要と思われることは多数ある。
● 「NPO活動推進室」の体制は?
−今年の4月26日に4人体制でスタートしたが、8月に3人が補充され、現在は7人体制になっている。また、今年度は10月1日から半年間、職員の一人がNPO法人日本NPOセンターに研修目的で出向することになった。
ヒアリングを終えて……
岩下室長と町山主幹から、率直なお話を頂戴でき、「NPO活動推進室」に対する堂本知事の思いも知ることができ、推進室の情熱も伝わってきた。とはいえ、今年度に誕生した推進室の真価が問われるのは、これからであろう。
現在の「NPO活動推進室」を外部からの目で見ていると、県庁内において微妙な位置にあるように思える。純粋にNPO法人の認証事務ということから見れば事務部門であるが、計画が現在進行中の様々な業務は、どちらかといえば企画部門の仕事であり、それらを効果的な施策として高みに持って行くにためには、全庁的な連絡体制やバックアップが必要である。環境生活部の一部門というよりも、知事直轄の企画
部門として位置づけた方が、力を発揮しやすいように思えた。 一方、こうして千葉県の「NPO活動推進室」が充実していくことは、県民やNPOにとって歓迎すべきことではあるが、我々がそうした取り組みに期待するだけでは、バランスのとれた「NPO立県をめざす」ことは難しく、なんといってもNPO側の自助・自立の重要性を改めて感じた。
NPOが日本一活動しやすい千葉県をめざして、今後は「NPO活動推進室」に対してNPO側も衆知を集め、NPOサポートセンターの計画はもとより、市民参加条例やNPO支援条例等の具体的な提案活動を展開する必要がある。
栗原 裕治
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